Photo: Pixabay

 

ガードレールを見て思うこと

道路脇の白いガードレールを見て、あなたならどんなことを考えますか。

どこの街にでもある、ありふれたもの。

特に何も感じないかもしれませんね。

 

ガードレールは、言うまでもなく鉄のかたまりです。

街の中には、高純度の鉄のかたまりが至る所に立てられ、並べられているわけです。

これって、自然界では考えられないことですよね。

 

山を歩いていたら、高純度の鉄でできている岩があったとか、あるいは、岩の中から銀色に輝く大量の鉄が出てきたとか、あり得ないわけです。

何の変哲もないガードレールひとつとっても、超自然的というか、不自然極まりない存在。

元素という観点から見れば、鉄元素が異常に濃集している場所が、街なかにゴロゴロしているという状況です。

 

もちろん、鉄でできているのはガードレールだけではありません。

車も、橋も、線路も、ビルの骨組みも、道路脇の自動販売機やフェンスも、全て鉄でできています。

 

自然界では決して見られない、身の回りにあふれる高純度の鉄。

このような異常とも言える大量の鉄を、私たち人間は一体どうやって手に入れているのでしょうか。

鉄を生み出すのは岩石

鉄は、岩石から取り出される地下資源の一つです。

よく知られているように、鉄鉱石と呼ばれる鉄を含む岩石から、鉄を取り出すわけですね。

 

さて、ここでちょっとSF的なお話にお付き合いください。

 

遠い将来、いよいよ地球の環境が絶望的になり、あなたは宇宙船に乗って地球を脱出しました。

宇宙を旅する様々な困難の中で、他の船とははぐれ、同乗した人も寿命で死んでしまったりして、結局あなた一人が取り残されることに。

 

何年も宇宙をさまよい、そしてついに、あなたは地球とよく似た惑星に着陸します。

陸地があり、水があり、岩石と土があり、植物が生い茂る惑星。

そこには人間と同じような宇宙人が住んでいましたが、とても原始的な暮らしで、鉄でできたものは何一つありませんでした。

 

宇宙船を不思議そうに見る彼らに、あなたは地球のことを話します。

あなたが旅立ってきた地球では、街の至る所にガードレールや車など、鉄でできたものが溢れていたと。

 

鉄に憧れる彼ら。

あなたは、こう思うでしょう。

「よし、文明人である私が、鉄の作り方を教えてあげよう……。」

 

というわけで、あなたならどうやって鉄を作り出すでしょうか。

鉄鉱石を取ってきて、ガンガン加熱して溶かして、ドロドロの鉄鉱石が固まった時には銀色の鉄ができている、なんてことは、さすがにありません。

 

鉄を作り出すには、まずは鉄鉱石が何者なのかを知らなければならないのです。

鉄鉱石は鉄と酸素のかたまり

©︎CDE Global / flickr

 

鉄鉱石と呼ばれている岩石は、おもに赤鉄鉱、磁鉄鉱、褐鉄鉱といった鉄の酸化物でできています。

酸化物というだけあって、その実態は、酸素と結びついた鉄。

 

日本で使われている鉄鉱石の場合、鉄の含有量は重量比で60パーセント前後で、その次に多く含まれているのが酸素です。

酸素の含有量は、不純物の量にもよりますが30パーセント前後。

その他、りん、硫黄、ケイ素、アルミニウムなどが含まれます。

 

つまり、鉄鉱石は概ね鉄と酸素のかたまりなのです。

この事実を踏まえれば、鉄鉱石から鉄を作り出すには、まず酸素を取り除かなくてはならないことがわかります。

 

そこで、製鉄所では鉄鉱石と一緒にコークスを高炉に入れ、コークスから発生する一酸化炭素や水素などのガス、そしてコークス中の炭素と反応させることによって、鉄鉱石から酸素を除去しています。

コークスというのは、石炭を空気のない状態で焼いたもの。

ゼロから鉄をつくるなら、とりあえず石炭も採ってこなければなりませんね。

 

鉄鉱石から酸素を除去した後、さらに炭素や不純物を取り除く過程を経て、ようやくガードレールの原料になる鋼(はがね)が生まれます。

こんな風にして、岩石から鉄が取り出されているのですね。

アルミも岩石から取り出したもの

©︎butterbeeee / flickr

 

鉄と同じくらい身近な金属に、アルミニウム(アルミ)があります。

ジュースのアルミ缶やアルミホイル、フライパンといった日用品から、飛行機やロケットなどの大型建造物まで、その用途は実に様々。

MacBook(ノートブックPC)の筐体もアルミニウムですね。

 

アルミニウムも鉄と同様、やはり岩石から取り出される地下資源の一つです。

原料となるのは、ボーキサイトと呼ばれる赤褐色のやわらかい岩石。

 

アルミニウムの製造に使われる理想的なボーキサイトには、酸化アルミニウムが重量比で約50パーセント、酸化鉄が約20パーセント含まれています。

残りは石英や長石、粘土鉱物などを構成する成分。

 

ボーキサイトというのは、アルミニウムに富む岩石が熱帯地方の激しい風化作用を受けて、酸化アルミニウムと酸化鉄以外のほとんどの成分を失ってしまったものです。

この鉱石からアルミニウムを取り出すには、まずは酸化鉄やその他の鉱物(不純物)を取り除き、酸化アルミニウムだけにする必要があります。

その後、酸化アルミニウムから酸素を取り除けば、アルミ製品の原料となるアルミニウムの完成。

 

とはいうものの、酸化アルミニウムから酸素を取り除く工程では電気分解が必要で、多くの電力が消費されます。

そのため、アルミニウムの場合は再利用が断然おトク。

アルミ製品の廃品リサイクルによって新たなアルミ製品を作る場合、ボーキサイトからアルミ製品を作る場合に比べて、消費電力が3パーセントほどに抑えられるということです。

 

再利用が容易なアルミニウムは、地球に優しい省エネ金属として、今後ますます活躍の場を広げていくことでしょう。

参考文献

一般社団法人日本鉄鋼連盟『みんなの鉄学 調べて学ぶ 鉄をつくる

一般財団法人金属系材料研究開発センター『平成29年度製造基盤技術実態等調査 低品位鉄鉱石の有効活用の可能性に関する調査報告書

一般社団法人日本アルミニウム協会『アルミの基礎知識

工場タイムズ『アルミ製造に興味あり! アルミニウムのことを詳しく教えて!

コトバンク『ボーキサイト

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版,2022)

書影『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』渡邉克晃(2022年11月18日刊行)
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※この記事の内容を含め、身近な地質学の話題がたくさん紹介されています。

鉄もアルミも、みんな石から取り出したもの(渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』より)