サンサルバドル島の斜交葉理(バハマ諸島・石灰岩)
©️James St. John / flickr

石灰岩に描かれた美しい波の模様

まるで流れる水がそのまま化石になったような、緩やかにカーブを描く縞模様。

重なり合うそれぞれの地層が、別々の方向から流れ込んできた波のように見えますね。

 

この地層はバハマ諸島・サンサルバドル島の北東部、ノースポイント半島に見られる石灰岩の地層で、専門用語で「斜交葉理(しゃこうようり)」と呼ばれています。

「葉理」というのはミルフィーユのように細かく積み重なった地層のことで、そのような葉理が複数個、互いに斜めに積み重なっているので「斜交葉理」と言います。

 

冒頭の写真では少なくとも3つの葉理が重なっているのですが、区別できるでしょうか。

一番上がほぼ水平の葉理で、次が、やや間隔が広く急傾斜で交わっている葉理。

そしてその下に、再び間隔の狭い、緩やかな傾斜で交わる葉理があります。

 

斜交葉理は水流や風によって集積した地層で見られ、それぞれの葉理の変化は、水流や風の向き・強さなどが変わったことを示しています。

冒頭のノースポイント半島の石灰岩は風によって集積したものですが、下の2つの葉理はおおむね画面右から左に吹く風で、一番上の葉理は画面左から右に吹く風で集積したと考えられます。

もちろん、風の向きは右か左かの2通りではありませんので、かなり大雑把に捉えた時の話ですが。

 

また、それぞれの葉理がミルフィーユのようになるのは、風の向きが同じであっても、風の強さによって運ばれてくる砂つぶの大きさが微妙に変わるため、その違いを反映してのことです。

炭酸カルシウムの砂丘が石灰岩になった

さて、こうした縞模様の見える石灰岩がどのようにしてできたかと言いますと、石灰岩の成分である炭酸カルシウムの砂つぶが風に運ばれて集積し、やがて固まって石灰岩になったと考えられています。

言わば、炭酸カルシウムの砂丘がそのまま岩石になったということ。

 

砂つぶが固まってできた岩石を砂岩と言いますが、このように炭酸カルシウムの粒子が固まってできた岩石を、「カルクアレナイト(石灰砂岩)」と呼んでいます。

 

サンサルバドル島は全体的に石灰岩でできた島ですが、斜交葉理の見られるカルクアレナイトの地層は島で2番目に新しい地層で、約5300年前に形成されました。

石灰岩を作っている炭酸カルシウムの粒子は、おもに微生物の遺骸(骨格)や排泄物からなり、鉱物名で言うとアラゴナイト(霰石(あられいし))という鉱物です。

なお、炭酸カルシウムの鉱物にはカルサイト(方解石)とアラゴナイト(霰石)の2種類があり、どちらも同じ化学組成ですが結晶の形で区別されています。

 

次の写真は、サンサルバドル島ノースポイント半島の西側に露出している、カルクアレナイトの地層の全景です。

ノースポイント半島の西側に露出する石灰岩(バハマ諸島・サンサルバドル島)
ノースポイント半島の西側に露出する石灰岩(©︎James St. John / flickr

 

島の内陸部は植生に覆われているため、地層の観察には不向き。

このように海岸沿いの場所に行くと、露出した断面がよく観察できます。

 

この石灰岩を顕微鏡で見ると、炭酸カルシウムの砂つぶ同士が互いにくっついているそうです。

つまり、のっぺりとした石灰岩の中に砂つぶが混ざっているという状態ではなく、砂つぶが主体ということです。

 

そして、砂つぶの隙間を埋めるようにセメントのような成分が充填されて、一応は固まった石灰岩になっている。

とは言っても、そんなに硬く固まっているわけではないから、上の写真のように、波に洗われてどんどん削れて行っているわけです。

 

「カルクアレナイト(石灰砂岩)」という呼び名は、このような砂つぶ主体の石灰岩を表す岩石名。

構成する粒子の種類や成分に着目したネーミングというわけですね。

 

一方、この地層は風に運ばれて集積したという意味で、「エオリアナイト(風成岩)」と呼ばれることもあります。

こちらは、「どのようにしてできたか」という形成プロセスに着目した呼び方です。

孤立した石灰岩の島、サンサルバドル島

サンサルバドル島が位置するのは、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の間、キューバやハイチのあるカリブ海地域です。

1492年に奴隷商人のクリストファー・コロンブスが上陸するまでは、先住民部族のアラワク族が住んでいて、彼らの言葉で「グアナハニ島」と呼ばれていました。

イギリスの植民地支配を経てバハマ領となり、1929年にバハマ政府により、島名がサンサルバドル島になったそうです。

 

さて、このサンサルバドル島。

海洋の地形から見ると、実はかなり孤立した島になっています。

 

島の周囲は沖合400から1500メートルにかけて浅い海(水深40メートル以内)に囲まれているのですが、その外は急激に水深が深くなり、4000メートルの深海まで一気に落ち込んでいるのです。

このような孤立した海山のようなところに、石灰岩の材料となる生物の遺骸(骨格・貝殻など)が集積し、やがて炭酸カルシウム(つまり石灰岩)でできた平らな土台ができました。

これがサンサルバドル島の原型です。

 

その後、海水面の下がった時期に砂丘由来のカルクアレナイトの地層などができ、そこからまた徐々に海水面が高くなっていって現在に至る、というわけです。

参考文献

場所の情報