モニュメント・バレー(アメリカ合衆国ユタ州・アリゾナ州)
©︎John Fowler / flickr

アメリカの荒野に点在する赤い岩山

満月を背景にして、荒野にそびえる赤い岩山。

下の方はスカートを広げたような斜面なのに、途中から垂直な崖になってまっすぐに伸びていき、頂上には小さな平坦部が乗っているという独特の形をしています。

地上からの高さは約300メートル。

 

その形状が記念碑に見えることから、この辺りはモニュメント・バレー(記念碑の谷)と呼ばれています。

地理的な場所はアメリカ合衆国西部のユタ州とアリゾナ州の境界辺りですが、先住民部族であるナバホ族の居留地として区別されているため、独立国に準ずる扱いとなり、アメリカ合衆国には属さないということです。

 

モニュメント・バレーの岩山は、流水による侵食作用から取り残された「ビュート」と呼ばれる地形。

岩山の頂上には侵食作用に強い地層(キャップロックと言います)が乗っていて、その下にある、比較的侵食されやすい地層を保護する形になっています。

そのため、キャップロックに保護されている部分だけが侵食を免れて背の高い岩山となり、キャップロックがなくなってしまった部分では侵食が進んで、下の地層がすっかりなくなってしまったというわけです。

 

ビュートの場合、平坦な頂上部分がとても狭くなっていますが、もっと頂上部分が広い地形は「メサ」と呼ばれます。

テーブルの形をした台地のことですね。

メサがさらに侵食を受けることで、モニュメント・バレーのようなビュートが点在する地形になるのです。

侵食されたのは2億4000万年以上前の3つの地層

モニュメント・バレーの岩山は、大きく分けて3つの地層からできています。

 

一番下のスカートを広げたような地層は、頁岩(けつがん)という、泥が固まってできた岩石の地層。

およそ3億年前にできたものと見られています。

岩石に含まれる鉄分が酸化して「鉄さび色」になっているため、地層全体が赤みがかった茶褐色をしています。

 

次に、スカート形の頁岩の上に乗ってる垂直な崖の部分は、砂岩の地層。

こちらは2億7000万年ほど前の地層で、やはり鉄分を含んでいて鉄さび色をしています。

崖のところどころに黒みがかった部分も見えますが、黒色はマンガンが酸化した色です。

鉄もマンガンも、岩石の成分としてはそれほど珍しいものではありません。

 

そして最後が、頂上に乗っている礫岩(れきがん)の地層。

礫というのは小石のことですが、砂岩よりも粒が大きい岩石のことを礫岩と呼んでいます。

この礫岩の地層が侵食に強く、キャップロックとして下の地層を保護しているわけですね。

できた年代は、およそ2億4000万年前と見積もられています。

川の流れ、雨、風、温度変化が生んだ自然の造形

冒頭の写真を見てもらうと分かるとおり、ビュートの上に乗っているキャップロックは、心細くなるほど小さいですよね。

ビュートというのは侵食作用がかなり進んだ最終段階の地形なので、このように今にもなくなってしまいそうな小さいキャップロックを乗せた、細長い岩山になっています。

 

ここで、もう少し視野を広げて、モニュメント・バレーの全景を見てみましょう。

モニュメント・バレー全景(アメリカ)
モニュメント・バレー全景(©︎au_ears / flickr, modified)

 

全体を見渡すと、モニュメント・バレーには、ビュートだけでなく頂上の広い岩山(メサ)もたくさん分布していることがわかります。

このようなテーブル形の岩山がどんどん削られていって、やがては記念碑のようなビュートになっていくわけですね。

 

モニュメント・バレーの侵食地形ができたのは、元々は川の流れによります。

この辺りは、今でこそ雨がほとんど降らない砂漠気候ですが、侵食が始まったと見られる数千万年前には、多数の川が流れる水の豊かな場所だったそうです。

それで、河川や雨の影響で地表面は削られていき、谷が形成され、その谷が広がってテーブル状の台地やビュートができていきました。

 

さらに、乾燥化が進んで河川がなくなった後も、侵食は続きます。

時折降る雨、風、そして温度変化がもたらす侵食作用です。

 

温度変化について少し補足しますね。

岩石は、温度変化によって微妙に体積が変化します。

日中の高い温度ではわずかに膨張し、夜間の低い温度ではわずかに収縮する。

このような日変化を繰り返すわけです。

 

すると、何度も膨張・収縮を繰り返すうちに岩石にはひび割れが増え(風化作用と言います)、そのひび割れによって、表面が削られやすくなっていくのです。

現在のモニュメント・バレーの気温を見てみると、夏場の日中は摂氏30度を超える暑さなのに、夜間は摂氏20度を下回り、昼夜の気温差がかなり大きい。

ですから、温度変化によるひび割れの影響を受けやすく、その分、侵食が促進されるわけです。

 

このようにして、最初はおもに河川の侵食によって、その後は雨・風・温度変化によって、モニュメント・バレーの地層は削られていきました。

後者の侵食作用は、現在も進行中です。

 

モニュメント・バレーから西に200キロメートルほど離れた場所には、深い渓谷で有名なグランドキャニオンが広がっています。

侵食のプロセスから見ると、遠い将来にはグランドキャニオンも、ビュートやメサの点在するモニュメント・バレーのような風景になると考えられています。

参考文献

場所の情報