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Water Drops on Spider Web, 2016

 

モノクロ写真ギャラリーTRANQUIL(トランキル)は、当サイトの管理人が制作した写真作品のWEBギャラリーです。

URLはこちら→ http://watanabekats.com/movie/tranquil/

今回はTRANQUILの制作にまつわる話を少しご紹介したいと思います。

※ モノクロ写真ギャラリーTRANQUILはこちらのYouTubeチャンネルからもご覧いただけます。

なぜモノクロ写真?

どんなきれいな写真でも、実物にはかないません。

実物よりも鮮やかなコントラストにしたり、劇的なエフェクトを施すことは可能かもしれませんが、実物に比べたら、写真は抜け殻のような、影のような、何だか物足りない存在です。

 

一方で、写真のすばらしさも分かっているつもりです。

ファインダーを覗く写真家の研ぎ澄まされた視野で、一瞬の美しさを切り取る写真の魅力は、映像にも勝るものがあります。

しかし、写真はその「一瞬」を切り取ったときに「死んだもの」となり、生命まで写真に保存することはできません。

 

そうなんです。

写真は死んだもの。

それなのに、カラー写真には何とも言えない違和感がある。

死んだはずなのに、見かけはとても生き生きとしている。偽物の生命感。カラー写真って、うまく言えませんが、死にきれてないんですよね。

 

写真は写真らしく、死んだものであってほしい。

それがとても自然で、真実の姿で、そんな写真にこそ、実物とはまた違った魅力を感じることができる。そう思っています。

それで、ぼくはモノクロ写真に惹かれるようになりました。

 

ぼくの感覚では、モノクロ写真は完全に死んだものです。過去のものです。

半殺しで生きているようなものではなく、ちゃんと死にきれた写真です。

だから、過去の一瞬を切り取ったものとして、正当に扱われることができます。

この潔さ、すっきりした感じが、とても好きです。それでこそ、写真の真の魅力が発揮されると思います。

写真との出会い

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Lily, 2009

 

ぼくは大学3年の時、友達と3人で屋久島に旅行したのがきっかけで写真を始めました。

当時は富士フィルムの「写ルンです」というインスタントカメラが良く使われていて、これを10個くらい買い込んで屋久島に向かいました。

もちろんフィルムカメラです。デジタルカメラは私が大学4年の時にようやく一定の地位を得るようになりました。

 

屋久島でたくさん写真を撮って、旅行から帰って早速プリントし、一緒に行った友達と写真を見せ合いました。

そのとき、けっこう芸術的センスに秀でた友達の1人が、「なべちゃん(←筆者のこと)写真のセンスあるね。一眼レフで本格的に撮ってみたら?」と言ってくれました。

ぼくは嬉しくなって、実家に電話してちゃんとしたカメラ(キャノンの「オートボーイ」というコンパクトカメラ)を送ってもらい、本格的に写真を撮り始めたのでした。

彼の一言が写真を始めたきっかけです。

ちなみにその彼は、物理学科を卒業してSEになった後、イラストレーターの道を志して転身し、現在は立派に漫画家として活躍しています。

 

さて、実家から送ってもらったカメラはコンパクトカメラだったので、何とかして憧れの一眼レフカメラを手に入れたいと思っていました。

そして、大学4年から始めたアルバイトの2回目の給料(1回目の給料はもちろん親へのプレゼントです!)で、中古ながらやっと念願の一眼レフを買いました。

 

そのカメラは「Nikon New FM2」というマニュアルカメラの名機でした。

フィルムを手巻きで巻き上げるレバーが付いていて、1枚撮るたびに1回巻き上げます。そしてシャッターを切ると、金属製のシャッター幕の開閉とターンミラーの動きが連動して起こります。

「カシャン」。

その感触が何とも心地よく、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。また、マニュアルカメラ特有のしっとりとしたトルク感のピントリングも素晴らしかったです。

マニュアルカメラなのでピント(フォーカス)も手動で合わせますが、そのときに回すピントリングがちょっと重くて心地いいんです。オートフォーカスカメラのレンズだと、たとえマニュアルモードにして手動でピントを合わせても、トルク感(つまり適度な抵抗)がまったくありません。

ピント合わせの心地よさも、New FM2は最高でした。

 

カメラについていろいろ語ってしまいましたが、このとき買ったカメラによって、ますます写真を撮るのが好きになりました。

レンズもF値=1.4のぼかしやすいレンズだったので、このカメラ&レンズで撮った写真は、それまでにコンパクトカメラで撮ってきた写真とは別次元でした。

 

その後、グループ展に参加したり、コンテスト経由でポストカードブックを作ってもらったりしながら、写真の制作活動を続けていきました。

そして2006年には「富士フォトサロン新人賞」という大きな賞をいただき、東京・大阪・福岡での巡回展を開催していただきました。本当にありがたかったです。

 

ちょうど受賞の年に大学院を卒業し、就職して、その後は小規模なグループ展に参加する程度の制作活動しかできていません。

ですが、最近は別の目標ができて、ブログの一角でウェブギャラリーをすることにしました。

 

1枚でも皆様の心に残る写真があれば、とても嬉しいです。

今後ともモノクロ写真ギャラリー「TRANQUIL」をよろしくお願いいたします。

TRANQUILというタイトル

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Rainy day, 2015

 

英語の「Tranquil」は「トランキル」などと発音し、意味は「静かな」「穏やかな」「平穏な」などです。

モノクロ写真に専念する以前からずっとこの単語を自分の作品タイトルやギャラリー名に使ってきたのですが、それは、この単語が自分の作品すべてに共通する特徴を、的確にかつ一言で表現している気がするからです。

 

少し話が逸(そ)れますが、「写真作品の制作には3段階のプロセスがある」という話を聞いたことがあるでしょうか。

簡単に言えば「3回撮影する」のです。

  • 1回目はシャッターを切るとき。
  • 2回目は選別するとき。
  • 3回目は展示を想定してプリントするとき、です。

 

これはデジタル時代でもフィルム時代でも同じです。

シャッターを切っただけでは、まだ作品になるまでの3分の1の工程しか踏んでいないのです。逆に言うと、作品になった写真というのは、選別と展示という工程を経ているのです。

そして、これらの工程を経た後の写真というのは、撮影者の写真への思いがかなり色濃く反映されています。どんな写真を良い写真と思うのか、どんな空気感を大切にしているのか、何を表現したいのか、などです。

 

私が選別し、展示した写真というのは、例外なく、すべて「Tranquil」という特徴を持っていました。

この特徴は、自分でも驚くくらいはっきりとしています。そして、私の写真を見た他の人(全くの他人)も、同じ印象を受けるようなのです。

大阪のギャラリーで展示したときにコメントをくださったある方は、私の作品を一言でいうと「静謐(せいひつ)」だ、と言ってくれました。難しい言葉なんですが、この「静謐」という言葉も好きになりました。

 

私という撮影者は、「Tranquil」な写真を良い写真だと思い、意識的にも無意識的にもそれを大切にしている。これは、動かしがたい事実で、この先も変わる気がしません。

モノクロ写真に専念するようになって、その傾向がさらにはっきりしてきたように思います。そんな「Tranquil」という言葉を、ギャラリーのタイトルにしました。

ギャラリー

ここに展示しているのは作品のごく一部ですが、どうぞごゆっくり、モノクロ写真「Tranquil」をお楽しみください。

※ モノクロ写真ギャラリーTRANQUILのすべての作品はこちらのYouTubeチャンネルからご覧いただけます。

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Tea, 2014

 

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Sea and windmills, 2015

 

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Stockholm, 2015

 

Zurich, 2015

 

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Warsaw, 2015

 

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On the morning, 2015

 

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Cosmos field, 2015

 

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Rainy day, 2016

 

おもな作品展・賞

  • 2006~2007年:富士フォトサロン新人賞2006受賞展(東京/大阪/福岡 巡回展)
  • 2006年:富士フォトサロン新人賞受賞『Tranquil Lament / Cosmos Blue November』