このブログを見てくださっている人は、地学好きの方が多いと思います。

そんな皆さまにぜひご紹介したいこの1冊。

 

西本昌司『東京「街角」地質学』(イースト・プレス,2020)


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街にあふれる数々の美しい石材を、写真付きで解説してくれています。

その解説がまたわかりやすく、決してマニアックな学術本ではありません。

 

かといって、「初心者向けの内容の薄い本」というわけでもないのが、この本のすごいところ。

著者の西本昌司さんは名古屋市科学館の学芸員で、岩石学を専門とするプロの地質学者です。

その深い知識と、街角の石材に対する尽きない興味・好奇心が、この1冊に思う存分注がれています。

 

さて、そんな本書の内容ですが、『東京「街角」地質学』というタイトルの通り、東京の著名な建築物に使われている石材をリサーチした本です。

透明感のある真っ赤な花崗岩、ステンドグラスのように光がこぼれるオニックス、黒い中でカリ長石の結晶が青くきらめく閃長岩(せんちょうがん)など、見ていて本当に飽きません。

 

世界中から集められた高級石材が惜しげもなく使われ、しかも、ピカピカに磨き上げられて輝いているのです。

その美しさは宝石のよう。

 

そして、この本を読めば自分で石材の種類がわかるようになるので、東京在住の人でなくてもかなり楽しめます。

私はこの本のおかげで、近所の石塀に使われている凝灰岩の種類を知ることができました。

その石塀というのは、こちら。

大谷石でできた石塀
大谷石でできた石塀(©︎Katsuaki Watanabe)

 

淡く青みがかった白い岩石ですね。

そして空隙(穴ぼこ)が多い。

 

この石は大谷石(おおやいし)という凝灰岩で、海底に降り積もった火山灰や軽石が固まってできたものです。

写真の中で青く見えている小石が軽石で、白っぽい部分が火山灰。

青い軽石が本当にきれいで、思わず目を引く岩石です。

 

このように、日本中どこに住んでいる人でも、この本に登場する石材のいくつかはきっと目にしたことがあると思います。

そして、東京や都市部に出張することがあれば、もっと多くの石材に出会うことができるでしょう。

国内で世界中の石材が楽しめる1冊、すばらしいですね!

 

なお、著者の西本さんはもう1冊似たような本を出版していて、こちらは東京だけでなく、京都、大阪、名古屋、横浜など幅広くカバーした内容になっています。

タイトルはこちら。

 

西本昌司『街の中で見つかる「すごい石」』(日本実業出版社,2017)


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これらの都市部に住んでいる人は、直接的な解説が見られるので結構おすすめです。

『東京「街角」地質学』と比べると、やや写真が少ないように感じましたので、その点はご注意ください。