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エリート養成のための全寮制学校

アメリカ全寮制高校(ボーディングスクール)

アメリカにはエリート養成を目的とした全寮制の私立学校(ボーディング・スクール;Boarding school)があり、富裕層の子どもたちや奨学金を受けられる一部の非常に優秀な子どもたちが、親元を離れて学んでいます。

日本の中学生から高校生に当たる年齢の子どもたちです。

 

このようなアメリカ式のエリート教育は、石角完爾氏らによって詳しく紹介され日本でもよく知られるようになりました。

 

私の勤務校にもボーディング・スクール出身の先生がいて、実際の状況をいろいろと教えてもらいました。

日本ではボーディング・スクールの良い点ばかりが紹介されていますが、その先生いわく、あまりやる気のない富裕層の子弟もいるので学生によってけっこう温度差があるそうです。

 

その先生は富裕層ではなく奨学金を受けて通っていた成績優秀者でした。

先生が通っていた学校では、奨学金で入学した人も、常にトップに居続けなければ1年で奨学金がストップしてしまうという厳しい状況だったそうです。

確かに、温度差が大きそうです。

 

とはいうものの、ボーディング・スクールから多くの優秀なリーダーが輩出されていることも事実です。

やはり、学ぶべきことは多くあります。

 

もちろん全てを真似する必要はありませんし、実際のところ、ボーディング・スクールは一部の富裕層を対象とした高額な学費を要する学校なので、日本で同様の学校を建てることはとても困難です。

 

私たちはボーディング・スクールのどういう点を見習って、日本の学校に取り入れていけばよいのでしょうか。

アメリカでの「エリート」の意味

「エリート」と聞くと、どういうイメージを持たれるでしょうか?

頭がよく、成績優秀で、学問に対する天才的なセンスを持っている人。

日本ではそんなイメージではないでしょうか。

 

アメリカでは、エリートの捉え方がだいぶ違います。

アメリカで言う「エリート」とは、次のような人物です。

  • 新しい価値を生み出せる人
  • 社会に貢献できる人

 

このような人が、アメリカで考えられているエリート像です。

ちょっと意外ですね。

ただの学力優秀者とは一線を画す人物像です。

 

このような考え方が土台になっていますから、エリート養成を掲げるボーディング・スクールの教育現場でも、生徒が卒業後にどんな新しい価値を生み出したのか、何をして社会に貢献したのか、が重要視されているのです。

ボーディング・スクールが掲げる教育目標

私立学校の場合、教育の目標は学校ごとに多少の差異はあると思います。

ですが、概ね「学力の向上」や「自立に向けた人格の成熟」などが中心に据えられているのではないでしょうか。

 

ボーディング・スクールが掲げる教育目標も、学校によって様々です。

例えばウィリストン校は次のような教育目標を掲げています。

  • 子どもたち一人ひとりの独自性を発見する
  • 成功について、子どもたちそれぞれが定義を確立する

 

「自立に向けた人格の成熟」とつながる部分はありそうですが、やはり日本で一般的に考えられている教育目標とはかなり違います。

中でも、「成功について、子どもたちそれぞれが定義を確立する」はかなり独特だと感じます。

成功の定義は人それぞれで違う。

これは、なかなか私たち日本人が気づかない優れた発想ではないかと思います。

 

一方で、少し心配な点もあります。

成功の定義を子どもたち自身が考えるにあたり、人が大切にしなければならない人類共通の価値観(例えば「命を大切にすること」など)は、きちんと理解させる必要があるでしょう。

子どもたちが「健全な成功の定義」に至るように、適切な指導が不可欠です。

教師の力量が問われる部分だと思います。

 

ここで取り上げた教育目標はあくまでも一例です。

ボーディング・スクールはそれぞれ独自の特徴を持っていて、その特徴を大切にしています。

ボーディング・スクールに子どもを送る親は、その特徴を見ながら子どもに合った学校を選びます。

ボーディング・スクールに学ぶ教育の5つの柱

アメリカ全寮制高校(ボーディングスクール)その2

教育目標とともに、教育の方法も重要です。

アメリカのボーディング・スクールで大切にされている教育方法は、概ね次の5つにまとめることができます。

  1. 厳格なルールの下での自由
  2. オーダーメイド型の授業
  3. 大量の読書
  4. リベラル・アーツ教育
  5. 語学教育

厳格なルールの下での自由

ボーディング・スクールでは生徒に多くの自由を与えている一方、ルールが厳しい面もあります。

これは、公正さ(道徳的高潔さ)を追求する精神を育てるためだそうです。

 

例えば、カンニングがみつかったら退学。

友達のカンニングを知っていて学校に報告しなかったら、2人とも退学。

タバコやお酒、学校によっては恋愛でも退学。

 

退学はちょっと厳し過ぎるのでは、と思ってしまいますが、厳しくするところは厳しく、というのがボーディング・スクールに共通の方針です。

それでこそ、公正さを追求する精神が育つのでしょう。

そして、守るべきことを守っていれば、それ以外のところでは多くの自由が与えられています。

 

自由を得るには果たすべき責任がある。

それが本当の意味での自由ではないかと思います。

厳格なルールの下での自由は、生徒にとって自由の意味を考える機会にもなっていることでしょう。

オーダーメイド型の授業

ボーディング・スクールの授業は、いわゆる一斉授業ではありません。

生徒の希望と実力に合わせ、一人ひとりの生徒を教師が徹底的にケアする、オーダーメイド型の授業です。

 

そして、授業の方式としては、ソクラティック・メソッドが中心となります。

つまり、対話型の授業です。

 

教師としては、相当な実力がないと対話型の授業を導くことはできません。

教科書に書かれていることを教える方がよほど楽です。

しかし、対話型の授業を通して、生徒は考える力を養うことができます。

ボーディング・スクールに勤める教師の実力の高さを物語る一面です。

大量の読書

ボーディング・スクールではたくさんの本を生徒に読ませます。

大量の読書に裏付けられた確かな学力が、知的水準の高い深い思考力を生み出すからです。

 

大量の読書を可能にする鍵は、学校の立地にあります。

ボーディング・スクールの多くは都市部から離れた自然豊かな環境に立地しており、しかも寮生活なので、生徒は刺激的な情報が遮断された環境で生活しています。

このような環境が、生徒に大量の読書を可能にしています。

リベラル・アーツ教育

ボーディング・スクールで学ぶのは、リベラル・アーツです。

リベラル・アーツは「教養科目」と訳されることが多いですが、もう少し踏み込んで言うと、学問の枠組みと思考法を教える教育です。

 

具体的には、以下のようにおおよそ4段階に分けて教科を学んでいきます。

  1. 最も中心となる基礎:文法、修辞学、論理学(つまり言語に関すること)
  2. 基礎:算術、幾何、天文学、音楽(数学的な4分野)
  3. 発展:歴史、哲学
  4. 労働のための学問:建築学、医学、法学(専門分野)

 

捕捉ですが、3の「歴史、哲学」は、私たちが「社会」という科目でイメージするような暗記中心の学びではありません。

例えば、「歴史とは何か」という哲学的な問いを考えたり、数学や天文学といった学問ごとの歴史や哲学について学んだりもします。

 

このように順を追って幅広く学ぶことで、ボーディング・スクールの生徒は学問体系(学問の枠組み)と思考法を身に着けていきます。

 

ところで、日本の大学の多くは学部から専門分野に分かれてしまっていますが、かといって高校時代に教養科目を十分に身に着けているとは言い難く、上記のような学問体系と思考法の学びが十分にできていないのが日本の現状と言えるでしょう。

 

このことは、冒頭のエリートの定義で出てきた「新しい価値を生み出せるかどうか」、つまり創造的な思考ができるかどうかに深く関係してきます。

日本ではよく、「すでにある技術を伸ばすことは得意だが、新しいものを生み出すのは苦手」などと言われます。

専門分野に特化しすぎている日本の教育の結果だと痛感させられます。

語学教育

ボーディング・スクールでは語学教育にも力を入れています。

英語以外にスペイン語を習得している生徒が多いようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

日本の学校がアメリカのボーディング・スクールから学べることは、けっこう多いと思います。

記事の内容を簡単にまとめます。

 

エリートとは?

  • 新しい価値を生み出せる人
  • 社会に貢献できる人

 

ボーディング・スクールの教育の特色

  • 厳格なルールの下での自由
  • オーダーメイド型の授業
  • 大量の読書
  • リベラル・アーツ教育
  • 語学教育

 

見習うべきところは積極的に取り入れて、日本でも真のエリートを輩出できる学校づくりをしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

 

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