コーパル(コンゴ産)
【コーパル】標本の横幅:5.5cm/コンゴ産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

琥珀になりきれなかった樹脂の化石

コーパルは、木の樹脂が化石になったもので、見た目は琥珀(こはく)ととてもよく似ています。「樹脂の化石」という点では、コーパルも琥珀も同じです。違いは、できるまでの年月の長さ。

琥珀は、何百万年もの長い時間をかけて、地中で硬くなったものです。それに対し、コーパルは何百年、あるいは何千年かしか経っていない、とても若い化石。そのため、コーパルは琥珀よりももろくて壊れやすいことが多く、当然ながら、宝石にはあまり適していません。

コーパルも、地中で長い年月が経てば琥珀になる可能性があります。言ってみれば「半人前の琥珀」というわけです。

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琥珀の「硬い」はそれほどでもない

琥珀(旧東プロイセン産)
【琥珀】標本の横幅:3.1cm/ロシア(旧東プロイセン)・パルムニッケン産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

コーパルとは違い、長い年月をかけて硬くなっていて、宝石にも利用されることの多い琥珀。ですが、琥珀にとっての「硬い」は、宝石として見ると実は大したことがありません。というより、むしろ琥珀は軟らかくてデリケートな宝石です。

琥珀のモース硬度は2〜2 ½で、一般的な宝石の基準である硬度7よりもずっと低い値。「硬度7」というのは石英のモース硬度です。石英の小さな粒は砂ぼこりの中にも普通に入っているため、例えば外に着ていった服などで宝石の表面をこすってしまうと、硬度7よりも軟らかい宝石には、わりと簡単に傷がついてしまうのです。

宝石は身につけるものですので、傷のつきにくいものが好まれるのは当然と言えますね。琥珀の場合、砂ぼこりのついた服どころか、指の爪で強く引っかいただけでも傷がついてしまうくらいの「硬さ」なので、取り扱いには注意が必要です。

また、琥珀の比重は1.0〜1.1で、海水に浮かぶほど軽いのも琥珀の特徴です。

樹脂は樹液が固まったもの

サクラの木の樹脂
樹液が固まってできた樹脂(サクラの木)。樹脂部分の縦の長さ:約3cm

「樹脂(じゅし)」と言われてもピンとこないかもしれませんが、「樹液(じゅえき)」なら見覚えがあると思います。街路樹の幹から流れ出ている、水飴のようなあれですね。樹液は、初めのうちはベタベタとした液体ですが、時間が経つとだんだんと固まっていきます。この固まった樹液が、樹脂です。

樹脂も固体ではありますが、コーパルや琥珀ほど硬くはありません。コーパルや琥珀になるには、地中深くに埋もれて、化石になる必要があります。

樹液から樹脂になる変化は、泥が乾燥して固まるのに似ています。泥の場合は水分が蒸発して固まるわけですが、これと同じように、樹液の中の蒸発しやすい成分がだんだんと蒸発していくことで、固まって樹脂になります。

こうして固まった樹脂が、木と一緒に地中に埋まり、化石になります。「化石になる」とは、この場合、バラバラだった分子(樹脂の成分)が互いにつながって硬くなることを意味します。コーパルも琥珀も、地中深くに埋もれた結果できるものなので、化石と見なされます。

鉱物の解説:琥珀(こはく)

琥珀(ドミニカ共和国産)
【琥珀】写真の横幅:約15cm/ドミニカ共和国・パロアルト産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

炭素(C)と水素(H)、それから酸素(O)をおもな成分とする有機化合物です。何種類かの有機化合物が混ざっているので、他の鉱物のように特定の化学式を示すことができません。

「有機化合物」とは、簡単に言えば炭素を含む化合物のこと。ただし、二酸化炭素や炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなど、単純な化合物は無機化合物に区分されます(補足:石墨は化学式「C」で表され、化合物ではなく「元素単体」です)。

琥珀の原子の並び方には規則的な繰り返しがなく、このような特徴は「非晶質(ひしょうしつ)」と呼ばれています。結晶ではない、という意味です。

成分、比重、硬度、光沢など、基本的な特徴は、琥珀とコーパルでほとんど同じです。明らかに違う点として、コーパルはアルコールやアセトンに溶けますが、琥珀はこれらに溶けません。

※アセトン=マニキュアの除光液のおもな成分。

鉱物データ「アンバー(琥珀)」
アンバー(琥珀)の鉱物学的特性

もっと知りたい人のためのオススメ本

この記事の内容は、当サイト管理人(渡邉克晃)の著書『へんな石図鑑』からの抜粋です。書籍版もぜひお楽しみください。

『へんな石図鑑』渡邉克晃(秀和システム、2024年)


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