石には硬いイメージがありますが、中には人間の爪よりも軟らかいちょっと変わったものもあります。
その代表が、粘土でできた滑石(かっせき)と葉蝋石(ようろうせき)。
どちらもロウソクのようなすべすべとした手触りの石ころで、微細な粘土鉱物の集合体でできています。
色は白色から淡緑色、あるいは灰色など。
半透明で真珠のような光沢を持ち、磨くとツルツルになる美しい石です。
粘土というと泥や土のイメージがありますが、滑石や葉蝋石は随分ときれいな姿をしていますね。
軟らかいとは言え非常に緻密な石なので、固まった泥のようなザラザラした感じは、全くありません。
本当にロウソクのような、石鹸のような、つるんとした触り心地なのです。
さて、鉱物の硬さを表す尺度として「モース硬度」というものがありますが、滑石はモース硬度1で、最も軟らかい鉱物とされています。
葉蝋石はそれよりも少しだけ硬く、モース硬度1と2の間くらい。
人間の爪の硬さがモース硬度2〜3に相当するので、どちらも爪で引っかいたら簡単に傷をつけることができる硬さです。
コンクリートやアスファルトにこすりつけると白い線が引けるので、昔は子どもたちの遊びによく使われていたのだとか。
加工がしやすいため、現在でも小学校の勾玉づくりの教材などに利用されています。
滑石と葉蝋石は互いによく似た粘土鉱物で、「結晶構造は同じだけど成分が異なる鉱物同士」という関係です。
滑石の主成分はマグネシウム、ケイ素、酸素。
これに対し、マグネシウムの代わりにアルミニウムを主成分とするのが葉蝋石になります。
そして、滑石はほぼ滑石だけの集合体で石ころを形成しますが、葉蝋石の石ころには、石英や他の粘土鉱物(カオリナイトやセリサイト)なども一緒に混じっているのが普通です。
なお、英語名はそれぞれ滑石がタルク、葉蝋石がパイロフィライトで、陶磁器、製紙、化粧品などの業界ではこちらの方が馴染みがあるかもしれません。
参考文献
もっと知りたい人のためのオススメ本
渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版,2022)
※この記事の内容を含め、身近な地質学の話題がたくさん紹介されています。