代表的なアスベストの一つ、クリソタイル石の標本。カナダ・ケベック州産。Photo: James St. John / flickr (CC BY 2.0)

 

珪藻土バスマットにアスベスト(石綿)が混入しているとして、メーカー等による回収が行われたことがありました(厚生労働省ホームページ『石綿(アスベスト)含有品の流通とメーカー等による回収について』2020年11月27日)。

アスベスト(石綿)というのは非常に細かい針状の鉱物のことで、鉱物学的にはいくつかの種類に分かれますが、産業的に最も多く使われているのはクリソタイル石(蛇紋石の一種)です。

以前はビルなどの内装工事で保温・断熱を目的としたアスベストの吹き付けが行われていましたが、粉塵を吸い込むことによる健康被害が明らかになり、原則として使用が禁止されました。現在では屋根や外壁用のスレート材、ブレーキパッド、防音材、断熱材など、従来アスベストを使っていたあらゆる製品について、0.1%を超えてアスベストを含むものが市場に出回らないよう厳しく規制されています(2006年9月以降、製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止)。

しかし、海外から輸入される製品や、あるいは国内の製品であっても禁止前に仕入れた原材料で作られたものについては、規制から漏れているケースがあります。アスベストの混入が指摘された珪藻土バスマットも、海外からの輸入品であったり、比較的古い原材料で作られた製品だったようです。

ただ、珪藻土そのものにアスベストが含まれているわけではありませんし、珪藻土とアスベストは全く別の素材なので、珪藻土100%の珪藻土バスマットであればアスベストの混入はあり得ません。問題となるのは、「珪藻土」と思って仕入れた原材料が実は粗悪品で、アスベストを含む別の材料で水増しされていたとか、そもそも珪藻土100%ではなく、珪酸カルシウムか何かに珪藻土を混ぜて作った純度の低い珪藻土バスマットだった、みたいな場合です。

原材料が粗悪品である場合、バスマットを製造するメーカーでそれを見抜いて排除するのは至難の技です。信頼できる会社から原材料を仕入れるしかありません。一方、珪藻土100%ではない珪藻土バスマットは、消費者の方で避けることが可能です。

アスベストと聞いて不安になる人も多いかと思いますが、メーカーのホームページで原材料へのこだわりを確認したり、製品を購入する時に珪藻土の含有量を確認するなどして、消費者自らが安全な製品を選択するようにしていきたいですね。

参考文献

厚生労働省『石綿(アスベスト)含有品の流通とメーカー等による回収について

厚生労働省『アスベスト(石綿)に関するQ&A

Techno-Gateway『海外製珪藻土バスマットになぜアスベストが混入するのか?

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版,2022)

書影『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』渡邉克晃(2022年11月18日刊行)
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※この記事の内容を含め、身近な地質学の話題がたくさん紹介されています。

珪藻土とアスベストは全くの別物(渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』より)