黄鉄鉱 Pyrite(産地:長野県 Nagano Pref./2021年撮影/撮影範囲:左右6.7cm)
黄鉄鉱 Pyrite(産地:長野県 Nagano Pref./2021年撮影/撮影範囲:左右6.7cm)©︎Katsuaki Watanabe

基本的な結晶の形は立方体・八面体・五角十二面体

鉄と硫黄からなる黄鉄鉱は、立方体や八面体、五角十二面体などの美しいフォルムを示すことで知られる、真鍮色の鉱物です。写真の標本は不規則な塊状(かいじょう)で産出したものですが、特に立方体の黄鉄鉱の標本は、原子の並び方が結晶の外形にも現れるわかりやすい例の一つと言えます。

結晶は、特定の原子の並び方が三次元的に繰り返されることでできています。そして、黄鉄鉱の場合、繰り返しの単位となる最小の原子の並び(鉄原子4個分と硫黄原子8個分)が、ちょうど立方体の形になっているのです。外形の立方体と、ミクロな原子の並び方がつながりますね。

このように、黄鉄鉱の原子の並び方は、いわば「ミクロな立方体」の繰り返し。

ただし、繰り返しの結果どんな外形になるのかは、実は一概にはいえません。立方体になることもあるし、ならないこともある。外形は、結晶が生成する場所の温度と圧力、熱水の化学組成、結晶の成長速度など、様々な要因で決まるからです。

それからもう一つ。立方体や八面体、五角十二面体が単一の結晶の形であるのに対し、微細な結晶が集まった「集合体の形」というのもあります。

集合体の形も、黄鉄鉱は特徴的です。具体的には、細い針状の結晶が放射状に集合して球形になったもの、粒状(りゅうじょう)の結晶が集まって球形になったもの、高倍率の顕微鏡(電子顕微鏡)でやっと見えるサイズの木苺状のものなどが知られています。

黄鉄鉱 Pyrite(産地:長野県 Nagano Pref./2021年撮影/撮影範囲:左右6.8cm)
黄鉄鉱 Pyrite(産地:長野県 Nagano Pref./2021年撮影/撮影範囲:左右6.8cm)©︎Katsuaki Watanabe

黄鉄鉱は、金(自然金)と色が似ていることから「愚者の金」とも呼ばれますが、条痕色が黒色なのと、自然金よりも硬度が高いため区別は容易です。熱水鉱脈のほか、スカルン(石灰岩がマグマの熱で変化したもの)、結晶片岩、堆積岩など、さまざまな岩石に見られます。

黄鉄鉱のモース硬度は6。鋼鉄製の工具と同等の硬さで、ハンマーで打つと火花が散ります。

鉱物の基本データ

  • 化学式:FeS2
  • 結晶系:立方晶系 Cubic/Isometric
  • 比重:5.0
  • モース硬度:6
  • 分類:硫化鉱物
  • 劈開:なし
  • 光沢:金属光沢
  • 色:真鍮色(しんちゅういろ)
  • 条痕色:黒色

参考URL

mindat.org | Pyrite(黄鉄鉱の詳しい情報・データ・産地など)

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