アリゾナ州ペリドット・メサのカンラン石
©︎James St. John / flickr

玄武岩質マグマに取り込まれた緑色の宝石

黒っぽい岩石と透き通る緑色の鉱物がくっついたようなこの岩石は、地球内部のマントルから噴出して来た溶岩です。

溶岩の本体は黒っぽい方の岩石で、玄武岩質のマグマが冷えて固まったもの。

一方、緑色の鉱物の塊は「カンラン岩」と呼ばれるマントルの岩石で、玄武岩質マグマの噴火に伴って、一緒に地上まで運ばれて来たものです。

 

こんなに美しい宝石のような塊が岩石だなんて、ちょっと意外ですよね。

でも地球内部の深い場所には、このような緑色の岩石がびっしりと詰まっているのです。

その場所は「上部マントル」と呼ばれていますので、まずはマントルの構造について簡単に見てみましょう。

 

地球の内部は大きく3つの層に分かれているのですが、体積として最も大きいのがマントルと呼ばれる部分で、全体の80パーセント以上を占めます。

マントルの領域は、深さ約70キロメートルから2900キロメートルまで。

それよりも浅い部分は「地殻(ちかく)」と言い、おもに花崗岩と玄武岩という2つの岩石でできています。

 

また、深さ約2900キロメートルよりも深い場所(2900から6400キロメートルまで)は「核」と呼ばれ、この領域は岩石ではなくほとんどが鉄。

最深部、つまり地球の中心部分が固体の鉄で、その周りを液体の鉄が取り囲んでいます。

 

地殻と核に挟まれたマントルの領域は、さらに2つの領域に分けられます。

深さ660キロメートル辺りを境界にして、地上に近い側が「上部マントル」、下側が「下部マントル」。

このうち、上部マントルの方はおもにカンラン岩でできていて、カンラン岩の主要な鉱物が、緑色の透明な「カンラン石」なのです。

 

というわけで、上部マントルには実際に宝石のような世界が広がっていると考えられています。

一方、下部マントルの方は化学成分が少し異なり(二酸化ケイ素の割合が多い)、オレンジ色または茶色に変化しますが、やはり透き通った美しい鉱物の世界だということです。

先住民部族アパッチ族が暮らす溶岩の丘

アリゾナ州ペリドット・メサの風景
ペリドット・メサの風景(©︎Alan Stark / flickr, modified)

 

このような緑色の宝石が見つかるのは、アメリカ合衆国アリゾナ州南東部に位置する「ペリドット・メサ」という丘陵地です。

ペリドット・メサは先住民部族であるアパッチ族の居留地で、厳密にはアメリカ合衆国ではなく、独立国の扱い。

上の写真(ペリドット・メサの風景)を見ると、なだらかな大地をオレンジと黄色の花が覆い、とても美しい土地ですね。

足元には砕けた溶岩のかけらが厚く集積しています。

 

ペリドット・メサの「ペリドット」は、カンラン石の宝石名。

大きく、透明で、濃い緑色のカンラン石は宝石として扱われるのですが、ペリドット・メサのカンラン石は、まさにこれらの条件を満たす「宝石クオリティ」なのです。

そのため、この辺りでは古くからペリドットの採掘が行われ、現在では世界の需要の80パーセント以上を占める生産地となっています。

 

また、ペリドット・メサの「メサ」とは、侵食によってできたテーブル状の地形(台地)のこと。

写真を見ても分かる通り、遠くに見える丘の頂上は比較的平らで、テーブルのようになっていますね。

 

花に覆われた地面が侵食によって削られた面で、テーブル状の丘は侵食から取り残された部分。

高さの違う2つの平面が見られるこのような地形を、メサと呼んでいます。

 

なお、ペリドット・メサを含むアパッチ族の居留地は、「サンカルロス・アパッチ・インディアン居留地」という地名で、サンカルロスが同地域の最大の町。

ペリドット・メサが属する火山地帯の名称も、「サンカルロス火山地帯」と言います。

ナトリウムとカリウムが豊富なアルカリ玄武岩

緑色に輝くマントルの宝石を地上に運んできたのは、玄武岩質のマグマです。

冷えて固まると黒っぽい玄武岩になるマグマのことを「玄武岩質のマグマ」と呼んでいるわけですが、玄武岩にもいくつかバリエーションがあって、ペリドット・メサの玄武岩は「アルカリ玄武岩」と呼ばれるタイプ。

 

二酸化ケイ素の割合が低い(重量比で45から52パーセント)という点は他の玄武岩と同じですが、アルカリ玄武岩はナトリウムやカリウム、すなわちアルカリ金属元素を多く含みます。

海洋底に広く分布する多くの玄武岩は、アルカリ金属元素の割合が1から2パーセント程度。

これに対し、ペリドット・メサのアルカリ玄武岩には、アルカリ金属元素が7から12パーセント程度も含まれているのです。

 

さて、玄武岩にもいくつか種類があるとわかったところで、最後にこの辺り一帯で起こった火山活動について、詳しく見てみましょう。

 

ペリドット・メサのアルカリ玄武岩は、約58万年前の火山活動で発生した大規模な溶岩流(ペリドット・メサ溶岩流)によってもたらされました。

最初の噴火は、非常に激しい火砕流から始まったと推測されています。

 

推測の手がかりとなったのは、玄武岩質マグマに取り込まれたカンラン岩の塊。

大きいものではバスケットボール(直径約25センチメートル)ほどもあり、これだけ大きな塊をマグマと一緒に地表へと噴出するには、ものすごいスピードで爆発的に噴火する必要があるからです。

 

そして、最初の爆発的な噴火の後には、溶岩が噴水のように噴き上がる「溶岩噴泉」によって大量の溶岩流が発生したと考えられています。

これが「ペリドット・メサ溶岩流」と呼ばれるもので、その溶岩は薄いところで3メートルほど、厚いところでは35メートルもの厚さで、現在のペリドット・メサ一帯を覆っています。

 

また、興味深いことに、ペリドット・メサには溶岩の「根」が見当たらないそうです。

多くの火山では、かつてのマグマの通り道が硬い溶岩で満たされて、言わば根っこのように地中に残っているのですが、ペリドット・メサにはそれがない。

おそらく、噴火を引き起こした地中のマグマがほぼ完全に抜け切ってしまい、「根」を形成できるほどにはマグマが残らなかったためであろうと考えられています。

参考文献

場所の情報