感動の一冊に出会いました。
地形写真家・竹下光士さんの『ジオスケープ・ジャパン 地形写真家と巡る絶景ガイド』(山と渓谷社,2020)です。
日本の地形を学術的な視点から取材した写真集なのですが、目に飛び込んでくる写真の数々が美しすぎて、圧倒されます。
何よりもまずその写真を見てもらったほうがいいので、Amazonの掲載ページからちょっとだけ写真をご紹介しますね。
例えばこちら。
高知県の室戸岬を写したこの風景には、大きく傾いた砂岩・泥岩の地層が収められています。
「なんでこんなに傾いたの!?」という疑問が浮かんだら、本書の解説にもぜひ目を通してみてください。
高知県の沖には「南海トラフ」という深海の溝(みぞ)があるのですが、そこではフィリピン海プレートと呼ばれる大きな岩盤が日本列島の下にもぐり込んでいて、日本列島をぎゅうぎゅうと押しています。
そして、フィリピン海プレートの表面にあった地層が日本列島の端っこに削り取られ、やがて陸地になって行ったのです。
こうして削り取られた地層が、大きく傾いた室戸岬の地形として見られるわけですね。
続いての写真はこちら。
こちらは、山口県萩市の海岸にある「ホルンフェルス」という地層です。
まっすぐな縞模様がきれいですね。
黒白のストライプが「スパッ」と切られたような断崖になっていますが、これは地層の硬さと関係があります。
シマシマの黒が泥岩、白が砂岩なので、普通だとより削られやすい泥岩の部分が凹んで、ノコギリ状の断面になるわけです。
でも、ホルンフェルスはマグマの熱で焼かれて硬く変化しているので、砂岩と泥岩とで、硬さの違いがほぼなくなりました。
その結果、ノコギリ状の断面にならずに、「スパッ」と切られたようなまっすぐな地層になったというわけです。
「マグマの熱で変化した」というのが、この縞模様のポイントなんですね。
『ジオスケープ・ジャパン』は、美しい写真から地球科学の世界へと自然に入っていける、そんな魅力いっぱいの本です。
地形に込められた科学的な意味も、しっかりと、かつわかりやすく説明されているので、ぜひ楽しみながら読んでもらえたらと思います。