イソップ物語に登場する「黄金の卵を産むガチョウ」と農夫の話。

ベストセラー『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィー氏は、このイソップ物語のストーリーから「人」や「モノ」という資源の大切さを学ぶことができる、と言います。

黄金の卵を産むガチョウを殺してしまった農夫

話題になっているイソップ物語のストーリーとは、こんな内容です。

あるところに1人の貧しい農夫がいました。その農夫は、ある朝自分が飼っているガチョウの巣の中に、金色の卵が1個あることに気づきました。

初めはただ「色の違う卵」くらいにしか考えませんでしたが、気になって市場に持って行ってみると、なんとそれは黄金の卵でした。

このガチョウは来る日も来る日も黄金の卵を産み続けるので、この農夫はやがて大金持ちになりました。

しかし、大金持ちになると、この農夫はもっとお金が欲しくなりました。このガチョウは一日に1個しか卵を産まないので農夫は待ちきれなくなり、腹のなかから卵を全部取り出そうとして、このガチョウを殺してしまいました。

そして腹を開けてみると・・・

なんと中は空っぽでした。

農夫は黄金の卵を産むガチョウを殺してしまったので、2度と黄金の卵を手にすることができなくなったのでした。

ガチョウの話からぼくたちが学ぶべきこと

この物語からぼくたちは何を学ぶべきでしょうか。

『7つの習慣』のコヴィー氏は、「目標達成に必要な能力・資源の大切さを学ぶべき」と言います。

 

もう少しわかりやすく言い換えますね。

農夫が欲しがった「黄金の卵」は、「目標達成」という果実なのです。みんなこの果実が欲しくて、果実にだけ注目する。果実がより多く、より早く得られることが日々の最優先課題なのです。

しかし、果実を実らせるのは樹木であり、「黄金の卵」を産むのは「ガチョウ」です。樹木やガチョウを大切にしなければ、「目標達成」という果実は、近い将来失われてしまうのです。短期的には成功しても、ずっと続けて果実を得ることは、決してできません。

 

ここで、果実やガチョウに当たるものが、「目標達成のために必要な能力・資源」です。ちょっと例を示しますね。

【目標達成】→【目標達成に必要な能力・資源】

  • 黄金の卵 → ガチョウ
  • 果実 → 樹木
  • 美味しい夕ご飯 → 料理を作ってくれる妻
  • きれいな子供部屋 → 自主的に行動できる子ども
  • 高校の難関大学進学率 → 優秀な教師
  • 仕事の成果 → 自分の健康・同僚の助け・工場の設備

こんな具合です。「目標達成に必要な能力・資源」が少しイメージできたでしょうか。簡単に言えば、「目標達成を産むために必要なもの」ですね。

コヴィー氏は、「目標達成」と「目標達成に必要な能力・資源」の双方をバランスよく大切にすることが、継続的な成功に必須だと言っているわけです。

目標達成を産む「能力・資源」の中身

上記の通り、「目標達成」を継続的に得るには、それを産む「能力・資源」が大切です。では次に、それら「能力・資源」の中身を見ていきたいと思います。

「能力」は自分の健康・スキル・やる気

「能力」は比較的簡単です。これは、自分に関することです。自分の健康、自分のスキル、自分のやる気、モチベーションなどなど。これらがないと、目標達成には至りません。

最初に動くのは、いつだって自分です。自分を大切にしましょう

あっさりしてますが、「能力」については以上です。

「資源」は「人」「モノ」「カネ」

一方、「資源」には3つあります。「人」「モノ」「カネ」。これらは、自分の能力以外で、目標達成をもたらしてくれる重要な存在です。

例えば「きれいに洗濯された服」という「目標達成」を考えてみましょう。目標達成のためには、洗濯してくれる「人」と、使いやすい洗濯機や物干し場などの「モノ」と、モノを購入したりメンテナンスするのに必要な「カネ」が必要です。どれ一つが欠けても、目標達成(きれいに洗濯された服)には至りません。

また、「高校の難関大学進学率」を考えてみましょう。目標達成のためには、生徒を教える優秀な教師(「人」)と、校舎や教材といった教育環境を構成する様々な「モノ」と、教育を継続するために必要な人件費・光熱費等の「カネ」が必要です。

工場でも、オフィスでも、同様のことが言えます。

「人」「モノ」「カネ」の中で特に重要なのはどれ?

目標達成に必要な資源は「人」「モノ」「カネ」。では、この中でどれが最も重要かと言われれば・・・。

ドライな言い方をすれば、「カネ」です

これは、「3資源集積モデル」という考え方に基づいた論理的な答えです。世の中のパワーがどこに集まるようになったか、という話。

最初、人が集まるところにパワーがありました。人間は「群れ社会」を作り、他の動物や民族から身を守り、集団で戦うことを覚えました。そして、やがて国家や王様が生まれました。

次に、モノが集まるところにパワーが集中しました。強い国家は、より強力な武器や戦車を揃えました。鉄の武器を持つ国は、青銅の武器しか持たない国を圧倒しました。馬や戦車を持つ国は、歩兵しかいない国を圧倒しました。銃器を持つ国は、剣や槍しか持たない国を圧倒しました。

この傾向は現在も続いており、例えば先端的な文明や軍隊を持っている国が「強い国」とされています。もちろん他の軸で価値の大小を考えることもできますが、「強いかどうか」は、モノがあるかどうかとほぼイコールです。

そして、現在は「カネ」にパワーが集中するようになりました。「モノ」の価値が「カネ」に置き換えられるようになったからです。今やお金さえあれば、力の象徴である「モノ」が自由に買えるようになりました。それだけ「モノ」が豊かになったのですね。

「モノ」が自由に買えるなら、「カネ」を持っている者が強い。こうして、「カネ」が最強のパワーになりました

このような「3資源集積モデル」で考えると、資源の中で最も重要なのは「カネ」ということになります。

まず、「モノ」と「カネ」の価値が逆転する

でも、これには一つの大前提があるのです。それは、「モノ」が自由に買えるくらい豊かであること。言い換えれば、「モノ」が有り余っていること

この大前提、果たして万全でしょうか? これって、実はかなり危うい「大前提」だと思いませんか?

 

ぼくは大いに疑問なんです。この先もずっと、「モノ」が有り余っている状況は続くのでしょうか。お金さえあれば、なんでも自由に買えるのでしょうか。

ぼくには、とてもそうは思えません。

 

例えば、東日本大震災。お金があっても、コンビニでおにぎりが買えませんでした。「モノ」がなくなってしまったのです。コンビニの豊かさは、「毎日の流通」というとても壊れやすい「前提」の上に成り立っていたんですね。一度トラブルに見舞われれば、簡単に崩れ去ってしまう「前提」。

もっと大きなスケールでも、食糧不足は現実になりつつあります。気候変動で現在の商品作物が作れない環境になってしまったら、多くの農業国で深刻な飢饉になるそうです。これは単なる空想物語ではなく、地球の平均気温でいうと 2℃(地域の年平均気温でいうと 4℃)の上昇で起こり得る超現実的な予測です。そうなったら、食料自給率40%未満(カロリーベース)の日本はとたんに食料不足に直面し、お金があっても食べ物が買えない状況になります

そして、最たるものは有限な地球資源。環境破壊できれいな水と空気が失われてしまえば、とてもじゃないですが「カネ」があってもどうにもなりません。海から魚がいなくなるかもしれません。地球だって、人に「モノ」を供給したくても、これ以上供給できなくなるかもしれないのです。

このように、「モノ」<「カネ」のパワーバランスは決して不変ではありません。むしろ大いに危ういものです。ぼくは、近い将来「モノ」と「カネ」の価値が逆転するのではないかと思っています。

やっぱり「人」が大事

そして、最後に行き着くところは「やっぱり人が大事」という結論。

「カネ」にパワーが集中している現代社会にあってなお、「モノ」が大事な理由は、「モノ」が有限だからです。「カネ」は無限ですよね。いくらでも発行できます。仮想通貨(デジタル通貨、暗号通貨)になれば、その特徴はさらに顕著になるでしょう。

 

ところで、「モノ」よりももっと有限な存在が「人」です。

考えてみて欲しいのですが、あなたの周りに、ある特定のポジションで仕事をしている人、いますよね? 彼または彼女の代わりになる人はすぐに見つかりそうですか?

ぼくは3年間インターナショナルスクールで教師をやった経験があるのですが、同僚の教師を思い浮かべてみると、すぐに代わりが見つかる人なんて1人もいません。なぜなら、一人一人の教師が生徒と信頼関係を結んでおり、思い出を共有しており、生徒や学校を大切にする心を持っているからです

あなたの会社でも、家庭でも、同じじゃないでしょうか。ドラマでは「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ」なんて言われたりします。けど、それは事実じゃない。能力的にはそうかもしれない。ですが、人間性の面で、総合的に考えると、代わりを見つけるのはとてもとても大変なんです。

 

「モノ」の代わりは見つけやすいです。同じ型番のMacBookを購入すれば、ぼくの仕事のパフォーマンスはほとんど落ちないでしょう。

だから、やっぱり人が大事

結局、「目標達成」という果実を継続的に得たいなら、人を大切にするのが一番なのです。

まとめ

まとめますね。

「目標達成」を得たいなら、「目標達成に必要な能力・資源」を大切にすること。これは、コヴィー氏が『7つの習慣』の中で述べていることです。

そして、「能力」とは自分の能力のこと。自分を大切にしましょう。

一方「資源」は、「人」「モノ」「カネ」の3つ。

3つとも大事ですが、ぼくの考えでは、「カネ」よりも「モノ」、「モノ」よりも「人」。つまり、最も重要なのは「人」。

 

ん?・・・じゃあ3資源のパワーバランスは、全く逆転するということ?

そう思います。将来は、「人」>「モノ」>「カネ」になるというのが、今のぼくの考えです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』