“細かくて薄い”粘土鉱物の集合体
石けんのような、ロウソクのような、なんとも言えないスベスベの肌触り。こちらは「滑石(かっせき)」という鉱物で、半透明の美しいかたまりは、とても細かい結晶の集合体でできています。
どれくらい細かいかというと、「泥パック」に使われる滑らかな泥くらいで、一粒一粒は目に見えません。数字で表すと、だいたい1mmの500分の1という大きさになります。石にも関わらず、滑石が石けんのようにスベスベなのは、これほどまでに細かい結晶でできていて、かつそれらの結晶が葉っぱのように薄いからです(詳しくは後述)。
滑石はフィロケイ酸塩で、「粘土鉱物」とも呼ばれています。粘土鉱物は、とても細かく薄い結晶をなすのが特徴です。
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葉っぱのような薄い結晶が剥がれて滑る
粘土鉱物は、名前の通り粘土にたくさん含まれている鉱物です。
食器などの陶磁器は、粘土をこねて、焼いて作りますね。水を含んだ粘土が自由に形を変えられるのは、「細かい結晶が水ととてもよく馴染む」という粘土鉱物の特徴のおかげです。
さて、粘土鉱物であること、つまり、とても細かいフィロケイ酸塩であることがスベスベの理由なら、別に滑石でなくても、粘土鉱物ならどれもスベスベの石になりそうですね。
ところが、そうとも限りません。例えば、陶磁器に使われる代表的な粘土鉱物に「カオリン石(かおりんせき)」がありますが、カオリン石には、滑石のようなツルっとした触り心地のものもあれば、ザラザラしたものもあります。ツルっとしたカオリン石はち密で、別の鉱物の粒があまり混じっていません。
滑石や一部のカオリン石がかたまりの状態でスベスベなのは、フィロケイ酸塩の鉱物に特有の、葉っぱのような薄い結晶が、剥がれて滑るからです。
石なのに爪にも負ける軟らかさ
細かくて薄い結晶がち密に集まった滑石のかたまりは、磨くとロウソクの表面のような優しい光沢が出てきます。小学校の勾玉づくりの教材などで、実際に滑石を磨いた人もいるのではないでしょうか。光にかざすと透けて見える、あの半透明な感じがとても魅力的ですね。
ところで、いくらち密であるといっても、滑石のかたまりは、決して「硬い」わけではありません。滑石のモース硬度は、もっとも低い「硬度1」。人間の爪の硬さが硬度2と3の間くらいなので、爪で引っかいたら簡単に傷がついてしまうような軟らかさなのです。石なのに、硬さで爪に負けるなんて、ちょっと残念……。
でも、この軟らかさのおかげで加工しやすく、勾玉づくりにも使われますし、昔はほかの軟らかい石とともに、滑石をチョークの代わりにして、子どもたちがアスファルトなどに文字や絵を書いて遊んでいたそうです。
鉱物の解説:滑石(かっせき)
滑石は粘土鉱物の一種で、ほかの粘土鉱物と同様、目に見えないほど細かい結晶のかたまりで採れることが普通です。
しかし、滑石の場合、大きな結晶の集合体で見つかることも、わりと多くあります。滑石の結晶は葉っぱのように薄くて平ら。ペラペラとした結晶が何枚も重なるようにして、かたまりを作っているのです。
滑石の本来の色は白色ですが、おもな成分のほかに不純成分として鉄を含むと、淡い緑色になります。そして、この緑色は、結晶の一つ一つが大きいほど、鮮やかで深い色合いになります。
ただし、緑色に見える滑石であっても、粉にすると白色です。どの鉱物にも言えることですが、大きな結晶だといろんな色に見えていても、粉にすると本来の色が現れます。これを「条痕色(じょうこんしょく)」といいます。
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