ナショナル・ジオグラフィックの連載企画『日本うるわし列島』をベースに編集された旅のエッセイ集。
ナショジオのプロ写真家による日本各地の美しい写真と、著者の池澤さんによる植物学・地学・人文学を織り交ぜた解説文が魅力の一冊です。
著者の博識が素晴らしくて、たとえただの旅エッセイ(紀行文)だったとしても十分に楽しめると思うのですが、この本の尖っているところは、とことん「人工物」から離れた紀行文であるところ。
史跡や文化にはほとんど触れておらず、日本に残された美しい自然にスポットを当て続けています。
手付かずの原生林であったり、無人島であったり、昔ながらの自給自足の生活が残されている場所であったり。
取材に訪れた場所は、日本最東端の島「南鳥島」を始め、北海道の知床半島、小笠原諸島、沖縄の慶良間(けらま)諸島、奄美諸島、五島列島、八重山諸島などなど。
さらには、日本列島の成り立ちを追いかけて、ロシア領のサハリンにまで渡っています。
日本にこんなに豊かな自然があったのかという大発見の連続で、本書を読んだら、海外旅行よりも国内旅行の方が魅力的に思えてきました。
日本って素晴らしいですね。
特に印象的だったのが、長崎県の五島列島。
著者が「ミニ火山群」と呼ぶこの場所は、山脈が海に溺れてできた細長い列島で、まるで日本列島の縮図になっているとのことです。
今回ご紹介した本
『うつくしい列島 地理学的名所紀行』池澤夏樹(2015,河出書房新社)