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紫外線から私たちを守ってくれるオゾン層。

フロンガスの放出などによって、一時は穴が開いてしまうかもしれないと言われたオゾン層ですが、世界各国の切実な努力により近年では徐々に回復傾向にあることが示されています。

 

人類はオゾン層消失の危機をなんとか脱したわけですね。

しかし、もしもオゾン層が本当になくなってしまったら、一体どうなってしまうのでしょう。

今回は7つの項目について考えてみたいと思います。

 

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① 水素自動車が普及して、クリーンな環境に

Mazda RX8 hydrogen rotary car 1.jpg from Wikipedia by Taisyo. CC BY-SA 3.0

 

もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

まずはポジティブな側面として、「水素自動車が普及して、クリーンな環境になる」。

 

水素自動車とは、水素を燃料にして走る自動車のことです。

二酸化炭素を出さないため、次世代のクリーンな自動車として注目されていますね。

しかも、燃料となる水素は水の電気分解で生成できるので、石油のように資源の枯渇を心配する必要がありません。

 

さて、水の電気分解と同じ反応が、酸化チタンという物質に紫外線(太陽光)を当てることでも起こることが、実は昔からよく知られていました。

光触媒反応(ひかりしょくばいはんのう)と言います。

この反応を利用すれば、太陽の紫外線を当てるだけで、水から水素が生産できるわけです。

電気分解のように、特別な電力は要りません。

 

しかし、残念ながら酸化チタンによる光触媒反応は効率が悪く、現在のところ水素の生成方法として実用化には至っていないのが実情です。

 

もしオゾン層がなくなって、紫外線が今よりずっと強くなったら。

そうしたら、光触媒反応を利用する方法で、もっと大量に水素を生産できるようになります。

しかも太陽光はタダ。

 

安価に、そして大量に水素が生産されることで、燃料としての水素の価値は非常に高くなり、水素自動車がもっと普及することになるでしょう。

② 強烈な紫外線が降り注いで、外で遊べなくなる

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もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

2番目は、「強烈な紫外線が降り注いで、外で遊べなくなる」です。

 

当然ながら、オゾン層がなくなれば強烈な紫外線が地上に降り注ぎますので、ひどい日焼けに悩まされることになります。

とても外で遊べる状況ではありません。

学校の体育は体育館で、水泳は屋内プールだけでやることになるでしょう。

 

また、強烈な紫外線は白内障という目の病気も引き起こします。

外出の際には大人も子供もサングラスが必須。

マスクみたいに、みんながサングラスを持ち歩くようになるでしょう。

 

紫外線というのは電磁波の一種ですが、人体への影響の違いによって強・中・弱の3つに区分されています。

そして、オゾン層を通過してくる割合も、3種類それぞれで異なります。

 

まず破壊的な威力の「強」は、オゾン層によって完全にシャットアウト。

地上には全く届いていません。

 

次に、皮膚が赤くなるタイプの日焼けを起こす「中」は、オゾン層によって99.5%がカットされています。

地上に降り注いでいるのは、わずか0.5%ほど。

ちなみにこの種類の紫外線は、ビタミンDを生成してくれることで人体の役にも立っています。

 

最後に、皮膚が黒くなるタイプの日焼けを起こす「弱」は、オゾン層によって94.4%がカットされています。

地上に降り注いでいるのは、全体の5.6%ほど。

この種類の紫外線は、皮膚の老化を引き起こします。

 

つまり、オゾン層がある今でも紫外線は降り注いでいますが、今の紫外線というのは、紫外線全体から見ればほんの一部に過ぎないのです。

比較的弱いタイプの紫外線が、わずかに降り注いでいるだけ。

 

もしオゾン層がなくなったら、今の紫外線とは比べ物にならないほどの威力で人体は被害を受けてしまうでしょう。

だから、無防備のままでは絶対に外に出られなくなるのです。

③ 皮膚がんによる死亡者が世界的に増える

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もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

3番目は、「皮膚がんによる死亡者が世界的に増える」です。

 

強烈な紫外線が引き起こすのは、日焼けや目の病気だけではありません。

さらには皮膚がんの原因ともなるのです。

 

日焼けによって皮膚の細胞が傷つくと、徐々に皮膚のハリがなくなり、シミやシワやイボが増えていきます。

こうして皮膚の「老化」が進んでいくわけですが、これが実は、皮膚がんを作る原因になっています。

 

しかも、紫外線でひどく傷ついた皮膚は免疫力が低下し、できてしまったがん細胞を抑え込むことができません。

がん細胞というのは健常な人の体にもあって、頻繁に「生まれては消え」を繰り返しているものなのです。

この「生まれては消え」のバランスが保たれているうちは問題にならない。

 

しかし、バランスが崩れてがん細胞が増え過ぎると、大きな病気となって症状が現れるのです。

つまり、皮膚の免疫力が低下することでがん細胞の増加が起こりやすくなるわけですね。

 

特に屋外で生活することが多い職種の人は注意が必要。

農家、漁師さん、スポーツ選手、建設作業員の方たちです。

あるいは、別の国の話になりますが、遊牧民や木々がまばらな地方の人々も皮膚がんになる危険が大きいと言えます。

④ 動植物が死に絶えて、砂漠が広がる

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もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

4番目は、「動植物が死に絶えて、砂漠が広がる」です。

 

強烈な紫外線の下では、動物も植物も生きていくことができません。

生物の遺伝子であるDNAが破壊されてしまうからです。

 

約35億年前に地球に誕生した初期の生命は、海の中に住んでいました。

そして生命が陸上に進出したのは、生命誕生から30億年以上経った約4億年前。

 

生命誕生から陸上進出まで膨大な時間がかかっていますが、長らく陸に進出できなかったのは、陸上に強力な紫外線が降り注いでいたからです。

海の中というのは、水深10メートル以上には紫外線が届かないので、生命にとってとても安全な場所でした。

 

その後、シアノバクテリアという光合成細菌によって酸素が作られ始め、酸素からオゾンが作られて、やがてオゾン層ができました。

こうしてようやく生命は陸上進出を果たすことができたのです。

 

このような地球の歴史を考えると、オゾン層がなくなれば地上の生物は生きていけないことがわかります。

動物だけでなく植物もほとんど全滅。

だから砂漠が広がるわけですね。

 

生物が生き残れるのは、岩陰や洞窟の中など、強い紫外線の届かない場所に限られるでしょう。

⑤ 温室効果が減って地球が冷え、気温が下がる

Photo: Pixabay

 

もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

5番目は、「温室効果が減って地球が冷え、気温が下がる」です。

 

「温室効果」というのは、大気中の水蒸気や二酸化炭素などが地球表面からの赤外線を吸収し、吸収した赤外線を再び地上に向かって放出することで地球表面を温めてしまうことを言います。

温室効果ガスが地球温暖化の原因だと言われるのは、このような働きをしているからですね。

 

実はオゾンにも温室効果があり、オゾン層は地上に向かって赤外線を放出しているのです。

ですから、もしオゾン層がなくなれば、オゾンによる温室効果もなくなり、その分だけ地球は冷えて平均気温も下がる。

 

また、オゾン層は成層圏(上空10〜50km辺り)の温度を上げる働きもしているため、オゾン層がなくなれば成層圏の温度も下がります。

電磁波の一種である赤外線は温度が高いほど強く放出されますので、成層圏の温度が下がれば、それだけ温室効果も小さくなる。

成層圏の水蒸気が地球温暖化に大きな影響を及ぼしているという研究報告もありますので、こういう点でも、オゾン層がなくなることは地球の平均気温を下げることにつながるのです。

 

ただ、オゾン層による温室効果の影響は、水蒸気や二酸化炭素、メタンといった他の温室効果ガスと比べて小さく、オゾン層が消えることによる地球平均気温の低下はわずかだと考えられます。

⑥ 雲が今よりももっと高いところに浮かぶ

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もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

6番目は、「雲が今よりももっと高いところに浮かぶ」です。

 

地球の大気はいくつかの層に分かれていて、地上から上空10km前後までを「対流圏」と呼んでいます。

対流圏では大気の動きが活発で、雲ができたり雨が降ったりしています。

 

そして対流圏の上にあるのが、先ほど出てきた成層圏。

成層圏は上空10〜50km辺りでしたね。

 

さて、私たちが住んでいる対流圏では、上空にいくほど気温が下がります。

そのため、地面の近くで温められた軽い空気は上へ上へと上昇し、上空で冷やされることになります。

冷やされると、空気に含まれていた水蒸気が小さな水滴となり、雲ができる。

これが雲のできる基本的な仕組みです。

 

一方、対流圏の上にある成層圏では、上空に行くほど温度が高くなります。

そのため、成層圏では下にある空気の方が重く、下から上に向かっての空気の流れが生まれません。

つまり、成層圏では一般的に雲ができないのです。

 

成層圏で雲ができないのは、上空にいくほど温度が高くなるから。

ではなぜ成層圏では上空にいくほど温度が高くなるのかと言うと、実はオゾン層があるせいなのです。

 

オゾン層が紫外線を吸収するために、紫外線のエネルギーによって成層圏の温度が上がります。

そして、紫外線は高い場所ほど強いので、成層圏の一番上が一番熱くなる。

だから成層圏は、上空にいくほど温度が上がる構造になっているのです。

 

もしオゾン層がなくなれば成層圏の温度は上がらず、対流圏と同じような大気の構造になるでしょう。

そうなれば成層圏でも雲ができる。

つまり、今よりもっと高いところに雲が浮かぶようになるのです。

⑦ 酸素が紫外線に反応して、再びオゾン層が生まれる

 

もしもある日突然、オゾン層がなくなったら。

7番目は、「酸素が紫外線に反応して、再びオゾン層が生まれる」です。

 

実はオゾン層がなくなったとしても、大気中に酸素があれば、再びオゾン層ができるまでにそれほど長い時間はかからないと考えられます。

 

大気の中に含まれる酸素は、酸素原子が2つくっついた形をしています。

これを酸素分子と言います。

 

紫外線が酸素分子に当たると、酸素分子は壊れて一瞬だけ酸素原子2つに分かれます。

オゾンは酸素原子が3つくっついた形をしていますので、分かれた酸素原子1つと酸素分子がくっつけば、オゾンの分子ができるのです。

 

生命が誕生したばかりの、およそ35億年前の初期の地球には酸素がありませんでした。

だから、オゾン層ができるまでに30億年以上もの時間がかかったわけです。

 

しかし、今は大気中に酸素がある。

この酸素からオゾンが作られるので、比較的早くオゾン層は回復すると考えられるのです。

ここまでのまとめ

ここまで、「もしもある日突然、オゾン層がなくなったら」という主題で、以下の7つのポイントについて考えてきました。

  1. 水素自動車が普及して、クリーンな環境に
  2. 強烈な紫外線が降り注いで、外で遊べなくなる
  3. 皮膚がんによる死亡者が世界的に増える
  4. 動植物が死に絶えて、砂漠が広がる
  5. 温室効果が減って地球が冷え、気温が下がる
  6. 雲が今よりももっと高いところに浮かぶ
  7. 酸素が紫外線に反応して、再びオゾン層が生まれる

その結果、こんな暮らしになるかも

以上を踏まえて、オゾン層が突然なくなってしまった世界を大胆に予想してみたいと思います。

題して、「その結果、こんな暮らしになるかも」。

(1)動植物を守るUVカットシェルターの設置

まずは陸上の生物を守ために大忙しになるでしょう。

強烈な紫外線の下ではあらゆる動植物が生きられないので、大急ぎで紫外線(UV)カットシェルターを設置して、少しでも多くの動物を保護する必要があります。

これらが人工的なオゾン層の役割を果たすわけですが、さながら聖書に出てくる「ノアの方舟(はこぶね)」のようです。

 

屋外を覆う透明な屋根が次々と設置されるでしょう。

動物園も、牧場も、みんなシェルターで保護。

 

シェルターで囲ってしまえば雨が地面に降らなくなるので、水の供給をどうにかしなければなりません。

例えば雨水をタンクに溜めて、シェルターの天井から人工的な雨を降らすようにするかもしれませんね。

 

また、地下都市や海中都市が発展する可能性もあります。

地下は太陽光を避けられますし、水中も、水深10メートル以上では紫外線が届かないから安全。

コストの面で心配はありますが、地上のUVカットシェルターと共に、有効な対策の一つになるかもしれません。

(2)太陽の光を避けた夜型の暮らし

UVカットシェルターを設置すると言っても、広大な土地を覆うには長い時間がかかります。

それまで、人間は太陽の光を避けた夜型の暮らしになるでしょう。

 

太陽の光が弱まる夕方に起き出して、夜の間に働き、明け方に眠る。

シェルター設置の工事も夜。

漁業も夜。

オフィスワークも夜。

 

とにかく、「昼間はできるだけ外に出たくない」という生活スタイルになってしまいます。

どうしても昼間に出かける時は、濃いサングラスと強力な日焼け止めで完全防備するしかありません。

 

また、生活の中心となる夜を快適に過ごすために、省エネタイプの電灯がたくさん設置されるようになるでしょう。

もしかしたら、夜空を照らす人工衛星(人工の月のようなもの)を打ち上げるかもしれませんね。

(3)主食は魚介類

陸上の農産物が貴重になるので、海産物が主食になります。

魚介類や海藻など。

 

水深10メートル以上の海や湖にすむ生物は紫外線の影響を受けないので、水産資源は豊かなまま。

一方、陸上の農作物や家畜はシェルターの設置してある土地でしか育てられないので、極端に少なくなります。

 

肉や野菜は高級食材。

お米もパンも、今みたいにたくさん食べられなくなりますね。

(4)エネルギーの主役は水素に

強烈な紫外線で水素を大量かつ安く生産できるようになるので、水素エネルギーがエネルギーの主役になります。

水素自動車が普及するだけでなく、火力発電や原子力発電に代わる発電方法として、水素による発電方法が使われるようになるのです。

 

水素には爆発的に燃える性質があります。

「ボンッ!」と勢いよく爆発するため、うまくコントロールして燃焼させるには高度な技術が必要ですが、現在、水素を燃焼させてタービンを回す発電方法がすでに出来上がっています。

タービンというのは気体の流れを機械的な動力に変える装置で、タービンを回すことで発電ができ、電力を得ることができるのです。

 

水素は酸化チタンの光触媒反応によって紫外線(太陽光)と水から生成されるので、原料がなくなる心配もありません。

ですので、石油などの資源に代わるエネルギーの主役として、水素が選ばれるようになると考えられます。

 

 

以上、今回は「もしもある日突然、オゾン層がなくなったら」という主題でお話ししてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

もっと知りたい人のためのオススメ本

『もしも、地球からアレがなくなったら?』渡邉克晃・室木おすし(文友舎,2021)

Moshimo Chikyu kara
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