恐竜の卵が見つかったゴビ砂漠の化石産地(モンゴル南部バヤンザグ地域)
©︎Felix Filnkoessl / flickr

世界で初めて恐竜の卵が発見された場所

荒涼とした岩石砂漠が広がるモンゴル南部に、世界的に有名な恐竜化石の産地があります。

ゴビ砂漠の赤い砂岩地帯、バヤンザグ地域です。

 

バヤンザグで最初に恐竜化石が発見されたのは、1922年のこと。

アメリカ自然史博物館(ニューヨーク市)の古生物学者、ロイ・チャップマン・アンドリュース博士の率いる大規模な調査隊が、ゴビ砂漠の縦断中に恐竜の卵や多数の骨格化石を発見しました。

 

恐竜の卵や営巣地が発見されたのは世界初のことで、この発見により、恐竜が卵生(卵を産む動物)であることが知られるようになったのです。

また、骨格化石も非常に多く見つかっており、代表的なものとしては、小型肉食恐竜のヴェロキラプトル、角竜類(つのりゅうるい/トリケラトプスの仲間)のプロトケラトプス、全身が装甲に覆われた鎧竜(よろいりゅう)のピナコサウルスなどが挙げられます。

 

スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』では凶暴な肉食恐竜として描かれているヴェロキラプトルですが、実際の骨格標本では体高(立った時の高さ)が50センチメートルほどしかなく、人よりも随分と小さい恐竜だったようです。

しかし、小さいながらも鋭い鉤爪(後肢)による攻撃は強力。

羊ほどの大きさのプロトケラトプスと格闘している化石では、後肢の大きな鉤爪を相手の喉元に的確に命中させて、致命傷を与えていたことがわかっています。

「燃える崖」と名付けられた赤い砂岩

バヤンザグの化石産地は、別名「燃える崖」と呼ばれています。

夕陽に照らされた赤い砂岩が燃え立つように見えたことから、最初の発見者であるアンドリュース博士が名付けたそうです。

モンゴル南部バヤンザグの「燃える崖(The Flaming Cliffs)」
夕陽に照らされて赤く染まるバヤンザグの砂岩(©︎Einar Fredriksen / flickr

 

崖の高さは50メートルほど。

長さ約10キロメートルに渡って崖の多い場所が続いています。

 

バヤンザグの地層は7000万年ほど前の砂岩で、内陸部の砂嵐などによってできた地層だと考えられています。

しかしこの砂岩、「砂岩」とは言え、ほとんどが砂を固めたような崩れやすい岩石であるため、風雨でどんどん侵食されるわけですね。

その結果、地表のあちこちで恐竜の化石が顔を出すようになりました。

 

バヤンザグの地層ができた約7000万年前というのは、地質時代で言うと白亜紀後期に当たります。

この時代は、恐竜の全盛期。

 

バヤンザグに露出しているまさにこの地層の上を、多種多様な恐竜たちが歩いていたのです。

恐竜たちは白亜紀末の約6600万年前に絶滅するまで、温暖で多湿だったこの時代に一気に種類を増やし、多様な進化を遂げました。

 

なお、恐竜の中には羽毛を持つものがかなりいたということがわかっており、先ほどのヴェロキラプトルも羽毛恐竜だったと見られています。

恐竜化石を研究する古生物学者は砂漠を目指す

1922年にバヤンザグを調査したアンドリュース博士は、元々は恐竜を目当てにモンゴルまで来たわけではありませんでした。

彼の目的は、人類発祥の地を突き止めること。

 

今でこそアフリカが人類発祥の地であることが定説になっていますが、20世紀初頭のこの時代には、まだ何の手がかりも得られていなかったのです。

アンドリュース博士は人類発祥の地を中央アジア辺りだと考え、ゴビ砂漠に注目し、砂漠を縦断する大調査を行ったのでした。

 

しかし、この調査で人類発祥の地に関する手がかりは得られず、その代わりに、調査隊の一行は恐竜の卵と大量の骨格化石を手にすることになります。

そして、彼らの発見によって世界各国の研究者がゴビ砂漠に注目するようになり、恐竜化石の宝庫として精力的に研究が進められていくことになりました。

 

化石の研究者にとって砂漠のいいところは、地層が剥き出しになっていることです。

植物に覆われていないので化石を見つけやすいですし、植物の根によって化石が損傷を受けることもありません。

 

また、バヤンザグの恐竜のように陸地で埋まった化石は、河川に流されてどこか遠くの海や湖で埋まった化石に比べて、損傷が小さくてすみます。

営巣地の化石が見られるのも、恐竜が生息していたまさにその場所で、砂に埋もれて化石になったからですね。

 

ゴビ砂漠のほか、アフリカのサハラ砂漠でも恐竜化石が多数見つかっていて、現在に至るまでこれらの砂漠は恐竜化石を研究する上で重要な拠点となっています。

そんなわけで、昔も今も、古生物学者は砂漠を目指すのです。

参考文献

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