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なんと、エジプトの砂漠には20mを超える巨大なクジラの骨があちこちに埋まっているんです。
すごいですね!
「あの砂だらけのところになんでまたクジラが」と思ってしまいますが、そう、あの海にいるクジラです。
化石とは言え、海の生き物が砂漠の真ん中で見つかるんですから、不思議な話ですよね。
その場所はエジプトの「ワディ・アル・ヒタン」という場所で、アラビア語で「クジラの谷」という意味。
昔から、砂漠にいるはずもないクジラとか魚の骨が散らばっていたから、人々は恐れて、この辺りを「地獄の山(ガバル・ゴハンナム)」って呼んでいたそうです。
骨といっても、化石になった骨ですが。
それにしても20mのクジラの骨って、どれくらい大きいんでしょう。
ちょっと想像がつかないですよね。
例えば修学旅行なんかで使う大型バスの長さが10mくらいだから、20mというのは大型バス2台分。
・・・でかい。
そんなのが砂漠のあちこちに埋まっているんです。
しかも、エジプトの砂漠で見つかるクジラは、ただのクジラじゃないんです。
体は今のクジラよりももっと長細くて、巨大なヘビに近い。
ヘビやうなぎのように、体をくねらせながら泳いでいたと考えられています。
そして体にはなんと、前足と後ろ足がついていたというから驚きです。
巨大な蛇のように長くて、足の生えたクジラ。
もはやクジラではないのではないか・・・。
その後ろ足はものすごく小さくて、陸地を歩けるような丈夫な足ではなかったんだけど、足があったことは確か。
このクジラには「バシロサウルス」っていう名前がつけられていて、意味は「トカゲの王様」なんです。
なんだか恐竜みたいな名前ですね。
先ほどもお伝えしたように、バシロサウルスの姿は今のクジラとはかなり違っていて、大昔のクジラ、つまりクジラの先祖なんです。
その姿は海の中の恐竜(魚竜)に近いものでした。
さて。
ところで、なんで砂漠のど真ん中にクジラの骨があるのでしょう。
何となくでもいいので、理由が思い浮かびますか?
実は大昔、ここは海だったんです。
エジプトの砂漠が、昔は海だった。
ヨーロッパとアフリカの間には地中海がありますよね。
その地中海が、ずっと大昔、今から4000万年くらい前にはもっと大きく広がっていて、エジプトも海の底だったんです。
この大昔の地中海のことを、テチス海って呼んでいます。
まあ名前はともかく、この乾燥した砂漠が大昔には海だったなんて、すぐには信じられませんよね。
ここワディ・アル・ヒタンは、そんな驚きに満ちた場所なのです。
かつて海の底だった広大な砂漠を歩くと、クジラや魚の骨があちこちに散らばっている。
まさに「地獄の山」っていうアラビア語の呼び名がぴったりの場所です。
恐竜のような巨大なクジラの先祖が泳ぎ回る大昔のテチス海を想像しながら、このエジプトの砂漠を歩いてみてください。
きっとピラミッドに負けないくらい、大きな感動があることでしょう。
役立つ豆知識
- アフリカの砂漠といえばサハラ砂漠ですね。ワディ・アル・ヒタン(クジラの谷)もサハラ砂漠の一部です。
- エジプトは国土の95%が砂漠です。ナイル川のまわり以外はとても乾燥している国なんです。
- ワディ・アル・ヒタンからは400以上のクジラ化石が見つかっていて、クジラの他にもサメ、カメ、ジュゴン、ノコギリエイ、ウミヘビ、魚、マングローブなど様々な化石が見つかっています。近くには2016年にオープンした化石博物館があって、詳しい展示を見ることができます。
- この辺りの砂漠には岩山が多く見られますが、おもな岩石の種類は、砂岩、石灰岩、頁岩(けつがん)です。
- バシロサウルスの他、イルカに似た小型クジラのドルトンも有名です。
- エジプトの砂漠は暑く、夏には40〜50℃にもなります。
- ワディ・アル・ヒタンは、2005年にユネスコの世界遺産に登録されました。
参考文献
もっと知りたい人のためのオススメ本
渡邉克晃『美しすぎる地学事典』(秀和システム,2020)