
ウランは代表的な放射性元素
燐灰ウラン石(りんかいうらんせき)は、おもな成分の一つに放射性元素であるウランを含む鉱物です。放射性元素というのは、特に何もしなくても常に放射線を出し続けている元素のことで、代表的なものにウラン、トリウム、ラジウム、プルトニウムなどがあります。
放射線は、大きく2種類に分けられます。一つは「目に見えない粒の流れ」で、具体的にはアルファ線、ベータ線、中性子線のこと。そして、もう一つは「目に見えない光」で、具体的にはガンマ線、エックス線のことです。
どちらも目に見えず、当たったとしても肌に何も感じない厄介なものです。
箱に入れて保管すれば安心

放射線が危険なのは、浴びる量が多くなると体の細胞をひどく傷つけ、がんなどの病気の原因になるからです。
そして燐灰ウラン石からも、少量ですが、そんな放射線が出ています。ウランが出す放射線は、先ほど挙げた放射線の種類でいうと、「目に見えない粒の流れ」であるアルファ線です。アルファ線は、紙などで簡単に防ぐことができるので、燐灰ウラン石の標本を保管するなら、箱に入れて全体を覆っておくのがおすすめです。
また、放射線は空気中を飛んでくるものなので、たとえ標本を直接手で触らなくても、近い距離だとやはり少し心配です。よく見ようとして極端に目を近づけたりしないよう、観察するときには注意しましょう。
ウランの資源として重要な鉱物はいくつかありますが、燐灰ウラン石もその一つ。ウランは原子力発電の核燃料になる元素であり、日本でも、かつて岡山県の人形峠鉱山(にんぎょうとうげこうざん)で、燐灰ウラン石などの採掘が行われていました。
鉱物のままでは核分裂反応は起こらない

ウランの資源になる鉱物には、燐灰ウラン石のほかに、閃ウラン鉱(せんうらんこう)、コフィン石、カルノー石などがあります。これらの鉱物から取り出されたウランが、原子力発電の核燃料になるわけですね。
ところで、原子力発電では、核燃料から発生する大量の熱で水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回し、発電しています。タービンというのは、巨大な風車のような機械のこと。
核燃料から大量の熱が発生するのは、その中で「核分裂反応」という特別な反応が起こっているためです。これは、放射性元素であるウランが、2つ以上の別の元素に分かれてしまう反応です。
この核分裂反応は、鉱物中のウランでは基本的に起こりません。もし起これば莫大な熱が発生するわけなので、超危険……。核分裂反応が起こるようにするには、鉱物からウランを取り出したあと、そこからさらに、核分裂反応を起こしやすいタイプのウラン原子だけを優先的に集める、という作業が必要になります。
鉱物の解説:燐灰ウラン石(りんかいうらんせき)

放射性元素であるウラン(U)を含む鉱物で、おもな成分はカルシウム(Ca)、ウラニルイオン、リン酸イオン、水分子です。名前の「燐」はリン(P)、「灰」はカルシウムのことなので、成分がそのまま日本語の鉱物名になっています。
しばしば薄い板状か、あるいはやや厚めの板状の結晶が集まって見られますが、結晶の形がわからないような細かい結晶の粒が、岩石の表面を薄くおおっていることもよくあります。
蛍光色のような黄色または黄緑色が特徴的。しかも、暗いところで紫外線ライトを当てると、鮮やかな黄緑色に光ります。そのままでも十分に目立つ色をしているものの、紫外線ライトを当てることで、細かい結晶まではっきりと見ることができます。

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