虫を捕まえる大きなハサミが特徴のハエトリグサは、食虫植物の中でも最もポピュラーなもののひとつ。

独特の見た目とすばやい動きは見れば見るほど不思議で、興味が尽きません。

「何を食べるのかな?」「中で虫はどうなってるのかな?」「どこを触ると口を閉じるのかな?」などなど、自由研究にはもってこいの研究対象です。

この記事では簡易的なデジタル顕微鏡を使ったハエトリグサの観察結果をご紹介します。

食虫植物とは

食虫植物とは、光合成で得られるデンプンと土壌から吸い上げる養分の他に、昆虫や小動物などを消化・吸収して栄養源の一部にしている植物の総称で、特徴的な捕虫器官を有していることで有名です。

例えば、鋭い歯がびっしりと並んだ大きな口のような葉っぱを持つ「ハエトリグサ(蝿捕草)」や、とっくりのような形をした落とし穴式の葉っぱを持つ「ウツボカズラ」などがよく知られています。

食虫植物のハエトリグサ(蝿捕草)
食虫植物のハエトリグサ(蝿捕草)

 

食虫植物のウツボカズラ
食虫植物のウツボカズラ

 

ちなみに食虫植物は、英語では「Insectivorous Plants(インセクティバラス・プランツ)」あるいは「Carnivorous Plants(カーニバラス・プランツ)」と言います。

『種の起源』の著者で「進化論の父」として有名なチャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin, 1809-1882)は、食虫植物の研究成果をまとめた著書『食虫植物』を1875年に発表しましたが、原題は「Insectivorous Plants」という表記です。

「insectivorous」は「虫を食べる性質の」という意味。

ダーウィンさんが「食虫植物」の名付け親だったのですね。

 

一方「Carnivorous Plants」の方は、直訳すると「肉食植物」になってしまいます。

ちょっと怖い名前・・・。

ハエトリグサの特徴は素早く閉じる捕虫器官

さて、そんな食虫植物の中で、最もポピュラーなものの1つがハエトリグサ(学名:Dionaea Muscipula)です。

英語名は「Venus Flytrap」と言います。

 

ハエトリグサは、おもに小さな昆虫やクモを食べます。

名前は「蝿捕り草」でも、色々食べるんですね。

 

ハエトリグサは小さな植物で、短い地下茎から4〜7本程度の葉を出します。

食虫植物のハエトリグサ(蝿捕草)
食虫植物のハエトリグサ(蝿捕草)

 

食虫植物のハエトリグサ(蝿捕草)葉の先端は2つの部分に分かれていて、ここが虫を捕らえる捕虫器官。

とても普通の葉っぱには見えませんが、それでもやっぱり葉っぱなんですね。

キバがびっしり生えた口のように見えます……。

 

そしてこの捕虫器官、ものすごい速さで動くんです。

その速さ、なんと100ミリ秒(0.1秒)。

開いていた捕虫器官が、0.1秒という早業でさっと閉じるんです。

 

すごいですね。

これは、植物の動きとしては最も速い動きの1つと言われています。

 

科学雑誌『Nature』に掲載された論文によると、ハエトリグサの素早い動きはスナップによるものだそうです(Forterre et al., 2005)。

例えばトイレの吸引機のような、ゴムでできた半球型のものを想像してください。

 

この半球を裏向けるように反り返らせると、少しの力を加えただけで反動で元に戻りますよね。

反り返ったゴムの半球は言わば「引き絞られた弓」のようで、力が限界まで蓄えられた状態。

だから反動で元に戻るときの動きはとても素早いのです。

 

ハエトリグサの素早い動きも、このような原理で実現できているのだそうです。

捕虫器官をデジタル顕微鏡で観察

ハエトリグサを特徴づける捕虫器官。

その細部を見てみようと、簡易デジタル顕微鏡を使って観察しました。

その1:捕虫器官の中から謎の白い塊

まずはこちらの写真から。

ハエトリグサの捕虫器官(閉じているところ)
ハエトリグサの捕虫器官(閉じているところ)

 

閉じているハエトリグサの捕虫器官をピンセットで開いたところ
閉じているハエトリグサの捕虫器官をピンセットで開いたところ

 

なんと、閉じている捕虫器官を無理やり開いてみたら、何か入っていました!

白い塊のようですが、一体何でしょうか。

取り出して詳しく見てみましょう。

ハエトリグサの捕虫器官の中に入っていた白い塊
ハエトリグサの捕虫器官の中に入っていた白い塊

 

というわけで取り出してみたものの、白い塊が何なのか結局わかりませんでした・・・。

大きさは3.5 mm程度。

白い塊と一緒にアリのような昆虫も何匹か入っていたので、何か関係があるのかもしれません。

(でもアリの卵ではなさそうです。)

 

・・・次、行きましょう!

その2:干からびて中で死んでいる昆虫

続いて別の捕虫器官を開けてみると、今度は消化後と思われる虫を発見!

ハエトリグサの葉っぱは開いており、中の虫は干からびて死んでいました。

食べられちゃったんでしょうかね。

ハエトリグサの中で死んでいた昆虫
ハエトリグサの中で死んでいた昆虫

その3:ハエトリグサの棘の数

さて、もう少し違う角度からも観察してみましょう。

こんどは棘の数に着目しました。

開いた状態のハエトリグサの捕虫器官
開いた状態のハエトリグサの捕虫器官

 

閉じた状態のハエトリグサの捕虫器官
閉じた状態のハエトリグサの捕虫器官

 

ハエトリグサの棘の数は、数えてみたら左右非対称でした。

例えば、ある捕虫器官について数えてみると、左側が19本、右側が16本。

けっこう違いますね。

 

なんとなく左右対称か、あるいは非対称でもその差は1本くらいじゃないかと予想していたんですが、大ハズレでした。

1本どころの違いではなかったです。

 

なぜ左右で棘の本数が違うのか、不思議ですね。

観察に使用した顕微鏡

今回、ハエトリグサの観察で使用したのは下記のような簡易デジタル顕微鏡です。

Simple digital microscope
Amazon 商品ページ

 

Amazonなどで「簡易実体顕微鏡」とか、「デジタルマイクロスコープ」とかで検索すると見つかると思います。

接続方法として「USB接続」と「WiFi接続」がありますが、ノートPCで観察する人はどちらでもOKです。

スマートフォンで観察する人はWiFi接続が必須。

 

どちらも比較的安価に購入できて、細部の観察に重宝します。

ぜひお試しください。

参考文献・参考URL

  • 食虫植物研究会(2013)食虫植物研究会ウェブサイト→ http://ips.2-d.jp/IPS-info.htm
  • Forterre Y, Skotheim J M, Dumais J, Mahadevan L (2005) How the Venus flytrap snaps. Nature 433, 421-425.

謝辞

下記の画像提供に感謝申し上げます。

もっと知りたい人のためのオススメ本

鈴木廣司『食虫植物 -不思議な生態と品種の美しさ 栽培の基本がわかる入門ガイド-』(笠倉出版社,2021)

How to cultivate carnivorous plants
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