バレー・オブ・ファイヤーの赤い砂岩(ファイヤーウェイブ)
©︎John Fowler / flickr

うねる炎のような渦巻き模様の砂岩

アメリカ合衆国ネバダ州南東部のバレー・オブ・ファイヤー州立公園には、赤と白の渦巻き模様が美しい、特徴的な砂岩の地層が広がっています。

「バレー・オブ・ファイヤー(火の谷)」という名前の通り、地層が炎のうねりのように見えますね。

朝日や夕陽に照らされると、より一層赤く染まって見えるそうです。

 

バレー・オブ・ファイヤー州立公園の場所は、ラスベガスから北東に80キロメートルほど離れた辺り。

炎のような縞模様の砂岩が形成された年代は、およそ1億5000万年前と言われています。

この時代は地質時代で言うと中生代ジュラ紀の終わり頃に当たり、多種多様な恐竜が進化したほか、被子植物(花を付ける植物)もこの頃に現れました。

鳥と恐竜の特徴を併せ持つ始祖鳥も、この時期の化石です。

 

そんな恐竜時代の地層ですが、バレー・オブ・ファイヤーの砂岩の一番の特徴は、何と言っても明るい赤色。

赤色は基本的には酸化鉄の色、つまり鉄さびの色です(鉄が錆びることを酸化と言います)。

砂岩を構成する砂つぶの表面に酸化鉄の微粒子が沈着したり、あるいは、砂つぶ同士の間を酸化鉄の鉱物が埋めたりすることで、赤い砂岩ができるのです。

 

では白い部分はどうなっているかと言うと、最初から酸化鉄の微粒子や鉱物を含んでいなかったか、あるいは、後から地下水によって取り除かれたかのどちらかです。

バレー・オブ・ファイヤーの大部分は赤い砂岩ですが、場所によっては冒頭の写真のように、白い地層を含んで縞々になってところもあります。

虹色の砂岩

バレー・オブ・ファイヤーの砂岩の色は、赤と白だけではありません。

場所によっては、次の写真のような虹色の地層も見られるのです。

虹色の砂岩(バレー・オブ・ファイヤー州立公園)
バレー・オブ・ファイヤーの虹色の砂岩(©︎John Fowler / flickr, modified)

 

地層の中にいろんな色がありますね。

赤、ピンク、オレンジ、黄色、茶色、青、紫、灰色。

このような虹色もやはり酸化鉄がおもな原因なのですが、色の違いができる仕組みについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

「酸化鉄」と一言で言っても、実際にはいろんなタイプの酸化鉄があります。

赤っぽい色の赤鉄鉱(せきてっこう)、黄色っぽい色の褐鉄鉱(かってっこう)、きちんとした結晶になっていないフェリハイドライト、など。

しかも、基本的な色は赤とか黄色なのですが、黒っぽく見えることもしばしば。

 

これらの酸化鉄がいろんな割合で含まれると、赤、ピンク、オレンジ、黄土色、茶色などの色が現れます。

そして、着色した部分が地下水に洗い流されることで、淡い黄色、灰色、白色などが現れる。

さらに、マンガンなど他の元素も加わることで色彩の幅が広がります。

このようにして虹色の地層ができていくわけですね。

 

とは言え、虹色になる仕組みが詳しくわかっているわけではありません。

場所によって酸化鉄の種類や割合が異なるのはなぜなのか。

あるいは、そもそも鉄分はどこから来たのか。

 

鉄分の由来については、虹色の地層についてだけの問題ではなく、バレー・オブ・ファイヤーの赤色の砂岩全体について言えることです。

もともと砂つぶの中に鉄分の多い鉱物が含まれていて、そこから染み出した鉄が長い年月をかけて地層を赤くしたとも考えられますし、あるいは、砂岩の地層ができた後に、地下水によって鉄分が運ばれてきて赤くなったのかもしれません。

砂丘が固まって砂岩になった

バレー・オブ・ファイヤーの地形ができるまでには、複雑なプロセスがあったと考えられています。

大きな流れとしては、砂岩の地層が地殻変動によって上昇(隆起)し、断層が形成され、その後に広範囲の侵食が起こって現在のような地形になった。

 

およそ8000万年から4000万年前、北アメリカ大陸西部のこの辺りは、ララミー変動と呼ばれる大規模な隆起によって上昇しました。

この時期に初めて海底から姿を現した地域もありますし、もともと陸地でさらに標高が高くなった地域もあります。

 

バレー・オブ・ファイアーの一帯については、ララミー変動の前にすでに陸地であったという説が有力です。

どうやら内陸部の砂丘だったとのこと。

 

すでに述べた通り、バレー・オブ・ファイアーの砂岩ができた時代は約1億5000万年前ですので、その時すでに陸地になっていたと言うことですね。

そこからララミー変動で上昇し、長い時間をかけて広範囲の侵食が起こった結果、現在は標高400から900メートルほどの高さになっています。

 

ところで、先ほどバレー・オブ・ファイヤーは「内陸部の砂丘だった」と書きましたが、砂丘が固まって砂岩になると言うのも、とても不思議ですよね。

例えばですが、サハラ砂漠や鳥取砂丘が遠い将来にカチカチの砂岩になるなんて、ちょっと想像できません。

 

集積した砂が砂岩になる方法としては、おもに2つのプロセスがあると言われています。

一つは、上に積み重なった集積物の重さで下の方の地層がギュッと圧縮され、固まると言うもの。

もう一つは、砂つぶ同士をくっつけるセメントのような成分が地層中に染み込み、砂つぶの集まりを固めてしまうと言うもの。

 

砂丘が砂岩になると言うのはなかなか実感できませんが、長大な地球の歴史の中で徐々に進行していった現象として、想像を巡らせてもらえたらと思います。

参考文献

場所の情報