鉄鉱石や砂鉄のような特別な石ではなく、その辺のただの石ころでも、たまに磁石にくっつくことがあります。
今回は神奈川県鎌倉市の海岸で拾った石を使って、磁石にくっつく石がどれくらいあるのか調べてみました。
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石ころの中の鉄
実験の準備
用意するものは、ネオジム磁石と石ころです。
海岸や河原、あるいは山など、どこの石ころでも大丈夫です。
この中に何個ぐらい、磁石にくっつく石があるのでしょうか。
実験の結果
実際にやってみると、そのほとんどが磁石にくっつくという意外な結果に。
しかし、くっつき方には違いがありました。
磁石へのくっつき方が強い・弱いで分けてみると、次のように分けることができました。
右側のグループが強く磁石にくっついた石で、左側が弱く磁石にくっついた石です。
磁石に全然くっつかなかったのは、たったの2つだけでした(真ん中)。
磁石に強くくっついた石(右側)には、黒っぽい石が多いですね。
色が関係しているのでしょうか。
石の場合、磁鉄鉱と呼ばれる鉄の鉱物が含まれていると、磁石にくっつくことが知られています。
そして、マグマ起源の岩石(火成岩)には、磁鉄鉱が多く含まれています。
今回、磁石に強くくっついた石(右側)の中にも、安山岩や玄武岩、ひん岩などの黒っぽい火成岩が何個かありましたが、それ以外に泥岩もありました。
砂岩や泥岩などの堆積岩は、火成岩に比べると磁鉄鉱が含まれにくいものです。
ですが、黒っぽい泥岩には、けっこう含まれているのかもしれませんね。
なお、今回の実験では強力なネオジム磁石を使いましたが、磁石に強くくっつく石でしたら、普通の磁石でもちゃんとくっつきます。
噴石・溶岩の中の鉄
続いて、火山の噴石や溶岩など、マグマ起源の岩石に注目して実験してみました。
先ほども少し触れたように、「マグマ起源の岩石は磁石にくっつきやすい」ということがよく知られています。
磁鉄鉱が比較的多く含まれるからですね。
ですが、「マグマ起源の岩石」と一口に言っても、黒い玄武岩や安山岩と、白い流紋岩とではずいぶんと性質が異なります。
その上、噴石と溶岩では穴ぼこの多さが違いますし、溶岩が変化した「変成岩」というものまであります。
これら全部が「マグマ起源の岩石」。
磁石へのくっつきやすさも、おそらく違うはずですね。
今回の実験では、以下の6つを試しました。
さて、この中で1つだけ全く磁石にくっつかなかったものがあります。
どれだかわかりますか?
それでは順番に、実験結果を見ていきましょう。
実験結果
① 富士山の噴石(スコリア)
スコリアとは、玄武岩質のマグマが空中で固まったもの。
こちらは磁石によくくっつきました。
玄武岩質のマグマには磁鉄鉱が多く含まれているため、予想通りです。
② 八丈島の噴石(スコリア)
同じく、玄武岩質のマグマが空中で固まったものです。
こちらも磁石によくくっつきました。
黒いスコリアは見た目が富士山のものと似ていますが、赤いスコリアも、同じく玄武岩質です。
③ 箱根の溶岩(安山岩)
こちらは安山岩質のマグマが流れ出して固まったものです。
安山岩は、玄武岩よりも磁鉄鉱が少なめの岩石。
それでも磁石によくくっつきました。
噴石とちがい、溶岩はガチッとしていて緻密です。
④ 箱根の噴石(軽石)
こちらは流紋岩質のマグマが空中で固まったものです。
弱いですが、磁石に引きつけられました。
流紋岩質のマグマには磁鉄鉱が少ししか含まれていないので、くっつき方が弱いのは予想通りと言えます。
また、見た目が丸いのは、人工的に整形されているからです。
⑤ 秩父の緑色片岩(玄武岩質の変成岩)
こちらは緑色片岩と言い、玄武岩質の溶岩が圧力と熱で変化したものです。
玄武岩が変化したものなので磁鉄鉱を含むはずですが、磁石へのくっつき方は弱かったです。
⑥ 長野県の黄鉄鉱(イオウと鉄の鉱石)
こちらは黄鉄鉱と言い、マグマの成分が溶け込んだ熱い地下水中でできる、イオウと鉄の鉱物です。
磁鉄鉱と同じく鉄の鉱物なので、いかにも磁石にくっつきそうですが、全く磁石に引き付けられませんでした。
同じ鉄でも、鉱物のちがいによって磁石へのくっつき方が異なることがわかります。
▼▼▼実験結果は動画でも見られます▼▼▼