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レールを支えるバラスト道床

鉄道の線路には大量の石が敷いてありますね。

これらは「バラスト」と呼ばれる砕石で、レールを支える重要な役割を果たしています。

 

鉄道の線路は、地面の上に直接レールが敷かれているわけではなく、積み上げた砕石、あるいは塗り固めたコンクリートの上に枕木を並べ、その上にレールが敷かれています。

枕木を介して線路を支えるこのような部分を「道床(どうしょう)」と言い、バラスト(砕石)を積み上げた道床を「バラスト道床」、コンクリート製のものを「コンクリート道床」と呼んでいます。

 

さて、ここではバラスト道床に使われる砕石について見ていきたいと思います。

日本中でよく見かけるバラスト道床ですが、バラストにはどんな石が使われているのでしょうか。

そして、大量の石をどこから持ってきているのでしょうか。

バラストに使われている代表的な石は安山岩

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道床用のバラストには何種類かの石が使われていますが、代表的なものは安山岩です。

安山岩というのは灰色から暗灰色のきめの細かい岩石で、玄武岩(ほぼ黒色)と同じくマグマが地表付近で固まってできたものですが、玄武岩よりも二酸化ケイ素の割合が多いためにやや色が薄いという特徴があります。

 

安山岩がバラストの石としてよく使われる理由は、硬くて割れにくいという基本的な性質に加え、日本中で広く産出される石だからです。

つまり、安く大量に手に入る石、というわけですね。

逆に言うと、安く大量に手に入る石なら何でも良くて、安山岩以外にも、玄武岩、砂岩、花崗岩などがバラストの石として利用されています。

 

そして、採石場の方でもバラスト用の石を特別に切り出しているわけではなく、岩石を適当に破砕してふるいにかけ、様々な用途の砕石をまとめて作っています。

サイズごとに分けられた砕石は、住居のエクステリア用、駐車場の敷石用、コンクリートに混ぜる骨材用などとして出荷されますが、そのうちの2cm〜6cmくらいのサイズのものが鉄道のバラスト用として、鉄道事業者に引き渡されるというわけです。

 

こういうわけですから、バラストの石は「どこどこの石」と決まっているわけではなく、線路の設置場所にできるだけ近い場所から調達するのが基本。

言わば「現地調達」ですね。

岩石の種類や産地にこだわる性質のものではなく、輸送費を考慮して、近場から持ってくることの方が優先度が高いのです。

これが、「大量の石をどこから持ってきているのか」に対する答えになります。

バラストに適さない石

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バラストに使われる石は、硬くて割れにくく、安く大量に手に入る石なら何でもいいわけですが、「硬くて割れにくい」という性質がやはり重要になってきます。

レールの下に敷いた時に列車の重みで潰れたり割れたりしてしまう石は、当然ながらバラストとして使えません。

 

例えば、日本には火山灰が固まった「凝灰岩(ぎょうかいがん)」という白っぽい石が多く産出しますが、この石は加工しやすい建材として知られ、安山岩などに比べるとずっと壊れやすい石です。

それから、砂岩や泥岩の中にはしっかりと固まっていないものもあり、そういう石もバラストには不向き。

風化の進んだ花崗岩なども、脆くて壊れやすいですね。

あと、富士山などの火山地帯に見られる噴石も、空隙(穴ぼこ)が多くて重みや衝撃に耐えられません。

 

このように見てくると、「何でもいい」と言いつつも本当に何でもいいわけではなく、意外と石の候補は限られてきます。

安山岩のバラストが多いのには、ちゃんと理由があるのですね。

 

また、バラストに使われる砕石は、石の種類だけでなく「形」も重要です。

適度に厚みがあって、角が尖っていなければなりません。

平たいもの、細長いもの、角の丸いものは不向き。

 

平たい石や細長い石が不向きなのは、割れやすいからですね。

では、角の丸い石はなぜダメなのでしょうか。

 

それは、積み上げたバラスト同士が深く噛み合わず、列車が通過した時の重さや衝撃でずれやすくなるからです。

バラスト道床の役割は、まず第一に、枕木をしっかりと固定してレールがずれないようにすること。

ですから、角が尖っていて互いに噛み合う石でないと、固定の役割が十分に果たせなくなるのです。

枕木はバラストに埋もれるような形で設置され、下からだけでなく前後左右からも支えられているので、なかなかずれることがありません。

枕木の固定だけではないバラストの役割

なお、バラストの役割は枕木の固定以外にもいくつかあります。

 

一つは、地面にかかる力を分散させる役割。

バラストが列車の重さを分散して地面に伝えるため、バラストを敷けば、列車の重さで地面が沈んでしまうことがありません。

もし枕木を地面に直接設置したら、枕木の下の地面だけに列車の重さが集中してかかりますので、地面が沈んでレールがずれてしまいます。

 

それから、振動と音を吸収する役割も重要です。

積み上げたバラストがレールと地面との間の緩衝材(クッション)となり、列車の乗り心地が良くなるほか、周囲に振動が伝わりにくくなります。

列車が走行するときの騒音についても、バラストの内部で音が吸収されることで、車内や周辺地域への騒音がかなり軽減されます。

 

また、水はけの良さと雑草が生えるのを防いでくれる点も、バラストの大切な役割です。

水はけが悪いと地面がぬかるんでしまいますし、雑草が生えたら駆除するのに手間がかかりますね。

 

線路に敷き詰められたバラストは、レールの安定性、快適な列車の運行、そして日常のメンテナンスにおいて、とても重要な役割を果たしているのです。

参考文献

コトバンク『バラスト軌道

川辺謙一『線路に「砂利」が敷き詰められているのはなぜ?』マネープラス(2019年9月2日)

杉山淳一『線路のバラストはどうやって作られる? 鉄道用に適さない石もある』マイナビニュース(2017年8月5日)

枝久保達也『鉄道の線路、砂利あり・なしで何が違う? 地下鉄にも「砂利あり」区間があるワケ』乗りものニュース(2019年6月11日)