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光沢紙の重さは上質紙の1.3倍以上

スタイリッシュでおしゃれな雑誌、企業のカタログやパンフレット、学校で使う資料集や教科書など、フルカラーの印刷物をちょっと思い浮かべてみてください。

表面がツルツルで、光沢があり、写真がたくさん掲載されているような印刷物です。

一冊の重みが、モノクロ印刷の普通の本に比べると随分と重いですね。

 

フルカラー印刷の本が重いのは、インキがたくさん使われているからではなく、光沢紙自体が「重い紙」だからです。

と言っても、単に厚い紙を使っているという意味ではありません。

光沢紙がなぜ重いかというと、それは表面に粘土が塗られているから。

 

カラー写真の印刷に適した光沢紙(コート紙)というのは、光沢のない普通の紙をベースにして、表面を粘土入りの塗料でコーティングして作ります。

このコーティングにより白色度と不透明度が向上し、さらにコーティングの上から熱と圧力をかけてギュッと押さえることで、光沢紙の持ち味である強い光沢(ツヤ)と滑らかさを出すことができます。

 

実際に光沢紙がどれくらい重いか、コーティングなしの上質紙と比べてみましょう。

 

一般的な上質紙(厚さ0.08mm)の場合、A4サイズ500枚で約2kgです。

これに対し、同じ厚さの光沢紙の場合、重さは約2.7kg。

光沢紙の方がおよそ1.3倍も重いですね。

 

光沢紙の重さは、コーティングする塗料の量や紙の厚さ、仕上げ時の圧縮の度合いなどによって変わってくるため、かなりの幅があります。

重いものだと、上質紙の1.6倍ほどになります。

光沢紙のコーティングに使われる粘土入りの塗料

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光沢紙の表面をコーティングする塗料には、おもに粘土鉱物のカオリナイトと、炭酸カルシウムの粉末が使われます。

カオリナイトと炭酸カルシウムは鉱物の粉で、それらを結合剤(糊)や水などと混ぜて、固形分65%程度の液体にしたものが基本のコーティング剤。

 

結合剤に使われるのは合成ゴムを含む乳濁液(ラテックス)やデンプンなどですが、鉱物の粉との比率は10:1くらいですので、コーティング剤の主成分はほぼ鉱物と考えて差し支えありません。

 

また、鉱物の粉としてカオリナイトを使うか、炭酸カルシウムを使うか、あるいは両方を混ぜて使うかは、光沢紙の用途や値段によって様々です。

従来はカオリナイトが主流でしたが、炭酸カルシウムに比べてやや白色度が劣ることもあり、近年では両者を組み合わせて使うことが多いようです。

 

このようなコーティング剤を紙の両面に塗布し、加圧処理をすることで、表面にはツルツルの「塗工層」が形成されます。

鉱物の粉を圧縮してできる塗工層は、元々の紙に比べて圧倒的に緻密で滑らか。

紙はセルロースという繊維が絡み合ってできているので、隙間が多く、表面がどうしてもざらざらした感じになってしまうのです。

カオリナイトが選ばれる理由

西オーストラリア州クリンにあるカオリナイトの地層
西オーストラリア州クリンにあるカオリナイトの地層(©︎grumble_bum / flickr

 

さて、塗工層が緻密で滑らかになるのは、非常に細かい鉱物の粉をギュッと圧縮するからです。

その点においては、カオリナイトも炭酸カルシウムも、細かければいいわけですね。

そして、炭酸カルシウムはカオリナイトに比べて白色度が高い。

 

そうであれば、より白くなる炭酸カルシウムをコーティング剤に使えばよく、あえてカオリナイトを使う必要はなさそうな気がします。

どちらも比較的安価なので、コストの問題でもありません。

粘土鉱物のカオリナイトが光沢紙のコーティング剤に適しているのは、どうしてでしょうか。

 

それは、カオリナイトの結晶が平らな板状構造をしていることと関係があります。

カオリナイトに限らず、粘土鉱物の結晶は極薄のシートが何枚も重なったような構造をしているので、概ね板状ではあります。

しかしながら、カオリナイトではそのシートの重なりが特に平らで、きれいな六角形の板状結晶になっているのです。

 

そのため、紙に塗布されたカオリナイト入りのコーティング剤がギュッと押さえつけられると、板状の結晶が紙と平行に並びやすくなり、より一層滑らかでツヤのある塗工層になるのです。

炭酸カルシウムの結晶には立方体、紡錘形、針状、球状などがありますが、いずれもカオリナイトのような板状結晶ではありません。

 

なお、光沢紙のコーティング剤に使われる粘土鉱物としては、カオリナイトの他にタルクもあります。

タルクもカオリナイトと同じく六角形の板状結晶で、紙の滑らかさが向上します。

 

実は、タルクの日本語名は「滑石(かっせき)」で、微細な粘土鉱物でありながら、岩石のような塊で産出することの多い鉱物です。

そして、名前の通りその表面はツルツルとよく滑り、ろうそくの蝋のような質感です。

このような質感ですから、光沢紙のコーティング剤に使われるのも納得できますね。

参考文献

独立行政法人農畜産業振興機構『紙に使用されるでん粉

黒崎白土工業株式会社『酸性白土とベントナイトの類似点と差異

畠中宏道『紙の高灰分化に向けた炭酸カルシウム処理剤の開発』Harima quarterly 121,2014 AUTUMN.

東京カラー印刷『コート紙ってどんな紙?特徴から用途、他の用紙との違いなども詳しく説明!

富士フォルム『紙もお化粧で変わります ~塗工紙~

SINCOPY ALPHA『用紙の厚さ・重さについて『連量・米坪量 一覧表』

北村典子『白紙光沢に関する考察』住友化学2004-1,39-44(2004).

阿波製紙株式会社『鉱物系粉体

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