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周囲を絶壁に囲まれた天空の宮殿

高さ約200 mの巨岩の上に整然と残る古代遺跡、シーギリヤ(Sigiriya)。

スリランカ北部のジャングルにそびえるこの遺跡は、紀元5世紀に建造されたとされるシンハラ王朝の宮殿跡です。

この巨岩は紀元前3世紀ごろから仏教の修道院として利用されていたそうですが、シンハラ王朝のカッサパ王により、岩の頂上に王宮が造られました。

 

写真の通り巨岩の周囲はほぼ垂直の絶壁。

完全に地上から孤立した場所であるにも関わらず、かつては木造の王宮やため池を配した美しい庭園が広がっていたというのですから、本当に驚きです。

©︎dronepicr / flickr

 

喩えるなら、ロッククライミングで65階建てのビルの高さまで上り、そこで岩を削ったりレンガを積んだりする土木工事を大規模に行うわけです。

しかも宮殿は木造ですから、大きな木材を何本も運び上げなければなりません。

工事中、ちょっと足を滑らせたら200 m下の地面まで真っ逆さま。

 

今でこそ頂上まで鉄製の階段で登れるようになっていますが、当時それに代わるようなものがあったとは思えません。

岩肌に掘られた細い通路はあるようですが、それも一部分だけ。

一体どうやって造ったのか、謎だらけの遺跡なのです。

地質的には5億年以上前の古い変成岩

シーギリヤの特徴的な巨岩は、「シーギリヤ・ロック(Sigiriya Rock)」と呼ばれています。

岩石の種類としては、先カンブリア時代の変成岩。

6億年前〜5億年前にかけて起こった大規模な地殻変動の影響を受けていて、高い温度と圧力により縞々模様の「片麻岩(へんまがん)」になりました(変成岩の一種です)。

 

どれほどの高温・高圧かというと、温度は500℃〜650℃、圧力はなんと数千気圧にものぼります。

片麻岩の見た目は、グニャグニャと曲がった白黒の縞模様。

高い温度のために少しは柔らかくなっているものの、溶けてマグマになって変形したわけではなく、カチッとした岩石のまま変形したわけですので、地殻変動の力の強さが伝わってきます。

 

ところで、片麻岩へと変化する前の元々の岩石は何だったかというと、代表的なものは堆積岩の一種の泥岩と、火成岩の一種の花崗岩とされています。

元になる岩石の種類によって片麻岩の成分や見た目にも違いが出てきますが、どちらも同じく片麻岩と呼ばれています。

 

また、シーギリヤ・ロックの片麻岩には、花崗岩と混じり合ってミグマタイト(混成岩)になっている部分も見られます。

このあたり一帯の片麻岩ができた後に、地下深部から花崗岩質のマグマが入り込んで来て、片麻岩と花崗岩が混在するようになったためにできました。

 

さらに特徴的なものとして、チャーノカイトという岩石も見られます。

チャーノカイトはスリランカの地質を構成する代表的な岩石の一つで、種類としては花崗岩の一種なのですが、マグマの中に水分が少ないという特別な条件の時にできる変わり者です。

シーギリヤ・ロックの片麻岩ができた高温・高圧の条件では水分の少ないマグマができやすく、片麻岩の一部が溶けてマグマになることで、チャーノカイトができたと考えられています。

なぜこんな形の巨岩になったのか

片麻岩にしろチャーノカイトにしろ、シーギリヤ・ロックだけの特徴ではなく、このあたり一帯は全て同じような岩石でできています。

なぜシーギリヤ・ロックだけ、このような切り立った崖の巨岩になったのでしょうか。

 

これにはおもに2つの説があります。

 

一つ目の説は、単純に片麻岩が侵食から取り残されたというもの。

アメリカ合衆国アリゾナ州のモニュメントバレーに見られる切り立った岩山のように、侵食から取り残された地層の周囲は、しばしば垂直な絶壁になることが知られているからです。

このような侵食地形をビュート(孤立丘)と呼んでいて、地質的には周囲と違いがありません。

 

もう一つは、上昇するマグマの通り道が周囲よりも侵食に強かったために、そこだけ岩頸(がんけい)として残ったという説。

侵食から取り残されたという点では最初の説と同じですが、こちらの説では、取り残された部分だけ周囲の岩石と明らかに異なっていたと考えるわけです。

もし岩頸であるなら、シーギリヤ・ロックの主体は片麻岩ではなくマグマ起源のチャーノカイトということになりますが、その辺りについては十分な研究報告がありません。

庭園や水路を造った高度なテクノロジーの謎

シーギリヤ・ロック(Sigiriya Rock)
©︎Sarah Nichols / flickr

 

最後に少しだけ、シーギリヤの考古学的な謎に触れたいと思います。

地上200 mの絶壁の上に宮殿を造ったというだけでも信じられないことですが、シーギリヤ・ロックを中心とした紀元5世紀の庭園や水路には、実に高度なテクノロジーが見られると言います。

 

上の写真はシーギリヤ・ロックの頂上の遺跡ですが、直線的に区切られた美しい庭園であることがよくわかります。

生活用水の確保のためのプール(ため池)を配した庭園には、噴水や集水システムが備わっているとのこと。

噴水って、ポンプがなければため池の高低差を利用するしか方法はなく、高度に設計された庭園だったことが伺えます。

 

また、シーギリヤロックの下にも庭園は広がっていて、左右対称の美しい幾何学模様と、それをあえて壊すような非対称の曲線模様を配した独特の作りになっているのです。

その高度なテクノロジーは、ギザの大ピラミッドやバビロンの空中庭園などで知られる「世界の七不思議」にちなみ、八番目の不思議(the eighth wonder of the world)と言われるほどです。

今後の研究の進展が楽しみですね。

参考文献

Attractions in Sri Lanka『Sigiriya Rock

Wikipedia『Sigiriya

ウィキペディア『シーギリヤ

ダンブッラ・シーギリヤ観光協会『シーギリヤエリア

地質情報ポータルサイト『世界の地質案内 スリランカ:シーギリヤロック

TBS『特集 古代都市シーギリヤ

山口大学理学部『地球科学標本室・ゴンドワナ資料室 スリランカ