鉱物に秘められた自然界の美の真髄—

「これまでにない最高の鉱物図鑑を作ろう。」

本書はKADOKAWAの高級写真図鑑『驚異の標本箱』シリーズの3作目として、既刊の昆虫図鑑2冊に続いて企画されたものである。先行する昆虫図鑑の品質はずば抜けており、その鉱物版を作ることは容易なことではない。最適な標本をトップレベルの技術で撮影するのはもちろんのこと、それに加えて学術的にも高い水準を確保する必要がある。

前人未到のこの目標を達成するべく、田中陵二氏、紀伊國潔氏のお二人に共著になっていただけたことは望外の喜びであり、結果、私一人の力では到底及ばない高みにまで本書を引き上げることができた。田中氏は北海道石を発見した現役の研究者で、鉱物標本の超拡大撮影と深度合成の第一人者である。また、紀伊國氏は「ファインミネラル」と呼ばれる高品質標本の著名なコレクター兼、国内外で知られる鉱物写真の大家である。両氏の卓越した撮影技術はページを開いていただければわかると思う。

本書に掲載されている鉱物標本は、個人コレクターが所蔵するファインミネラル、国立科学博物館が所蔵する学術標本、田中氏が採取した研究用標本が中心で、そのほか各地の博物館にもご協力をいただいて最適な標本を準備した。

本書を通して、一つ一つの鉱物に秘められた自然界の美の真髄と、それを余すことなく表現する圧倒的な写真の力を体験していただけたらと思う。

また、蛇足かもしれないがもう一言つけ加えたい。

鉱物は地質作用によってできた天然の固体であり、何百万年、何千万年、あるいは何億年も前の地層から、時を超えて私たちの目の前にもたらされたものである。時間だけではない。地表で人の目に触れるまでに、地殻変動や火山活動を通じて、時には100キロメートルを超える地下深部から地表へと、空間を超えてもたらされる。これが、「鉱物を調べれば地球の歴史がわかる」といわれる理由である。

鉱物の魅力は単なる美しさだけに留まらず、このような学術的な奥深さにもある。本書のやや専門的な解説が、その一端を知る助けとなれば幸いである。

渡邉克晃(著者を代表して)


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〈ハードカバー/見開きA3サイズ〉

 

〈著者プロフィール〉

渡邉克晃(わたなべ かつあき)

地球科学コミュニケーター。写真家。1980年、三重県四日市市生まれ。広島大学にて博士(理学)の学位を取得。物質・材料研究機構(NIMS)、東京大学地球生命圏科学グループ、原子力規制庁技術基盤グループにて鉱物学および地質学分野の研究に従事したのち、2020年よりサイエンスコミュニケーション事業を開始。2024年より株式会社地学舎代表取締役。著書に『美しすぎる地学事典』(秀和システム)、『もしも、地球からアレがなくなったら?』(文友舎)、『ふしぎな鉱物図鑑』(大和書房)、『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版)などがある。最新刊は『へんな石図鑑』(秀和システム)。

Xアカウント 渡邉 克晃(わたなべ かつあき) @watanabe_kats
https://chigakusha.com/

 

田中陵二(たなか りょうじ)

東海大学理学部化学科客員准教授。1973年、群馬県生まれ。有機・無機ケイ素化学、材料科学、構造有機化学、X線結晶学、有機地球化学が専門。最近は、地球化学的成因をもつ有機化合物の愉しさに目覚め、北海道から九州まで石を求めて彷徨っている。2023年に公表された新鉱物「北海道石」の発見者のひとり。高倍率マクロ写真による物質の撮影が趣味。児童書による若い世代への科学の啓発にも取り組んでいる。著書に『石は元素の案内人』「たくさんのふしぎ いろいろ色のはじまり」「たくさんのふしぎ 光る石 北海道石」(いずれも福音館書店)、『よくわかる元素図鑑』(共著、PHP研究所)、『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る』(共著、文一総合出版)などがある。

Xアカウント 山猫だぶ @fluor_doublet

 

紀伊國潔(きいくに きよし)

鉱物写真家。1962年、兵庫県生まれ。1996年、前年に発生した阪神・淡路大震災を機に東京から帰郷。その2年後、地元である芦屋市にて鉱物標本専門店「キーズミネラルコレクション」をオープン。鉱物を販売する傍ら、アメリカの写真家Jeffrey A. Scovil(ジェフリー A. スコヴィル)氏に師事し、鉱物の撮影に取り組む。アメリカの鉱物専門誌「The Mineralogical Record」や、その他国内外の雑誌に写真を提供。近年は東京国際ミネラルフェアのガイドブックにも写真を提供している。

Xアカウント Key’s Minerals @keysminerals


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