アイスランド中央高地の大渓谷(©︎Joxean Koret / flickr

 

氷河川が見事な大渓谷を作り出した

米国アリゾナ州のグランドキャニオンを連想させるほどのこの大渓谷は、アイスランドの中央高地を流れるフォスアゥ川(アイスランド語:Fossá)です。

標高500メートルほどの中央高地を氷河川が侵食し、このような勇壮な地形が生まれました。

 

フォスアゥ川はアイスランド最長の河川であるショウルス河(長さ約230キロメートル)の支流で、写真の大渓谷はアイスランド島の南西部に位置しています(地図中の「Haifoss」の辺り)。

フォスアゥ川とハゥイフォス滝の場所(Googleマップ)

 

本流のショウルス河が比較的平坦な場所を流れているのに対し、フォスアゥ川の渓谷は深く、多くの滝が見られるのが特徴です。

 

ところで、アイスランドの河川には大きく2つのタイプがあります。

氷河から溶け出した水が流れる「氷河川」と、岩盤から湧き出た清水が流れる一般的な川です。

実はアイスランドの多くの川が氷河川で、ショウルス河もその支流のフォスアゥ川も氷河川なのです。

 

島のおよそ11%を占めると言われるアイスランドの氷河。

アイスランドの氷河は、山腹の谷間を覆う程度のスケールではありません。

内陸部の高地を覆う広大かつ分厚い氷冠で、アイスランド最大の氷河であるヴァトナヨークトル氷河は、東西約120キロメートル、南北約90キロメートルにも及び、最大厚さは1000メートルに達します。

 

こういうわけですから、アイスランドに氷河川が多いのもうなずけますね。

フォスアゥ川の見事な大渓谷は、氷河が作り出した地形でもあるわけです。

 

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中央高地から低地へと流れ下るフォスアゥ川

アイスランド島の内陸部に広がる標高500メートル以上の高地(図中の茶色)を、アイスランド中央高地と呼んでいます。

茶色の部分がアイスランド中央高地(©︎Pethrus / ウィキペディア

 

中央高地のほとんどは溶岩と火山灰からなる岩石砂漠で、標高の高い場所はヴァトナヨークトル氷河などの広大な氷河で覆われています(図中の白色)。

 

ここを流れている氷河川の一つがフォスアゥ川ですが、特に深い渓谷が見られるのは、フォスアゥ川が中央高地から低地へと流れ下る辺り。

垂直に切り立った高さ100メートルを超える大渓谷の先に、なだらかな低地が広がります。

なんとも美しい地形ですね。

ハゥイフォス(Háifoss)滝と低地へ流れ下るフォスァウ川(©︎Vadim Istratov / flickr

 

中央高地から低地へと流れ出るこの辺りに、アイスランドで3番目に高い(=落差が大きい)滝があります。

それが写真右手のハゥイフォス滝(Háifoss)。

落差は122メートルです。

 

ちなみに、「フォス(foss)」というのはアイスランド語で滝のこと。

「ハゥイフォス(Háifoss)」とは「高い滝」という意味だそうです。

ハゥイフォス滝のとなりにはグランニ滝というもう一つの大きな滝もあり、この辺りは特に景観が美しい場所です。

 

中央高地の端にできたこれらの滝の落差は、中央高地と低地との段差でもあります。

高地と低地が明瞭に分かれるアイスランド内陸部の地形を、これらの滝が如実に表していると言えますね。

溶岩と火山砕屑物でできたアイスランドの大地

フォスアゥ川が侵食するアイスランド中央高地は、玄武岩質の溶岩と火山砕屑物(さいせつぶつ)が積み重なってできた土地です。

火山砕屑物というのは、火山灰やもう少し粒子の粗い火山礫(れき)、それから軽石などのこと。

これらが集積した地層というのは、非常に隙間が多く水はけの良い土地になります。

 

そして溶岩でできた岩盤もまた、とても良く水を通します。

溶岩が水を通しやすいのは、隙間が多いからというのが理由ではありません。

確かに花崗岩などの緻密な岩石に比べれば穴ぼこが多く、隙間だらけに見えますが、そうは言っても穴ぼこどうしは連結しておらず、そのままでは大して水を通さないのです。

 

ではどうして溶岩が一般に水を通しやすいかというと、それはたくさんの割れ目があるから。

 

溶岩というのは地下のマグマが地表に噴出して固まったものですが、冷えて固まる時に縮んで、少し体積が小さくなるのです。

その結果、たくさんの割れ目ができる。

この割れ目のために、溶岩でできた地層も水を通しやすいわけですね。

 

こうした理由で、溶岩と火山砕屑物からなるアイスランド中央高地は、とても水はけがいい。

日本のように風化が進んだ火山灰土壌であれば、水はけの良さと適度な保水力があって作物が良く育つのですが、アイスランドの場合は溶岩が新しく、土壌がほとんど発達していません。

ですから、保水力は低く、作物が育ちにくいのです。

 

生えている植物と言えば、丈の低い草やコケ程度。

乏しい植生と寒さのため人の居住には適していません。

 

北大西洋海流の影響を受けるアイスランドの気候は、年間を通じて安定した降水量があり、氷河から流れ出る水も豊富にあります。

それなのに、中央高地が作物の育たない岩石砂漠になってしまうのは、溶岩や火山砕屑物が新しくて、水はけが良すぎるせいなのです。

これも火山島であるアイスランドならではの特徴ですね。

参考文献

場所の情報

もっと知りたい人のためのオススメ本

『アイスランド 絶景と幸福の国へ』椎名誠(2015,日経ナショナルジオグラフィック社)


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