実は「輝石」ではなかった
バラ輝石は、マンガンを含む濃いピンク色の鉱物です。「バラ」は花のバラ（薔薇）のことで、華やかで美しいその見た目にぴったりの、良い名前ですね。
さて、名前の後ろ半分にある「輝石」というのは、鉱物の族名（グループ名）です。たくさんの種類の「〇〇輝石」があり、まとめて「輝石族」と呼ばれています。それぞれの成分はちょっとずつ違うのですが、輝石族の鉱物はみな、同じ原子の並び方をしています。
ただし、正確には、バラ輝石は輝石ではありません。最初は輝石族の鉱物だと思われていたのですが、その後の研究によって実は「輝石」ではないことがわかり、「準輝石」という名前で区別されるようになりました。
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微妙すぎる準輝石と輝石の違い
準輝石と輝石の違いは本当に微妙なので、間違われるのも無理はありません。
「そんなに似ているの？」と気になる人のために、輝石族の鉱物を一つご紹介します。その名も「普通輝石」。輝石族の中でも特に多く産出するので、「普通」という名前が付けられました。
さて、写真を見てみると、普通輝石とバラ輝石では、色や形はぜんぜん似ていませんね。写真を見ただけでは、「微妙な違い」どころか、けっこう違うように思えます。
いったいどこが似ているのかというと、ハンマーなどで叩いたときの、結晶の割れ方が似ているのです。どちらの鉱物も、割れたときに柱のような長細い形になりやすく、柱の一つの面とそのとなりの面が、ほぼ90度で交わるようになっています。つまり、普通の家の柱のような、四角い柱ということですね。
このように割れ方によって鉱物の種類を調べる方法は、今もよく行われています。特殊な機械を使わずに、誰でも手軽に調べられる点が優れているからです。
原子の並び方にちょっとだけ違いがある
準輝石と輝石は、単に結晶の割れ方が似ているというだけでなく、原子の並び方もとてもよく似ています。……というか、ほとんど同じなので、全部まとめて「輝石」と考えられていたわけです。
輝石の結晶の中には、骨組みとなるような直線的な原子の並びがあります。たとえるなら、鉄筋コンクリートの建物に入っている鉄筋みたいなイメージ。「準輝石」であるバラ輝石も、この点については全く同じです。
ですが、研究が進むことで、わずかな違いがあることがわかりました。輝石ではこの「鉄筋」がまっすぐなのですが、準輝石では微妙にうねっているのです。
バラ輝石と同じ理由で準輝石と呼ばれている鉱物に、珪灰石やソーダ珪灰石があります。これらをまとめて「準輝石族」に分類したいところですが、準輝石どうしの間にもまたまた違いがあって、そうはいきません。「鉄筋」のうねり方の違いによって、バラ輝石は「バラ輝石族」に、珪灰石やソーダ珪灰石は「珪灰石族」に、それぞれ分類されています。
鉱物の解説：バラ輝石（ばらきせき）
バラ輝石はカルシウム（Ca）、マンガン（Mn）、ケイ素（Si）、酸素（O）をおもな成分とする鉱物で、大まかな分類では「ケイ酸塩」に属しています。
本文で分類の話が少し出てきましたが、鉱物の分類にはいくつかの段階があります。一番上の段階、つまり最も大まかな分類が「級」で、バラ輝石の「級」はケイ酸塩。
その下に「亜級」があり、バラ輝石の「亜級」はイノケイ酸塩。「イノ」は「鎖」を意味するギリシャ語で、鎖のような直線的な原子の並び（本文に出てきた「鉄筋」）を含む鉱物が、イノケイ酸塩に属します。
そして「亜級」の下にさらに「族」があり、バラ輝石の「族」はバラ輝石族。
これらを整理すると、バラ輝石は「ケイ酸塩」の中の、「イノケイ酸塩」の中の、「バラ輝石族」の中の、「バラ輝石」ということになります。
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