ギアナ高地のアウヤンテプイ(カナイマ国立公園,ベネズエラ)
©︎Stig Nygaard / flickr

断崖に隔てられた世界最後の秘境

南アメリカ大陸北東部に広がるギアナ高地には、標高1000メートルから3000メートルの「テプイ」と呼ばれるテーブルマウンテンが点在しています。

「テプイ」とは、先住民部族ぺモンの言葉で「神々の住処(すみか)」という意味だとか。

しばしば「世界最後の秘境」として紹介されるこの神秘的な場所は、コナン・ドイルのSF作品『ザ・ロストワールド(失われた世界)』のモデルにもなりました。

雲海に浮かぶギアナ高地のテプイ(テーブルトップ・マウンテン)
雲海に浮かぶギアナ高地のテーブルマウンテン(©︎2il org / flickr

 

ギアナ高地は、ベネズエラ南東部のカナイマ国立公園を中心としたおよそ3万平方キロメートルに渡る地域で、熱帯のジャングルやサバンナで構成されています。

この一帯のテーブルマウンテンの数は、全部で115。

1994年には世界遺産にも登録されました。

 

冒頭の写真はギアナ高地最大のテーブルマウンテン、アウヤン・テプイ(標高2535メートル)です。

写真では一部しか見えていませんが、頂上のテーブル地形の面積は667平方キロメートルもあり、東京23区(619平方キロメートル)を上回る大きさ。

 

ちなみにアウヤン・テプイの「アウヤン」は「悪魔」とか「悪霊」の意味だそうで、「テプイ」だけだと「神々の住処」ですが、「アウヤン・テプイ」になると「悪魔の住処」という意味になってしまいます。

先住民部族にとって、ここは神秘的な場所でもあり、また恐れを抱く場所でもあったのかもしれませんね。

 

アウヤン・テプイの断崖には、世界最大の落差を持つエンジェル・フォールという滝もあります。

崖下までの落差が979メートルで、この高さはナイアガラの滝(カナダとアメリカの国境)の約19倍。

名前の由来は「天使の滝」ではなく、発見者であるアメリカ人飛行家、ジミー・エンジェル氏から来ているそうです。

20億年前の地層が侵食から取り残された

ギアナ高地のテーブルマウンテンは、およそ20億年から14億年前の地層でできています。

岩石名で言うと、砂岩、クォーツァイト(珪岩)、礫岩など。

 

砂岩と礫岩は、それぞれ砂や礫(れき)が固まったものですので、わかりやすいですね。

クォーツァイトと言うのは、二酸化ケイ素を主成分とするチャートや珪質砂岩がマグマの熱で加熱され、より一層硬い岩石に変化したものです。

 

ギアナ高地一帯はかつてこれらの岩石で覆われていたわけですが、長年の侵食によって削られていき、一部分だけがテーブルマウンテンとして取り残されたと考えられています。

その形成プロセスはこうです。

 

20億年ほど前、花崗岩と変成岩でできた大陸の上に、いくつかの湖ができました。

その湖には砂や礫が溜まり、長い年月の間にギアナ高地の原型となる硬い地層ができていった。

 

その後、地球内部から上昇してきた熱いマントルによってこの辺りの岩盤は押し上げられ、標高が上がったために地形の侵食が増大。

また、この時の大規模な岩盤の上昇に伴って、湖底で形成された硬い岩石には何本もの割れ目が形成されました。

 

ギアナ高地の侵食が進んだ時期はおよそ2億5000万年前ごろで、ギアナ高地の上にあった地層は全て失われ、さらにギアナ高地を構成する砂岩などの地層も、割れ目に沿ってどんどんと削られていきました。

その結果、割れ目が少なく、侵食に対して抵抗力の強かった部分だけが取り残されてテーブルマウンテンとなり、現在のようなギアナ高地の地形が形成されたと考えられているのです。

テーブルマウンテンの上に広がる不思議な世界

テーブルマウンテンの頂上の平らな部分には、小さな山もあれば川もあり、そこだけで一つの生態系が作られていると言います。

これまでに発見された約4000種の植物のうち、70パーセントほどがギアナ高地のテーブルマウンテンにしか生育していない種であるとのこと。

垂直な断崖によって外界から閉ざされていて、生物の行き来がほとんどないからです。

 

そして、テーブルマウンテンの上の世界には、知られざる不思議なことがまだまだあります。

その一つが、巨大な謎のたて穴。

 

特にサリサリニャーマ(標高1350メートル)というテーブルマウンテンに多く見られ、最大のものは直径350メートル、深さ350メートルほどもあるそうです。

地下の洞窟を流れる川の天井が崩落し、陥没してできた穴だと考えられていますが、詳しいことはわかっていません。

穴の中はほぼ垂直な断崖になっており、やはり外の世界とは断絶された生態系となっているようです。

 

こういう陥没地形は、石灰岩地帯だったらよく見られます。

水に溶けやすい石灰岩の場合、地下水に溶かされて地面の下に多くの穴が開き、中には天井が崩落するものもあるので、しばしば陥没地形が作られるのです。

鍾乳洞をイメージするとわかりやすいですね。

石灰岩地帯に特有のこのような地形を、カルスト地形と言います。

 

テーブルマウンテンを構成する岩石は砂岩やクォーツァイトですので、石灰岩の陥没地形とは異なりますが、カルスト地形と似ていることから「擬似カルスト」と呼ばれています。

参考文献

場所の情報