写真が美しい、地学好きのためのおすすめビジュアル本8冊をご紹介します。どの本も写真が本当にきれいで、思わずため息が出るほど。自然が生み出した造形美や幻想的な風景に、たっぷりと癒されてください。
地球全史:写真が語る46億年の奇跡(白尾元理・清川昌一,2012年)
私の知る限り地質写真家の元祖と言えば、本書の著者、白尾元理(もとまろ)氏です。長らくこの分野の第一人者として写真を通じた「科学コミュニケーション」を牽引し、地質学の普及に多大な貢献をされてきました。本書は私自身が地質・鉱物写真家を目指すきっかけともなった一冊。
白尾氏の写真は、超広角レンズを駆使し、地質構造と周囲の風景を一枚の写真に見事に収めているのが特徴です。対象となる「地質」がどんな環境の中に存在しているのか、そこがわかる写真というのは本当に貴重。教科書的ないわゆる標本写真でもなく、風景写真でもなく、地質と風景を融合させた極めて優れた地質写真のお手本です。
本書は岩波書店のバックアップのもと、世界中を取材して撮影した超大作。大型本なので値段はやや高めですが、撮影の労力を考えるとこれでもむしろ安いのではと思ってしまいます。また、本書の解説文は九州大学の清川昌一先生が監修をされているので、学術的にも確かな内容です。
ジオスケープ・ジャパン(竹下光士,2020年)
日本の地形の美しさを改めて感じさせてくれる一冊。スローシャッター(長時間露光)を駆使した星空・風景写真で有名なプロの写真家が、ライフワークとして始めた地形写真の集大成です。高度な撮影技術とアート性を兼ね備えた写真は見応えたっぷりで、丁寧な解説によって学術的な価値もしっかりとフォローされています。
小学館の図鑑NEO 岩石・鉱物・化石 [新版・DVDつき](萩谷ほか,2022年)
小学館の図鑑はどれもクオリティが高く、昔から圧倒的支持を集める定番シリーズ。文章は子供向けに平易な言葉で書かれているものの、内容は非常に充実していて、大人の知的好奇心も大満足の一冊です。標本写真の美しさも際立っていますし、この価格でこれほどの内容が読めるのは本当に貴重。子供が読みやすいように全文ルビつきなのですが、科学用語は大人でもわからないものが多いので、ルビが大変役立ちます。
地球とは思えない世界の絶景(世界の絶景調査委員会,2015年)
解説はほとんどなく、ひたすら美しい写真のオンパレード。誌面全体に配置された写真は迫力満点で、しかも一枚一枚が非現実的な表情の選りすぐりの地質風景ばかり。「世界の絶景」と銘打っている本には、森林、海、建築、遺跡など多彩な題材を取り扱っている場合が多いのですが、本書は全部「地質」の風景です。
いちばん美しい世界の絶景遺産(ナショナルジオグラフィック,2020年)
さすがはナショジオ、やはりクオリティの高い写真が揃っています。劇的な瞬間を捉えた写真、美しい構図の写真を眺めていると、何度もその場所に通ってようやく撮影できた一枚なんだろうな、と思えてきます。世界中のカメラマンの作品から選りすぐって編集できるのがナショジオの強み。
世界自然遺産でたどる 美しい地球(高木秀雄,2018年)
サブタイトルが「地形・地質・地層で読み解くビジュアル地球史」とあるように、美しい写真だけでなく、地質学的な解説も充実した一冊。補助的なイラストを多用して、わかりやすく丁寧に解説されているところが本書の魅力です。監修は早稲田大学の構造地質学者、高木秀雄先生。
日本の美しい幻想風景(日本風景写真家協会,2019年)
この本には正直なところ、地質の写真はそれほど多く出てきません。でも写真が本当に美しく、今回の図書リストで取り上げました。どれも日本で撮影されたもので、思わずため息が出るほど美しく幻想的な風景。Amazon のリンクから中身が少し見られますので、ぜひぜひ体験してみてください。
いまいちばん美しい日本の絶景(MdN編集部,2018年)
こちらも地質の写真に特化した本ではありませんが、いわゆる景勝地になっている「日本の絶景」には地質に由来するものが多く、結果的に地学好きには嬉しい構成になっています。そして、景勝地のパンフレットに出てくるものとは段違いに美しい写真で、日本の絶景の新たな一面を発見できること間違いなしです。