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ヒマラヤ一帯には7000メートル級の山が100か所以上
雲から顔を出すヒマラヤ山脈。
ご存知の通り、「世界の屋根」と言われるヒマラヤ山脈には世界最高峰のエベレストがありますよね。
標高は8848メートルです。
では、世界で2番目に高い山はどこか知っていますか。
うーん、知らない。
答えは、カラコルム山脈の「K2」という山。
標高は8611メートルです。
実はこのカラコルム山脈も、広い意味ではヒマラヤ山脈の一部なのです。
2つの山脈の位置関係をこちらの航空写真に示しました。
世界には8000メートルを超える山が14か所もあるのですが、そのうちの10か所がヒマラヤ山脈に、残りの4か所がカラコルム山脈にあります。
さらに7000メートル級の山々を見ても、そのほとんどがこの2つの山脈に位置しているのです。
その数なんと100か所以上。
ヒマラヤ山脈一帯が、地球の中でも特別に標高の高い場所であるということがよく分かると思います。
ちなみに標高7000メートルを超える山は、ユーラシア大陸のヒマラヤ山脈とその周辺にしかなくて、それ以外で最も高い山は南米にあるアンデス山脈のアコンカグア(6959メートル)になります。
大きな移動速度で大陸どうしがぶつかった場所
ふーん。
エベレストは知ってたけど、他にもたくさんの高い山がヒマラヤに集中してるとは知らなかった。
何か特別なことでもあるのかな。
そうそう。
ヒマラヤ一帯にこれだけ高い山が集中しているのには、特別な理由があるのです。
その理由は、ここが「大陸の上に大陸が乗り上がっている場所」だから。
実は世界中の大陸は少しずつ動いていて、ものすごく長い時間で見ると、くっついたり離れたりを繰り返しています。
この現象を説明したのがプレートテクトニクスと呼ばれる理論ですね。
プレートの動きは一年でおおよそ10センチメートル以下という非常にゆっくりとした速度なので、私たちに実感はありませんが。
さて、ずっとずっと大昔、今から5000万年以上前には、ヒマラヤ山脈の辺りで北側のユーラシア大陸と南側のインドは分かれていたのです。
別々の大陸、というか陸地でした。
ちなみにインドは大陸と言うにはちょっと小さいので、「インド亜大陸」という呼び方が使われます。
それでですね。
インド亜大陸が南の方からだんだんと近づいて来て、ユーラシア大陸にぶつかったのです。
その結果、布にシワができるようにこの辺り一帯が盛り上がってしまいました。
もう少し正確に言うと、インド亜大陸の衝突によって、ユーラシア大陸の南側の部分がめくれ上がるような形でシワができたのです。
しかも、その時のインド亜大陸の移動速度がけっこう大きかった。
一年で10〜15センチメートルほどの速さでしたから、他の大陸と比べても特別に移動速度が大きかったのです。
それで世界で最も高い山々ができたと言うわけです。
ヒマラヤ山脈は今でも高くなっている
そっかー。
ぶつかった後はどうなったの?
止まって、それで終わり?
いいえ。
移動速度こそ小さくなったものの、実は今でもインド亜大陸は少しずつ北側に向かって移動していて、そのせいでヒマラヤ山脈はちょっとずつ高くなっていると言われています。
これまた微妙な変化なので、観測するのが難しいのですが。
エベレストの標高で言えば、現在の公式の標高8848メートルはインド測量局が1955年に測量した値です。
その後、1999年には米国の測量チームがGPS(全地球測位システム)を使って8850メートルという推定値を出しました。
この値だけ見ると、44年で2メートルも高くなっていますね。
ただ、1955年時点の測量精度がどの程度かわかりませんので、そう単純には行きません。
また、2005年には中国の測量チームが8844メートルという値を発表していますが、こちらだと少し低くなっています。
エベレストが今も高くなっているかどうかは、今後の測量によって明らかになってくるでしょう。
ヒマラヤは飛行機と同じ高さまで登れる天への階段
ところで、旅客機の飛行高度がどれくらいかご存知でしょうか。
どの旅客機も10000メートル前後、だいたい7500メートルから11000メートルの間を維持して飛ぶそうです。
そして、先ほどまで話題に出ていたヒマラヤ山脈の山々が、標高8000メートルを超えているわけです。
ん?……え!?
そう。
飛行機のことを考えると、ヒマラヤ山脈の高さがあり得ないくらいに高いことが実感できますね。
旅客機が飛んでいる高さまで、歩いて登れてしまうのですから。
冒頭の写真、もう一度見てみてください。
雲から顔を出すヒマラヤ山脈の写真が、そのことをよく物語っています。
ヒマラヤ山脈は、飛行機と同じ高さまで歩いて登れる場所。
まさに「天まで続く階段」なのです。
参考文献
- 世界の地質 | 大陸の衝突-ヒマラヤ山脈
- 日経ライフコラム | ヒマラヤ山脈の成り立ち 大陸の衝突によって誕生(2015年7月)
場所の情報
もっと知りたい人のためのオススメ本
渡邉克晃『美しすぎる地学事典』(秀和システム,2020)