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米国SpaceX社のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、「2022年に人類を火星に送る」という大きな目標を立てて、火星移住計画に取り組んでいます。

 

計画の全容は、SpaceX社のウェブページや学術雑誌『New Space』の掲載記事で知ることができます。

 

今回は『New Space』の掲載記事をもとに、「なぜ火星なのか」について考えてみたいと思います。

火星はどのような点で、人類の移住に適しているのでしょうか。

火星と地球の比較

Making Humans a Multi-Planetary Species

こちらの論文は、イーロン・マスク氏が2017年に発表した学術雑誌『New Space』の記事です。

この記事をもとに、火星と地球を比較した以下の表を作成しました。

火星と地球の比較

 

この表では、惑星の直径や太陽からの平均距離など、いろいろな項目について比較しています。

さて、人類の移住先として、なぜ火星が選ばれたのでしょうか。

1. 地表の気温

まず着目したいのが、「地表の気温」です。

地球が「-88℃~55℃」なのに対し、火星は「-140℃~30℃」です。

最高気温が「30℃」なのはいいですよね。

まあまあ快適に生活できそうです。

 

それに対して、最低気温は「-140℃」

想像を絶する寒さです。

ドライアイスの温度がだいたい-79℃ですので、とても人間が生活できる気温ではありません。

 

しかし、宇宙の過酷な環境を考えると、これでも夢のように快適な世界なのです。

月の表面温度

地球よりも寒い太陽系の天体の中で、火星以外で人類が移住できそうな星といえば、まずが考えられます。

月の表面温度は、昼はおよそ110℃、夜はおよそ-170℃です

 

火星よりも厳しいですよね。

夜が寒いのは、月には大気がなく、すぐに熱が逃げてしまうためです。

火星には薄いながらもちゃんと大気があるので、温室効果で温まります。

また、月は火星よりも太陽に近いので、昼間の気温はずっと高くなります。

エウロパの表面温度

次に、木星の第2衛星エウロパを見てみましょう。

表層の氷の下に液体の海があり、生命が存在する可能性も示唆されている星です。

そのようなエウロパの表面温度は、最高気温がおよそ-148℃最低気温がおよそ-223℃です(平均気温はおよそ-170℃)。

やっぱり、火星の方がずっと快適ですね。

 

「じゃあもっと暖かい星に行けばいいのでは?」という話になりそうですが、温度が高いのも非常に問題です。

もしも温度が高すぎると、生命体だけでなく、それを保護する建築資材なども壊れてしまうからです。

地表温度の高い惑星

では、地球より暖かい星についても温度を見てみましょう。

まずは金星です。

地球のすぐ内側を公転している惑星です。

金星の地表温度は、最高気温がおよそ500℃、平均気温がおよそ464℃です。

地球よりも太陽に近いことと、厚い二酸化炭素の大気のせいで強い温室効果が起きていることが原因です。

 

次に、金星の内側を公転している水星についても見てみましょう。

金星よりも太陽に近いですが、大気が金星ほど濃くないので、温室効果はそれほどでもありません。

とは言っても、最高気温がおよそ400℃、平均気温がおよそ169℃という、極めて高温の世界です。

 

このように他の星の温度と比べてみると、やはり火星は住みやすい星と言えるでしょう。

2. 自転周期(1日の長さ)

次に1日の長さ、すなわち自転周期について見てみたいと思います。

 

上記の地表の温度を考慮すると、火星以外で何とか人が住めそうな星としては、月が考えられます。

そこで、月と火星の自転周期を比べてみたいと思います。

先ほどの表をもう一度見てください。

火星と地球の比較

 

まず火星ですが、表にあるように、1日の長さは24時間40分です。

地球の自転周期がおよそ24時間なので、火星は地球と非常に近い自転周期を持っていることがわかります。

つまり、火星に移住しても、1日の長さはあまり変わりません。

 

1日の長さがあまり変わらないということは、地球生まれの生物にとって体内時計の調整がしやすく、生体リズムを崩さずに済むということです。

これはとても大きな利点です。

 

一方、月の自転周期はおよそ27日です。

つまり、1日の長さが約27日になってしまいます。

 

東から昇った太陽が西に沈むのが27日後です。

あるいは、14日前後の間ずっと昼が続き、その後に同じくらい長い夜がやってきます。

これでは生体リズムが大きく崩れ、様々な健康上の問題が出てきそうです。

 

自転周期の面から考えても、火星は人が住みやすい星だと言えると思います。

3. 大気の組成

最後に、大気の組成を見てみたいと思います。

 

地球に住む私たち人間は、空気がないと生きて行けません。

その空気の成分は、窒素が約78%、酸素が約21%です(上記の表を参照)。

 

これに対し火星の空気の成分は、二酸化炭素が約96%です。

酸素がないため、これでは普通に暮らすことは不可能です。

 

しかし、人間は無理でも、植物はわりと普通に生活できるかもしれません。

なぜなら、植物は光合成によって二酸化炭素を酸素に変えて生きているからです。

 

もちろん植物といえども呼吸のための酸素は必要ですが、呼吸による消費量よりも光合成による生産量の方が大きいです。

ですから、最初に少し酸素を与えながら育ててあげると、あとは自分が作った酸素と火星の大気である二酸化炭素を使って、自立的に生きていける可能性があります。

 

このようにして植物が育っていけば、将来的には、火星の大気にも酸素が増えることが期待できそうです。

ただし、火星の重力は地球のように濃い大気を維持することができないので、たとえ酸素が増えても、それで人間が普通に暮らせるようになるわけではありません。

やはりシェルターのようなものを利用した、室内暮らしになるのでしょう。

 

ここまで、「地表の温度」「1日の長さ」「大気の組成」の3つの側面から、火星の住みやすさを見てきました。

地球と比べれば過酷な環境であることは確かですが、そのほかの天体の中で考えると、火星はやはり比較的住みやすい星と言えそうです。

SpaceX社のこれからのミッション

SpaceX社の今後のミッションの目的
E. Musk (2017) Making humans a multi-planetary species. New Space 5(2), 46-61.

 

こちらの画像は、『New Space』誌に掲載されているSpaceX社のロケット「ドラゴン・シャトル」のイメージ図です。

「ドラゴン・シャトル」を火星に送り込むことが、SpaceX社の当面のミッションとなります。

 

上の画像中にはミッションの目的も記載されています。

日本語に訳すとだいたい次のような内容です。

ミッションの目的

  • 多くの人や物を火星に運び、それらを着陸させるにはどうすれば良いか、その方法を学ぶ。
  • 水をはじめとして、どんな資源があるのか、種類や量などを特定する。
  • 候補となる着陸場所を特定する。地表にどんな危険があるのかも調べる。
  • 火星表面の性質を明らかにする。

 

このようなミッションを経て、SpaceX社は2020年までに2〜3トンの貨物を火星に送る予定です。

大量輸送という課題を克服しながら、有人飛行や火星基地の建設まで視野に入れて、これからのミッションが進められていくことでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

イーロン・マスク氏の人類火星移住計画は、空想の物語ではなく本気で実現を目指している計画です。

当面はSpaceX社が牽引役となり、火星を目指した宇宙開発が進められていくことでしょう。

 

そして、このような宇宙開発を通しても、地球という星のかけがえのなさを再認識し、大切に守っていく私たち人類でありたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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