長瀞渓谷の秩父赤壁 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)
長瀞渓谷の秩父赤壁 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)©︎Katsuaki Watanabe

埼玉県秩父地方の長瀞渓谷は、荒川上流部に位置する渓谷で、全長は約6km。渓谷の片側(西側の河岸)には層状の大きな一枚岩からなる岩畳(いわだたみ)が広く露出し、その対岸には秩父赤壁(ちちぶせきへき)と呼ばれる絶壁がそそり立っている日本有数の景勝地です。

長瀞渓谷の岩畳 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)
長瀞渓谷の岩畳 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)©︎Katsuaki Watanabe
岩畳のクローズアップ Greenschist, Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)
岩畳のクローズアップ Greenschist, Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)©︎Katsuaki Watanabe

ちなみに岩畳の大きさは、畳に換算すると約2万枚分とのこと。大きすぎて、なかなかピンときませんね。

河川のうちで、流れの緩やかな深い部分を「瀞(とろ)」といいます。長瀞渓谷は、その名の通り穏やかな流れが長く続く渓谷。岩畳をはじめとするこの辺り一帯が、国の名勝天然記念物に指定されています。

岩畳を構成しているのは、「緑色片岩(りょくしょくへんがん)」と呼ばれる種類の層状の岩石です。緑色片岩は変成岩の一種で、玄武岩などの火成岩がプレートの沈み込みによって地下20〜30kmほどの深さに埋没することで、圧力や熱を受けて形成されました。この種の変成岩を「広域変成岩」といい、長瀞渓谷は三波川(さんばがわ)変成帯と呼ばれる日本最大の広域変成帯の一部を成しています。

長瀞渓谷の緑色片岩 Greenschist, Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)
長瀞渓谷の緑色片岩 Greenschist, Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)©︎Katsuaki Watanabe

緑色片岩を構成する鉱物は、緑泥石、緑簾石(りょくれんせき)、アクチノ閃石、パンペリー石、曹長石(そうちょうせき)など。

水平方向の層状の構造は「片理(へんり)」と呼ばれ、片理に沿って、緑色片岩はペラペラと割れやすくなっています。また、このような水平方向の割れ目に加え、緑色片岩には片理と垂直な方向にも割れ目ができています。こちらは地下深くから隆起してくる過程でできた割れ目で、節理と呼ばれるもの。

水平方向の片理と垂直方向の節理があるために、河川の侵食によって、写真のような見事な階段状の地形ができあがりました。

長瀞渓谷の岩畳 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)
長瀞渓谷の岩畳 Nagatoro Valley, Chichibu, Saitama(埼玉県秩父郡長瀞町/2021年撮影)©︎Katsuaki Watanabe

場所の情報