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今や世界中で地球温暖化が心配されていますが、もし温暖化で北極の氷が全部溶けると、どんなことが起きるでしょうか。
- 海の水が増える!
- 小さな島が沈んでしまう!
- シロクマがおぼれる!
はい、いろいろと思いつきますね。
ところで、「海の水が増える」というのは、もう少し正確に言うと「海水面が上がる」ということです。
でも実は、北極の氷が溶けても海水面は上がらないんです。
あんなに大きな氷のかたまりが溶けるんだから、感覚としては海の水が増えそうですよね。
ほら、海の上に出ている分があるわけですし。
と言うわけで、どうして北極の氷が溶けても海水面が上がらないのか、順番に説明していきますね。
まず、ご存知かもしれませんが、北極の氷の下には陸地がありません。
北極の氷は南極と違って、海に浮かんでいるんです。
つまり北極の氷は、コップの水に浮かんだ氷と同じように、海にぷかぷか浮かんでいるというわけです。
このことをちょっと頭に置いておいて、次に行きましょう。
さて、コップの中の氷を見ると、水面から出ている部分よりも沈んでいる部分の方がずっと大きいですよね。
北極の氷も同じです。
海の下に隠れている部分の方がずっと大きい。
そして、ぷかぷか浮かんでいる氷が溶けて水になると、大きさが減ります。
体積が小さくなる。
どれくらい小さくなるかと言うと、今まで水の底に沈んでいた部分がありますよね、そこにすっぽりとおさまるくらいの大きさにまで小さくなるのです。
だから、氷が溶けても水の量は増えない。
これが、北極の氷が溶けても海の水が増えない理由です。
でも、なんで氷は溶けると小さくなるんでしょうか。
そこが不思議なところですよね。
なぜ不思議かと言うと、実は、バターでもチョコレートでもなんでもいいんですが、普通はかたまりが溶けて液体になると、ちょっと量が増えるんです。
つまり、体積が大きくなる。
例えば、バターやチョコレートが固まっている時のイメージは、きれいに積み重なったブロックみたいな感じ。
一方、溶けたバターやチョコというのは、ブロックがバラバラになったような感じ。
バラバラになったブロックって、かさばって、なんとなく量が増えてる感じしますよね。
たぶんこのままだと買ってきた時の箱には入らない。
自分の部屋を想像してみてもいいでしょう。
いつも散らかってるなら、それはチョコが溶けた状態なんです。
・・・えーと。
たとえが微妙でしたね。
では続いて氷の場合を考えてみましょう。
氷はですね、トランプで塔を作った時のようなイメージ。
きれいに並んでいるのですが、すき間が多い。
そして、氷が溶けて水になるというのは、この塔を崩してトランプの山にすること。
そうすると、ほら、なんとなく小さくなったでしょう。
すき間がなくなって、見かけの量が減りました。
これが、氷が溶けると小さくなる理由なんです。
溶けると元の大きさよりも小さくなる。
そして、最初に出てきたコップの中の氷を思い出して欲しいのですが、浮いている氷が溶けると体積が小さくなって、それまで水の中に沈んでいた部分、そのスペースにすっぽりとおさまってしまう。
だから水の量は増えない。
北極の氷もこれと同じ。
溶けても海の水が増えることはありません。
ただ、ここで注意して欲しいことがあります。
北極の氷のように「海に浮かんでいる氷」が溶けても海の水は増えませんが、「陸の上にある氷」が溶けて海に流れ込めば、その分だけ海の水は増えるのです。
今まで海の中になかったものがそっくりそのまま海に流れ込むのですから、いくら溶けた時に体積が小さくなるとは言え、確実に水の量は増えますよね。
例えば、南極は南極大陸という大きな陸地の上に氷がのっているわけなので、それが溶けて海に流れ込めば、海の水は増えるんです。
ですので、やっぱり地球温暖化の影響はあるわけですね。
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補足:より正確に言うなら、ほんの少しだけ海水面は上がる
補足としまして、以下はもう少し細かい話。
より正確に言うと、北極の氷が溶けることでほんの少しは海水面が上がります。
(北極の海氷が全て溶けた場合、地球全体の平均海水面が約4cm上がると見積もられています。)
その理由は、真水でできた氷が海水に浮かんでいる場合、密度の差があるので、少しだけ真水(氷が溶けた後の水)の方が体積が大きくなるためです。
ですが、密度差による体積の増加分は、氷が押しのけている海水の体積の0.026倍程度というごくわずかな量ですので、どこかの島が水没するほど海水面の高さが上がることはありません。
【参考文献】The melting of floating ice raises the ocean level (Geophysical Journal International, Volume 170, Issue 1, July 2007, Pages 145–150.) → https://academic.oup.com/gji/article/170/1/145/2019346
また、このような細かい議論をするならば、氷が溶けることによる海面上昇をどうこういう前に、熱による海水の膨張の影響を考える方が重要になってきます。
氷があるうちは海水温はおおむね0℃でそれ以上高くなりませんが、氷がなくなってしまえば海水温はもっと高くなり、その影響で海水が膨張することになるからです。
海水と真水の密度差による海面上昇よりも、むしろこちらの影響の方が大きいと言えます。
以上、補足でした。
コラム:奇跡の物質「水」
氷のようにものが固まった状態を「固体」、水のようにものが溶けた状態を「液体」と言いますね。
水以外のあらゆる物質は、液体から固体になると堆積が小さくなります。
でも水だけは、液体から個体になると堆積が大きくなるんです。
どれくらい大きくなるかというと、約1.1倍。
氷になると体積が大きくなるわけですから、氷と水を比べれば、氷の方が軽い。
だから氷は水に浮くんです。
このことはものすごく大事。
なぜかと言うと、もし水より氷の方が重かったら、海面でできた氷はみんな下の方に沈んでいってしまう。
海の底に氷がたまるので、海は底の方からだんだんと凍っていくことになります。
するとやがて海全体が氷となり、海の生き物は住めなくなり、地球はもっと別の姿になっていたことでしょう。
海が今のような海でいられるのは、凍ると軽くなるという水の特別な性質のおかげなんです。
あまりにも身近にあるから気づかないですが、水って奇跡の物質なんですね。
もっと知りたい人のためのオススメ本
丸山茂徳『地球温暖化「CO2犯人説」は世紀の大ウソ』(宝島社,2020)