アマゾナイト(ブラジル産)
【アマゾナイト(微斜長石)】標本の横幅:11.7cm/ブラジル・ミナスジェライス州産/国立科学博物館所蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

青緑色の微斜長石につけられた変種名

微斜長石(びしゃちょうせき)という鉱物のうち、青緑色のものは「アマゾナイト」という変種名で呼ばれます。トルコ石に似た鮮やかな色合いが美しいですね。

「変種名」というのは、その鉱物の中で特徴的な色や形を持つものにつけられる別名のことです。宝石名として使われているルビーやサファイアも、コランダムという鉱物の変種名と捉えることができます。

アマゾナイトという変種名がつけられたのは、1847年のこと。その当時、この青緑色の微斜長石の産地ははっきりとしておらず、わかっていたのは、「アマゾン川の近くで採れたものらしい」ということだけだったそうです。そういった曖昧な情報をもとに、「アマゾンの石」という意味の「アマゾナイト」と名づけられたのです。

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アマゾン川の流域からは見つかっていない

アマゾン川とミナスジェライス州
ブラジルのミナスジェライス州とアマゾン川の位置(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

ところが、アマゾナイトのおもな産地はブラジルのミナスジェライス州で、アマゾン川の流域からは青緑色の微斜長石は見つかっていません。

名前をつけるときに産地を間違えてしまった可能性が高いわけですが、それもそのはず。アマゾン川の流域はあまりにも広すぎて、その範囲を正しく理解するのはかなり難しいことなのです。

上の地図でアマゾン川を見てみてください。なんと、南アメリカ大陸の半分近くを覆うように、長大な河川が東西南北に広がっています。「アマゾン川の流域」とは、地図中の薄い黄緑色に塗られた部分のことで、分かりやすくいうと、「そこに降った雨がアマゾン川に注がれる範囲」を意味します。その面積は、実に南アメリカ大陸の40%ほど。地図に示されない細い河川がたくさん伸びていて、この範囲であれば、どこでも「アマゾン川の流域」と言えてしまうのです。

産地であるミナスジェライス州がいくらアマゾン川の流域から外れていると言っても、これでは間違われても仕方ありませんね。

事実はともかく、優れたネーミング

アマゾナイト(ブラジル産)
【アマゾナイト(微斜長石)】標本の横幅:10.6cm/ブラジル・ミナスジェライス州産/個人蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

ところで、この「アマゾナイト」という名前、鮮やかな青緑色の見た目にとてもよく似合っていると思いませんか。青緑色は水の色を連想させ、その水の色のイメージが、アマゾン川という世界最大の大河とぴったりと結びつくのです。日本語ではアマゾン川に「天河(あまぞん)」の漢字を当て、アマゾナイトのことを「天河石(あまぞんせき/てんがせき)」と訳しています。こちらも良い名前ですね。

そんなアマゾナイトの青緑色は、おもな成分とは別に含まれる、少量の鉛が原因とされています。「青緑色」と一口に言っても、青っぽいものから緑っぽいものまでかなり幅があるのですが、鉛の量が多くなるにつれ、より緑色が強くなるようです。ただし、中には鉛がまったく含まれていないアマゾナイトもあり、色の原因はまだよくわかっていません。

アマゾナイトの色は、12月の誕生石でもあるトルコ石とよく似ていて、硬度もトルコ石より少し高め。宝石として利用されることもありますが、「劈開(へきかい)」という割れやすい性質があるので、取り扱いには注意が必要です。

鉱物の解説:微斜長石(びしゃちょうせき)[アマゾナイト]

アマゾナイト(ブラジル産)
【アマゾナイト(微斜長石)】標本の横幅:15.6cm/ブラジル・ミナスジェライス州産/個人蔵(出典:『へんな石図鑑』秀和システム)

微斜長石の色は基本的には白色ですが、淡黄褐色、くすんだピンク色など、ほかの色もあります。その中で、特に青緑色の微斜長石には、「アマゾナイト」という別名(変種名)がつけられています。アマゾナイトの日本語名は、「天河石(あまぞんせき/てんがせき)」。

アマゾナイトはちょっと特別ですが、白色などの普通の微斜長石であれば、岩石中にたくさん見られるありふれた鉱物です。例えば、お城の石垣やお墓などに使われている「花崗岩」という白っぽい岩石にも、おもな鉱物として微斜長石が含まれています。

微斜長石は、正長石、玻璃長石(はりちょうせき)とともに「カリ長石」に分類されます。カリウムが多い長石なので、カリ長石。そのほかに、ナトリウムが多い曹長石(そうちょうせき)、カルシウムが多い灰長石(かいちょうせき)があります。

鉱物データ「マイクロクリン(微斜長石)」
マイクロクリン(微斜長石)の鉱物学的特性

もっと知りたい人のためのオススメ本

この記事の内容は、当サイト管理人(渡邉克晃)の著書『へんな石図鑑』からの抜粋です。書籍版もぜひお楽しみください。

『へんな石図鑑』渡邉克晃(秀和システム、2024年)


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