玉髄(東京都小笠原村産)
【玉髄】標本の横幅:7.7cm/東京都 小笠原村 兄島 めのう岬産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

縞模様があると特別扱い

玉髄(ぎょくずい、カルセドニー)は、半透明でガラスのようなツヤのある美しい鉱物です。青や赤などいろんな色のものがあり、昔からアクセサリーや工芸品の材料としてよく使われてきました。

でも、玉髄ならなんでも良いというわけではありません。玉髄の中でも、はっきりとした縞模様(しまもよう)のあるものが特に人気なのです。

縞模様のある玉髄にはいくつかの種類があります。特徴ごとに名前がついていて、黒と白の縞模様があるものは縞瑪瑙(しまめのう、オニキス)、赤と白の縞模様があるものは紅縞瑪瑙(べにしまめのう、サードニクス)、それ以外の様々な縞模様のものは瑪瑙(めのう、アゲート)といいます。

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紅縞瑪瑙は8月の誕生石

紅縞瑪瑙(石川県産)
【紅縞瑪瑙】標本の横幅:7.0cm/石川県 小松市 菩提町産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

縞(しま)あり玉髄の人気の高さは、誕生石の一覧表にも表れています。「サードニクス」の宝石名で呼ばれる紅縞瑪瑙(べにしまめのう)は、8月の誕生石。朱色やオレンジ色に近い明るい赤色に白い線が入り、美しい縞模様を作っています。

また、旧約聖書に描かれている古代イスラエルでも、縞模様のある玉髄(すなわち瑪瑙)は、代表的な宝石でした。宗教指導者が着るもっとも高貴な服に、イスラエルの12部族を表す12個の宝石がついていたのですが、その中に3種類の瑪瑙が含まれていたのです。

12個の宝石を具体的に見てみると、赤瑪瑙(あかめのう)、トパーズ、エメラルド、トルコ石、サファイア、ダイヤモンド、ジルコン、瑪瑙、アメシスト、緑柱石、縞瑪瑙、碧玉です。旧約聖書の時代と今とでは宝石につける名前が少し異なるので、「赤瑪瑙」がどんな宝石かははっきりしませんが、見た目が赤い瑪瑙の一種だったと想像できます。

縞がなくても緑色は高価

クリソプレーズ(オーストラリア産)
【緑玉髄(クリソプレーズ)】標本の横幅:3.9cm/オーストラリア・クイーンズランド州 マールボロ産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

同じ玉髄なのに瑪瑙ばかりチヤホヤされている感じがしますが、実は縞模様がない玉髄の中にも、ちゃんと人気者はいます。その人気者とは、「クリソプレーズ」の宝石名で知られる緑玉髄(りょくぎょくずい)。

ほんのりと青みがかった緑色の玉髄で、「アップルグリーン」と表現される美しい色が人気の秘密です。また、採れる量がそれほど多くないため、縞のある玉髄と比べても高価な宝石です。

緑玉髄が緑色をしているのは、目に見えないほど細かい緑色の鉱物が中に含まれているから。緑色に限らず、玉髄にはいろんな色や模様がありますが、元々の色は半透明の白色です。その中に細かい鉱物の粒子など、色の原因となる粒子が含まれることで、赤やオレンジ、茶、黒、緑、青など様々な色を持った玉髄が生まれるのです。

緑玉髄のほかにもう一つ、血玉髄(けつぎょくずい、ブラッドストーン)も宝石として有名です。不透明な暗い緑色の中に赤い斑点模様が入った玉髄で、3月の誕生石にもなっています。

鉱物の解説:石英(せきえい)[瑪瑙(めのう)]

瑪瑙(新潟県産)
【瑪瑙】手前の標本の横幅:4.0cm/新潟県 東蒲原郡 阿賀町 楢山 常浪川産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

瑪瑙(めのう)とは、縞模様のある玉髄(ぎょくずい)のこと。そして瑪瑙も玉髄も、鉱物としては同じく石英です。六角形の柱の形をした大きな石英(水晶)とは異なり、とても細かい石英の結晶が、互いにからみ合うようにギュッと集まってできています。このような特徴があるので、大きな結晶の石英よりも割れにくく、何千年も前からアクセサリーや彫刻の素材として利用されてきました。

瑪瑙の縞模様は、石英の結晶の細かさが場所によって違うために生まれます。結晶が細かいところには色の原因となる成分が染み込みやすいので、そこが赤やオレンジ、青などの色の濃い部分になり、結晶が粗いところは白や無色透明に近い部分になります。赤やオレンジの部分には、鉄錆(てつさび)と同じ成分(酸素と結びついた鉄)が染み込んでいます。

鉱物データ「クォーツ(石英)」
クォーツ(石英)の鉱物学的特性

もっと知りたい人のためのオススメ本

この記事の内容は、当サイト管理人(渡邉克晃)の著書『へんな石図鑑』からの抜粋です。書籍版もぜひお楽しみください。

『へんな石図鑑』渡邉克晃(秀和システム、2024年)


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