神奈川県三浦半島の荒崎(あらさき)海岸には、白と黒のメリハリのある縞模様の地層が広がっています。二種類の火山灰が交互に降り積もって、このような地層ができました。地質学の世界では、これらの地層は三浦層群の三崎層に分類され、約1200万年前~500万年前に太平洋の海底で堆積した地層であることがわかっています。
さて、白〜淡いグレーの層は、流紋岩質の火山灰層です。粒のサイズは砂よりも細かく、「シルト」と呼ばれる泥の一種に分類されます。岩石名としては、「凝灰質シルト岩」または「凝灰質泥岩」といいます。
それから、もう一方の黒い層は、玄武岩質の火山灰層です。こちらは白い層に比べて粒のサイズが粗く、砂〜礫(れき)に分類されます。岩石名としては、「スコリア質砂礫(されき)岩」といいます。
スコリアとは、玄武岩質〜安山岩質の黒っぽい噴石のこと。ちなみに流紋岩質の白っぽい噴石は、軽石といいます。また、礫というのは、砂よりも粗いサイズの小石のことで、荒崎海岸では粒径2cm程度までの礫の層がよく見られました。
こちらの写真は波の侵食作用によってできたほら穴で、「海食洞」といいます。
それにしても荒崎海岸の地層は、どの写真を見ても垂直に近い傾きをしていますね。もちろん元からこのような傾きだったわけではありません。
堆積した当時はほぼ水平の地層だったが、その後の地殻変動(プレートテクトニクス)に伴う褶曲作用で、地層が大きく傾斜しているのです。そういう目で見ると、地層からダイナミックな地球の動きを感じられるのではないでしょうか。
最後におまけの一枚。荒崎海岸一帯には、ハマボッスという植物の生育がしばしば見られました(下の写真)。
ハマボッス(浜払子、学名はLysimachia mauritiana)は、北海道南部から、沖縄など西南諸島の海岸に普通に見られる植物で、葉にやや厚みがあり、白い花をつけるのが特徴です。黒いスコリア質砂礫岩の割れ目から生えており、黒い背景に鮮やかな緑のコントラストが印象的でした。