花崗岩でできた大阪城の石垣
花崗岩でできた大阪城の石垣(©︎663highland / Wikipedia, CC 表示 2.5

 

人気は安山岩と花崗岩

お城の石垣にはどんな種類の石が使われているのか、ちょっと気になりますね。

石垣に使われる石は、地域によっても時代によっても異なりますし、同じ石垣に何種類もの石が使われていることもありますので、一概には言えません。

そこで、代表的なお城について、いくつか具体的に見ていきたいと思います。

 

まずは東京都にある江戸城(皇居)から。

江戸城の石垣は、おもに安山岩と花崗岩でできています。

 

安山岩はマグマ由来の細かい粒子からなる灰色の石で、伊豆半島などの有名な産地から江戸まで運ばれてきました。

花崗岩も同じくマグマ由来の石ですが、全体に白っぽくて黒い点々があり、粗い粒子からなるのが特徴です。

こちらは瀬戸内海沿岸から運ばれてきました。

 

伊豆半島にしろ瀬戸内海沿岸にしろ、わざわざ遠くから石を運んできたのは、「江戸幕府の権力と財力にものを言わせて良質の石材を取り寄せた」という背景もありますが、そのほかに地質学的な事情も関係しています。

実は、東京周辺の岩盤はあまり硬くない堆積岩の地層(砂や小石が集まったもの)でできていて、硬くて大きな石が採れません。

そこで、石垣を作るには、硬い石材を別の場所から運んで来るしかなかったのです。

 

安山岩も花崗岩も、堅牢でありながら比較的加工しやすく、見た目も美しいという特徴があります。

現在でも建築材料や墓石として広く利用されている主要な石材です。

 

続いて、大阪府にある大阪城。

大阪城の石垣は、おもに花崗岩です。

 

江戸城の花崗岩と同じく瀬戸内海沿岸から運ばれてきたもののほか、兵庫県の六甲山で採れる花崗岩も使用されています。

大阪城は石垣に面して広い水堀を巡らす造りになっているため、水がしみ込みにくい花崗岩が特に適していたということです。

 

このほかに、安山岩や花崗岩が石垣に使われているお城としては、石川県の金沢城、富山県の富山城などがあります。

 

金沢城の石垣はおもに安山岩でできていますが、一般的な灰色の安山岩ではなく、赤色と青緑色の2種類の安山岩が使用されています。

どちらも石材名は「戸室石(とむろいし)」と言い、赤色のものを「赤戸室」、青緑色のものを「青戸室」と呼んでいます。

戸室石のゆえに、金沢城の石垣は色彩の美しさが特に印象的です。

 

富山城の石垣には、おもに花崗岩、安山岩、砂岩が使われています。

近場で採れる石を使った石垣

流紋岩でできた彦根城の石垣
流紋岩でできた彦根城の石垣(©︎663highland / Wikipedia, CC 表示 2.5

 

安山岩と花崗岩以外で石垣によく使われている石は、流紋岩、凝灰岩、チャートです。

こちらについても、代表的なお城を見ていきましょう。

 

滋賀県近江八幡市にある安土城の石垣には、流紋岩が使われています。

流紋岩は、安山岩に似た粒子の細かいマグマ由来の岩石で、安山岩よりも白っぽい色をしているのが特徴です。

 

滋賀県といえば琵琶湖ですが、琵琶湖の南東側の地域に流紋岩でできた岩盤が広がっていて、その石を使って安土城の石垣が造られたというわけです。

つまり、安土城の石垣には、近場で採れる石が使われているのですね。

遠くから石材を取り寄せて造った江戸城や大阪城の石垣とは、その点が大きく異なります。

 

また、安土城の石垣は、自然のままの石を加工せずに積み上げたものですが、江戸城や大阪城の石垣は、加工された石で造られています。

隙間なくピッタリと積み重ねられ、優美な曲線を描く石垣は後者の方です。

 

さて、話を流紋岩に戻しましょう。

安土城のお隣、滋賀県彦根市にある彦根城の石垣も、同じく琵琶湖の南東側に分布する流紋岩で造られています。

 

安土城よりは後の時代(江戸幕府が始まって以降)に造られたお城ですが、やはり近場の石が使われています。

安土城との違いは、加工していない自然のままの石で造った石垣と、加工した石で造った石垣の両方が見られることです。

 

次に、凝灰岩でできた石垣を持つ代表的なお城としては、福井県にある福井城が挙げられます。

凝灰岩は火山灰や細かい噴石などが固まってできた岩石で、安山岩や花崗岩、流紋岩に比べるとかなり加工しやすいという特徴があります。

言い換えれば、堅牢さや緻密さの点では劣るということですが、現在でも石塀などの建築材料としてよく使われている石材です。

 

福井城の石垣も、近場で採れる石で造られているという点で、先程の安土城や彦根城と共通しています。

凝灰岩が採れる山(足羽山(あすわやま))は福井城から南東3kmほどの距離にありますが、川を伝って簡単に運ぶことができたそうです。

 

そのほか、世界遺産に登録されている兵庫県の姫路城でも、石垣の多くに近場で採れる凝灰岩が使われています。

硬くて加工しにくいチャートでできた石垣

チャートでできた犬山城の石垣
チャートでできた犬山城の石垣(©︎村国左近 / Wikipedia, CC 表示-継承 4.0

 

近場で採れる石で造った石垣の最後は、チャート。

チャートとは、水晶と同じ成分である二酸化ケイ素でできた岩石で、非常に硬いのが特徴です。

色はさまざまで、赤色、褐色、茶色、黄土色、緑色、灰色、黒色などがありますが、磨かれたような艶のある表面の質感と、ものによってはほんの少し透明感があるところなどが、見分けるポイントになります。

 

チャートでできた石垣が見られる代表的なお城は、愛知県の犬山城。

犬山城の周辺にはチャートの岩盤が分布しており、やはり近場の石をほとんど加工せずに使って石垣が造られています。

 

硬いチャートを加工するのは大変なので、いかに堅牢性に優れていようとも、加工した石を積み上げるタイプの石垣には不向きです。

そのため、江戸城や大阪城に見られる優美な曲線の石垣には、堅牢かつ加工しやすい安山岩や花崗岩が選ばれましたが、犬山城のように自然のままの石を積み上げる方法ならば、チャートを使っても特に問題はありません。

 

このように、お城の石垣に使われる石の種類は意外と多岐に渡ります。

その理由は、基本的に石垣は、近場で採れる石を使って造るものだから。

重機やトラックがなかった時代、大量の石材を遠くから運ぶには多大な労力がかかりますので、当然そうなりますね。

 

安山岩、花崗岩、流紋岩、凝灰岩、チャートといった岩石が石垣によく使われているのは、堅牢性、加工のしさすさ、見た目の美しさなどで優れていたということもありますが、それ以上に、これらの石が日本各地でよく採れたから、という理由によります。

割れやすく脆い岩石でなければ石垣の石として使用することが可能ですので、地域の地質に合わせて、多く産出する石が選択されたことでしょう。

 

一方、石垣を造る際に困るのは、東京のように近くに硬い岩石が分布していない場合です。

石が採れないのですから、こういう場合は仕方なく、遠くから石を運んでくることになりますね。

参考文献

城びと『江戸城の石垣(1)石材の産地と高度な加工の技術』(2020年2月6日)

城びと『【続日本100名城・福井城(福井県)】日本遺産の越前・笏谷石文化が生み出した巨大城郭』(2020年10月8日)

犬山城を楽しむためのウェブサイト『【お城の基礎知識】お城の石垣に使われる石の種類【花崗岩、安山岩、流紋岩、チャートなど】』(2020年5月31日)

お城カタリスト『石垣の石はどんな石? どこから運んで来たの?』(2020年8月21日)

西本昌司『名古屋城石垣に使われている石材の岩石種』地質学雑誌126,343-353(2020).

らいくりーず『【姫路城・石垣の魅力】種類・特徴・時代による変化・秘密を大公開!!』(2018年8月6日)

ブナの中庭で『金沢城の石垣』(2013年11月18日)