Photo: Pixabay

地球の中心付近の温度は、さまざまな観測結果から5000℃〜6000℃もの超高温に達すると見積もられています。太陽の表面温度が約6000℃であることを考えると、地球の中心はとんでもなく熱い世界ですね。約46億年前というはるか昔に誕生した地球なのに、いまだにこれほどの高温を保っているというのは不思議なことです。地球は冷えてしまわないのでしょうか。

実際のところ地球は少しずつ冷えているのですが、地球が非常に大きいためにゆっくりとしか温度が下がらず、今も十分に高い温度を保っているという状況です。

できたばかりの頃の地球はドロドロに溶けたマグマの塊で、表面の温度は少なくとも1000℃以上。でも、現在の地球の表面はそんな灼熱地獄ではなく、生命が生きられる温度の海や大地が広がっていますね。ゆっくりとではありますが、確かに冷えてはいるのです。

そもそも、どうしてできたばかりの頃の地球がドロドロのマグマだったかと言いますと、小さな天体が衝突・合体しながら地球が徐々に作られていく中で、激しい衝突のエネルギーによって膨大な熱が発生したからです。言い換えれば、現在の地球が持っている熱は、地球誕生時に蓄えられたものだということができます。

しかしながら、現在の地球内部を高温に保っている熱源は、それだけではありません。地球誕生時に蓄積された熱が徐々に失われていく中で、地球内部で新たに発生している熱もあるのです。それは、ウラン、トリウムなどの放射性物質が生み出す熱です。

地球内部の岩盤中には、岩石の成分としてウランなどの放射性物質がわずかながら含まれています。放射性物質とは、放射線を出すことで別の元素に変化(壊変)する元素のこと。

放射性物質の壊変の例(ウラン238のアルファ壊変)。「壊変」は「崩壊(放射性崩壊)」とも。図はイメージであり、ウランおよびトリウムの陽子と中性子の数は実際にはもっと多い。出典:渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』ベレ出版

 

放射性物質が壊変するときに熱が発生するのですが、地球全体で見るとその熱が膨大な量になるのです。どれくらいかと言いますと、地球が徐々に冷えていくときに放出される熱の、なんと約半分。放射性物質の貢献度は非常に大きいと言えますね。

なお、ウランやトリウムのほとんどは地殻とマントル(岩盤中)に含まれていて、最も中心にあるコア(鉄とニッケルでできた合金)にはほとんど含まれていないと考えられています。つまり、放射性物質はコアの熱源にはなっていないということ。

ですので、冒頭で出てきた地球の中心付近の高温に関して言えば、地球誕生時に蓄えられた熱だけが熱源になります。とは言え、放射性物質から発生する熱によってコアの周囲の岩盤が加熱されれば、その分コアも冷えにくくなりますので、間接的には貢献しています。

参考文献

JAMSTEC『海と地球を学んじゃうコラム 地球46億年の歴史と生命進化のストーリー

高エネルギー加速器研究機構KEK『地球の熱はどこからくるの? ~ 反ニュートリノ星・地球 ~』(2005年9月22日)

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版,2022)

書影『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』渡邉克晃(2022年11月18日刊行)
Amazon | 楽天ブックス

※この記事の内容を含め、身近な地質学の話題がたくさん紹介されています。

地球の内部がなかなか冷えない理由は、岩盤中の放射性物質にあり(渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』より)