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©️mailanmaik / Pixabay

標高3700メートルに広がる巨大な塩の平原

延々と続くペールオレンジの平原。

砂漠の写真のようにも見えますが、実はこれ、ぜんぶ塩なのです。

 

南米ボリビア西部に広がるウユニ塩原(通称ウユニ塩湖)は、標高3700メートルの高地にできた巨大な塩の平原です。

その大きさは、なんと東西に250キロメートル、南北に100キロメートルにも及びます。

 

これほどの広い範囲に厚さ12メートルほどの大量の塩が溜まっているのですが、驚きなのはその平坦さ。

100キロメートル四方で50センチほどしか高低差がないそうです。

そして、その圧倒的な平坦さのゆえに、雨季(11月〜4月)になると塩原の上に薄く水が広がって、波ひとつない透き通る鏡になるのです。

 

冠水時のこちらの写真を見てください。

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©️Chechevere / Wikipedia

 

鏡のような水面に空が映り、まるで空の上に人が立っているかのよう。

標高3700メートルですから、見た目だけでなく実際にも「空の上」ということになります。

ウユニ塩原が「天空の鏡」と称されるのも納得できますね。

深い湖だと波が立ちやすくて、こうはいきません。

 

▼▼▼動画もあります▼▼▼

乾季と雨季の繰り返しが真っ平らな塩原を生み出した

ウユニ塩原はアンデス山脈に位置していますが、アンデス山脈は海底が隆起してできた山脈です。

つまり、元々は海の底でした。

そして、隆起によってアンデス山脈が離水し、高地へと成長していった際、ウユニ一帯には大量の海水が取り残されて山間の窪地を埋める巨大な塩湖になったのです。

 

しかも、その塩湖からは川が流れ出なかったため、海水が蒸発することでどんどんと塩分が濃くなっていきました。

その結果、山の上に塩の大地ができたというわけです。

 

さて、ここで一つ疑問が湧きませんか。

 

そうです。

平坦さの謎。

どうしてウユニ塩原はこれほどまでに平坦な場所になったのでしょうか。

 

海水が干上がってできるのなら、例えばイスラエルからヨルダンにかけて広がる死海も同じようなものです。

にもかかわらず、死海の周辺や湖底はなんだかゴツゴツしていて、あまり平坦ではないですよね。

 

実は、ウユニ塩原の圧倒的な平坦さは、雨季と乾季が何度も繰り返されることで生まれました。

ウユニ塩原の緯度はおよそ南緯20度で、この辺りは太陽の位置が高く、日差しが厳しいのです。

しかも標高が高いと上空の空気が薄いので、太陽光は空気による散乱を受けにくく、日差しはいっそう強くなります。

 

この強烈な日差しのために、アンデス山脈の隆起によって山間部に取り残された海水は、やがて完全に干上がりました。

想像するに、最初の塩湖が干上がったこの時には、まだかなりゴツゴツしていたことでしょう。

干上がる過程で周りの山々に塩がこびり付き、どこもかしこも塩まみれだったはずです。

 

でもその後、雨季に雨が降ることでこびりついた塩が再び溶かされ、周囲の山々から窪地の底へと流れ込みました。

洗い落とされた塩が窪地に集まってくるため、最初の塩湖よりももっと濃度の高い塩湖ができます。

 

そして平坦さに関わる重要なこととして、雨による再溶解の際に、ゴツゴツした塩のかたまりの凸部が優先的に溶かされました。

その後、再び乾季になると強烈な日差しで完全に干上がるわけですが、今度は最後まで水たまりが残る凹部が優先的に埋められていきます。

こうして、結果的に高低差が少なくなるのです。

 

そして、再び雨季になると雨に溶かされ、周囲の塩が集まってくる。

凸部が優先的に溶かされる。

凹部は埋められる。

この繰り返しです。

 

このように、完全に干上がった状態と雨季を何度も繰り返すことで、やがて現在のような真っ平らな塩原になっていきました。

このサイクルは今も続いているので、ウユニ塩原は塩を採っても多くの観光客が訪れても、ずっと平坦なままなのですね。

地下の塩水には豊富なレアメタルが含まれている

なお、ウユニ塩原の地下には大量のリチウムの埋蔵が確認されていて、資源開発の面でもこの場所は注目されています。

その量は、世界のリチウム埋蔵量の推定17%を占めると言われるほど。

 

リチウムは、スマートフォンや各種コンピュータ、電気自動車に欠かせないリチウムイオン電池の原料です。

代表的なレアメタル(希少金属)として、近年ますます需要が高くなっていますね。

 

このウユニ塩原のどこにリチウムがあるかというと、地下の塩水の中です。

リチウムを含む塩水を地下から汲み出して、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの成分を分離することで純度の高いリチウムが得られます。

 

ところで、この辺りでリチウムの埋蔵が確認されているのは、実はボリビアのウユニ塩原だけではありません。

すでに開発が進んでいるチリのオンブレ・ムエルト塩湖やアタカマ塩湖、アルゼンチンのオラロス塩湖など、アンデス山脈にはいくつものリチウム産地が点在しているのです。

これらはすべて、アンデス山脈の隆起が産んだレアメタル鉱山。

私たちのスマートフォンにも、アンデス山脈のリチウムが含まれているかもしれません。

参考文献

場所の情報

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『美しすぎる地学事典』(秀和システム,2020)

Chigaku Jiten
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