愚者の金、黄鉄鉱、パイライト、錬金術
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「地球上に存在する金(ゴールド)がどうやってできたのか、いまだにわからない」

このようなことを言うと、ちょっと意外に感じるかもしれません。

なぜなら、金のでき方として、「マグマから放出される熱い地下水に金が含まれていて、それが地下水の通り道である岩石の割れ目に沈澱してできた」などの説明が、ちゃんとなされているからです。

 

でも、こうした説明は、「金のでき方」ではなく「金鉱山のでき方」を示したものに過ぎません。

金鉱山というのは、1トンの岩石中に5グラム以上の金が含まれているような岩石(金鉱石)が採掘できる場所のことです。

上記の説明は、特定の場所に金という元素が多く集まるしくみを説明したものですので、「金鉱山のでき方」の説明になります。

 

もし金そのもののでき方を説明するならば、上記の説明において、「マグマ中に含まれていた金はそもそもどこから来たのか」を説明しなければなりません。

地球内部の温度と圧力では到底できるものではありませんので、地球が形成された時にはすでに地球内部に含まれていたわけです。

 

そうすると、原始地球を作る材料となった太陽系のちりに金が含まれていたことになり、その金は、宇宙のどこかで作られた、ということになります。

なんと、「金のでき方」を根本的に考えるなら、地球の誕生にまでさかのぼる壮大な話になってくるのです。

 

しかも、そこまでさかのぼって考えてみても、やはり金がどうやってできたのか、きちんと説明することができません。

金を含め、鉄よりも重い元素(銅、銀、プラチナ、ネオジムなどのレアアース、ウランなど)は、恒星の内部で起こっている核融合反応では生成されず、今のところ、中性子が密集した高温の場所、すなわち2つの中性子星が衝突する現場で作られるという説が有力です。

ただし、これにも異論があり、中性子星の衝突によって作られる量は全体の一部に過ぎず、多くは特殊な超新星爆発(強い磁場を持つ回転する星の超新星爆発)でできるという考え方もあります。

 

こういうわけですから、金もほかの重い元素も、実のところ宇宙のどこでどうやってできたのか、いまだに解明されていないというのが現状なのです。

 

さて、「金のでき方」について色々と述べてきましたが、補足として、「金鉱山のでき方」についても少し詳しく見ておきましょう。

金が特定の場所に集まるしくみは鉱山ごとに異なりますので、ここでは鹿児島県の菱刈鉱山を例に紹介したいと思います。

 

菱刈鉱山の場合、まずは地下深くから上昇してきたマグマが徐々に固まっていく過程で、その一部が塩素を多く含むマグマになっていきました。

塩素は液体中に残りやすいため、岩石と一緒に固まらずに、マグマの中に残ったわけです。

そして塩素の多いマグマの中では金と塩素が結びつき、水に溶ける状態(イオン)になって、マグマから放出される熱い地下水と一緒に周囲の地層にしみ込んでいきました。

 

その後、周囲の地層にしみ込んでいった「金と塩素からなるイオン」は、そこで一旦分解され、金が沈澱します。

ところが、その辺りの地下水には硫化水素が含まれていて、今度は金と硫化水素がくっついて別のイオンになり、再び水に溶け、地下水の流れに乗って地表近くまで運ばれていきます。

 

そして、地表に近い浅い場所まで上昇したところで周囲の酸素が多くなり、金と硫化水素からなるイオンが分解。

地表付近の岩石中に金として沈澱するようになりました。

こうして菱刈鉱山の金鉱石が生まれたと考えられています。

「金鉱山のでき方」も、十分に複雑な過程ですね。

参考文献

週刊エコノミクスOnline『「1トンあたり40グラムの金」品質では世界一の金山「菱刈鉱山」とは何か2020年11月22日

古澤美由紀・根建心具『菱刈金鉱床地域のデイサイトの塩素の地球化学』資源地質62,1-16(2012)

理化学研究所『理研の博士に聞いてみよう! 金やレアアースの誕生のなぞ

ナゾロジー『宇宙にある「金」はどこからやってきたのか?元素の起源が覆った可能性あり』(2020年9月17日)

University of Hertfordshire『Gold in the cosmos is an astronomical mystery

Chiaki Kobayashi, Amanda I. Karakas, and Maria Lugaro『The Origin of Elements from Carbon to Uranium』The Astrophysical Journal 900: 179 (33pp), 2020.