白萩隕鉄(白萩隕石)。国立科学博物館の展示。榎本武憲(榎本武揚の長男)の寄贈。Photo: Wikipedia (CC BY-SA 3.0)

 

「流星刀」とは、1898年(明治31年)に制作された、隕鉄をおもな原料とする刀剣です。宇宙から飛来した隕鉄で刀剣を作ってしまうなんて、何ともロマンあふれる話ですね。ネーミングもとても素敵ですし。

流星刀の原料となった隕鉄は、1890年(明治23年)ごろに富山県で発見された重さ23kgほどのもので、「白萩隕鉄(しらはぎいんてつ)」と名づけられています。隕鉄で作られた刀剣というのは、世界的に見れば石器時代からすでにありましたが、日本刀の刀工によって制作されたのは「流星刀」が初めてになります。

隕鉄は通常の日本刀の原料である玉鋼と異なり、鉄とニッケルの合金です。90%ほどは鉄ですが、かなりの量のニッケルが含まれています。そして、玉鋼に1%1.5%ほど含まれている炭素が、隕鉄にはほとんど含まれていません。これらの違いから、隕鉄は玉鋼に比べて加工しにくく、出来上がった刀剣も曲がりやすくなってしまいます。

流星刀の場合、刀剣の強度を高めるために、73くらいの割合で隕鉄と玉鋼を重ね合わせて使っているそうです。それでもやはり、刀剣として仕上げるには刀工の卓越した技術が必要であることは言うまでもありません。

流星刀が作られて以降、隕鉄を原料とする日本刀は他にも度々作られてきました。これらの日本刀の中には隕鉄100%で作られたものもあります。ただし、原料となる隕鉄は海外からのもので、日本に落下した隕鉄で作られた日本刀は、流星刀が唯一のものになります。 

参考文献

富山市科学博物館『白萩隕鉄と流星刀

刀剣ワールド『剣銘 以隕鉄弘邦造(広木弘邦)平成十年春 

ロケットニュース24【刀剣】隕石で作った日本刀「流星刀」が公開! 切れ味は? 地球の鉄で鍛えた刀と何が違う?』(2019913日)

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流星刀と白萩隕鉄(渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』より)