©︎Aline Dassel / Pixabay

溶岩地帯に広がる青い温泉湖

黒々とした溶岩地帯の窪地を埋めるように、白濁した青い湖が広がる「ブルーラグーン」。

アイスランド南西部に伸びるレイキャネス半島の先端、首都レイキャビクから40キロメートルほどの場所にあるこの温泉湖は、地熱発電所の建設によって生まれた人工の湖です。

 

1976年に完成したスヴァルツエンギ地熱発電所では、地下2キロメートルから噴出する高温の蒸気(約240度)でタービンを回し、発電します。

ブルーラグーンに隣接するスヴァルツエンギ地熱発電所(©︎laurent gauthier / flickr

 

アイスランドには地熱発電所が多くあり、発電に使われた蒸気は、多くの場合そのまま温水として各家庭に供給されています。

 

しかし、スヴァルツエンギ発電所の場合には、7対3ほどの割合で海水と淡水が混合したミネラル豊富な蒸気であったため、温水としての再利用ができなかった。

そのため、蒸気が冷えて70度ほどになった温水は、周囲の溶岩地帯に排水されました。

 

レイキャネス半島のこの辺り一帯に広がる溶岩は、1226年の火山噴火で発生した溶岩で、比較的新しいものです。

だから溶岩に「目詰まり」が少なく、排水性が非常に良いという特徴を持っていました。

発電所が排水した使用済みの温水も、最初は地面に吸収されて表面には残らなかったそうです。

 

ところが、温水に溶けていたシリカ成分が沈殿し、溶岩が「目詰まり」を起こすようになりました。

シリカとは二酸化ケイ素のことで、温水の温度が下がると白濁し、白い泥のような沈殿を作るのです。

シリカの泥はやがて50センチから1メートルもの厚さになり、排水性の悪くなった溶岩の窪地に、現在のような温泉湖ができたというわけです。

 

ちなみに「ラグーン」というのは地形を指す用語で、砂州(さす)やサンゴ礁によって海から隔てられた浅い湖のことです。

ですから、「ブルーラグーン」という名称はこの場所の地形を表しているわけではなく、あくまでも呼称であるということですね。

微細なシリカ粒子が青い光を散乱する

The gorgeous azure thermal waters of the Blue Lagoon
ブルーラグーンの青い温泉水(©︎McKay Savage / flickr

 

ところで、ブルーラグーンの水はなぜ青いのでしょうか。

この湖にはシアノバクテリア(藍藻)などの藻類が生息していることがわかっていますが、藻類の色で青く見えているわけではありません。

 

実は、青い色の正体は温水に含まれるシリカの微粒子。

溶岩の「目詰まり」の原因となったシリカですが、温水に溶けきれなくなった分が白い泥として沈殿する一方、温水の中には依然としてたくさんのシリカが溶けているわけです。

 

ではどのような形で溶けているかと言いますと、多くはコロイドと呼ばれる非常に小さな粒子として溶けています。

その大きさは、直径およそ50ナノメートル(2万分の1ミリメートル)という想像できないほどの小ささで、これくらい小さいと粒子であっても沈まずに溶けていることができます。

身近な例で言うと、牛乳に含まれる乳脂肪も細かい粒子で、コロイドの一種。

 

さて、シリカの微粒子は、乳脂肪よりもさらにその直径が小さいので、波長の短い光しか散乱することができません。

「波長」について少し補足しますと、私たちが目で見る光には波の性質があって、虹の7色は波長、つまり波の「山」から「山」までの距離に対応しているというわけです。

そして、ここで大事なのは「青い光は波長が短い」ということ。

 

太陽の光は虹の7色が全て混じったものですから、赤、黄、緑、青などの様々な色がブルーラグーンの水に飛び込んできます。

でも、波長の長い赤、黄、緑などの光は、シリカの粒子にはほとんど当たりません。

粒子が小さすぎるからですね。

シリカに当たるのは波長の短い青色だけ。

 

そして、その他に水分子による光の吸収などを加味すると、結果的に青色の光だけがシリカに当たって散乱するのです。

そういうわけで、ブルーラグーンの水は青色光を散乱し、私たちの目に青く見えるというわけです。

シリカはどこから来たのか

Blue lagoon, Iceland.
ブルーラグーンの湖底にたまるシリカの泥(©︎Jonathan Grado / flickr

 

ここまでシリカ微粒子の話をしてきましたが、そもそもどうしてブルーラグーンの水にはシリカが多いのでしょうか。

 

冒頭でお話しした通り、発電所で利用している蒸気には海水が70パーセントも混ざっていますから、塩分が多いのはわかります。

でも、ただの海水では白い泥が沈殿したり水がこれほど青く見えたりはしませんよね。

やはりこの場所から噴出する蒸気に、特別な理由があるようです。

 

地下およそ2キロメートルから噴出しているスヴァルツエンギ発電所の蒸気は、240度もの高温と高い圧力を維持したまま地表に上がってきますが、高温・高圧の蒸気はとても化学反応を起こしやすく、溶岩の中を通れば溶岩の成分を溶かし込んでしまいます。

そして、溶岩に限らず岩石の主な成分は二酸化ケイ素、つまりシリカですので、蒸気にたくさんのシリカを含むようになったというわけです。

 

ブルーラグーンの湖底にたまった白い泥は、温水中のシリカの微粒子が沈殿して泥になったもの。

溶けきれなくなったシリカは互いに集まってもう少し大きな粒子になり、泥のように湖底に沈むのです。

こうして青い水と白い泥が織りなす、ブルーラグーンの美しい景観が生まれました。

参考文献

場所の情報