サファイア(オーストラリア産)
【サファイア】粒の大きさ:4〜7mm/オーストラリア・クイーンズランド州 アナキー産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

真っ赤なルビーも青いサファイアも同じ鉱物

深い青色の宝石と言えば、サファイアが有名です。9月の誕生石ですね。

この青い宝石、実は赤い宝石で有名なルビーと、成分がまったく同じなのです。どちらもアルミニウムと酸素でできていて、鉱物名としては「コランダム」。色が全然違うのに、同じ成分でできているというのはなんだか不思議な感じがしますね。

じゃあどこが違うかというと、おもな成分のほかに、青色や赤色の原因になる成分がほんの少しだけ含まれているのです。この「ほんの少しの成分」を不純成分(あるいは微量成分)と呼んでいます。

サファイアが青いのは、不純成分として鉄とチタンが含まれているからです。一方、ルビーが赤いのは、不純成分としてクロムが含まれているからです。

▼▼▼動画で見る▼▼▼

不純成分の違いでルビーの方が高価な宝石に

ルビー(インド産)
【ルビー】結晶の長さ:1.9cm/インド・マイソール市 チャムラジ産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

サファイアとルビーを比べると、一般にルビーの方が高価な宝石として売られていますが、実はルビーには、大きな結晶ができにくい理由があるのです。

ルビー(クロム入りのコランダム)と、サファイア(鉄・チタン入りのコランダム)とでは、同じコランダムでも生まれる場所が異なります。ルビーが生まれる代表的な場所は、マグマの熱、あるいは地下深くの熱と圧力を受けた岩石の中。これに対して、サファイアが生まれる代表的な場所は、固まる前のマグマの中や、ペグマタイトと呼ばれる岩石中の空洞です。

どちらの場合も、コランダムの結晶はとても熱い場所ででき、その高い温度が長続きするほど大きな結晶へと成長します。

ですが、残念ながらルビーが生まれる場所では、サファイアが生まれる場所ほど高い温度が長続きしません。そのため、大きな結晶ができにくく、ルビーの方が一般に高価になるというわけです。

赤色以外はみんなサファイア

ほぼ無色のコランダム(スリランカ産)
【ほぼ無色のコランダム】結晶の長さ:3.0cm/スリランカ・ラトゥナプラ産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

コランダムの結晶には、青色や赤色だけでなく、ピンク色や黄色など他にもいろんな色のものがあります。それらの色も、基本的にはわずかな量だけ含まれる不純成分が原因。ピンク色のコランダムにはルビーと同じくクロムが、黄色のコランダムには鉄が含まれています。不純成分の含まれていない純粋な成分のコランダムは無色透明です。

実は「サファイア」という宝石名は、宝石として加工されるさまざまな色のコランダムのうち、赤色(ルビー)を除くすべてのものに使われます。ピンク色なら「ピンク・サファイア」、黄色なら「イエロー・サファイア」、無色透明なら「カラーレス・サファイア」といった具合です。赤色以外はみんなサファイアというわけですね。

とは言え、このような呼び方がされるようになったのは近年になってからで、やはり有名なのは青色です。単に「サファイア」と言えば、青色の「ブルー・サファイア」を指します。

鉱物の解説:コランダム

コランダム(マダガスカル産)
【コランダム】右の結晶の横幅:2.1cm/マダガスカル・アンドラノマーロ産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

酸素と他の元素が結びついてできる化合物を「酸化物」と言います。コランダムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の酸化物で、鉱物の分類法でも「酸化物」に分類されます。

コランダムができる場所は、深成岩や変成岩の中です。

深成岩とは、マグマが地下深くでゆっくりと冷え固まってできる岩石のこと。マグマの成分によっていろんな種類があります。コランダムができるのは、閃長岩などの深成岩です。

一方、変成岩とは、地下深くの岩石が、マグマの熱や岩盤にかかる圧力によって変化してできる岩石のこと。こちらもいろんな種類がありますが、コランダムができるのは、片麻岩、結晶質石灰岩、ホルンフェルスなどの変成岩です。

鉱物データ「コランダム」
コランダムの鉱物学的特性

もっと知りたい人のためのオススメ本

この記事の内容は、当サイト管理人(渡邉克晃)の著書『へんな石図鑑』からの抜粋です。書籍版もぜひお楽しみください。

『へんな石図鑑』渡邉克晃(秀和システム、2024年)


Amazon | 楽天ブックス