「鳴き砂」で有名な琴引浜(京都府京丹後市)。Photo: Katsuaki Watanabe

元になった岩石の種類で色が決まる

砂浜の色といえば、多くの人が白かベージュを思い浮かべると思います。海水浴に行った真夏のビーチも、白砂青松(はくしゃせいしょう)の観光地も、だいたい似たような白っぽい色ですね。

あるいは、黒や灰色の砂浜を思い浮かべる人もいるかもしれません。サーフィンで有名な神奈川県の湘南海岸は、黒っぽい色をしています。

このように砂浜の色が白か黒、あるいはその中間の灰色をしているのは、砂の元になっている岩石の色が概ね白と黒の2種類だからです。岩石名で言えば、白が花崗岩、黒が玄武岩。どちらもマグマが冷え固まってできた岩石で、地球の表面近くで最も多く見られるありふれた岩石です。

白い砂浜の元になっている花崗岩は、全体的に白っぽい岩石ですが、ごま塩のように黒いつぶつぶも含んでいます。白い部分は石英および長石という鉱物で、黒いつぶつぶは黒雲母など。この花崗岩が風化作用によって細かく砕け、川の流れによって海まで運ばれ、そこで集積して白い砂浜になるわけです。

黒雲母や長石は風化作用で無くなりやすい

日本の白い砂浜の例。京都府琴引浜。砂の供給源はおもに花崗岩。Photo: Katsuaki Watanabe

 

さて、ごま塩のような白黒の花崗岩が白い砂浜になると聞いて、一つ疑問が浮かびます。それは、「黒いつぶつぶはどこに行ったのか」ということ。白黒の花崗岩がそのまま砂になれば、砂も白黒になるはずですよね。でも実際には、白かベージュ。

黒いつぶつぶである黒雲母などの鉱物は、実は風化作用を受けやすく、白い鉱物よりも先に溶けてなくなってしまうのです。もう少し正確に言えば、水と反応することで粘土鉱物に変化したり、水に溶けたりする。ですので、川の流れに乗って海まで運ばれる頃には、ほとんどの黒いつぶつぶは無くなってしまいます。

このような風化作用の受けやすさの違いは、白い鉱物どうし、すなわち石英と長石の間にも見られます。石英と長石を比べた場合、長石の方が風化作用を受けやすく、黒雲母ほどではありませんが、どちらかと言うと長石も溶けて無くなりやすい鉱物なのです。そのため、風化作用が進めば進むほど、花崗岩からできた砂の中には石英が多く残ることになります。

石英は透明感のあるガラスのような鉱物ですが、長石は不透明。その上、長石の白色はベージュに近い場合も多く、白色の度合いとしては石英に劣ります。ですので、風化作用が進んでほとんど石英ばかりになった砂浜はとても白く、一方、長石がまだたくさん残っている砂浜はベージュの砂浜になります。

また、ベージュの砂浜については、ほのかに鉄さび色が混じっていることもあります。黒雲母に含まれる鉄成分が風化作用によって水に溶け出し、長石など他の鉱物粒子の表面に赤茶色の鉄さびを付着させるからです。

ただし、この鉄さびは肉眼で見えるようなはっきりとしたものではなく、非常に細かくて、うっすらと表面にくっついているような状態。これによって白い砂つぶがほんのりと赤茶色に色づいて、肉眼で見るとベージュになるというわけです。

白やベージュの砂浜は、このようにして花崗岩という白っぽい岩石が元になって作られています。

同じ白でも沖縄の砂浜はちょっと違う

沖縄の白い砂浜の例。おもにサンゴや貝殻のかけらでできている。Photo: Akame / flickr (CC BY 2.0)

 

ところで、白い砂浜にはもう一つ、サンゴや貝殻が元になってできるものもあります。代表的なのは沖縄の砂浜。

沖縄には「琉球石灰岩」と呼ばれる白い岩石が広く分布しているのですが、琉球石灰岩というのは、細かく砕けたサンゴのかけら(骨格)がサンゴ礁の周囲に集積し、長い年月の間に固まってできたものです。沖縄の砂浜には、花崗岩やそのほかの岩石ではなく、この琉球石灰岩が細かく砕けた砂が集積しています。つまり、元を辿ればサンゴということ。

また琉球石灰岩に姿を変えた「元サンゴ」だけでなく、現在進行形で集積しているサンゴのかけらも砂浜には多く含まれていますし、サンゴと一緒に貝殻のかけらも混じっています。さらに、「星の砂」として知られるトゲトゲの形状をしたベージュ色の砂つぶは、有孔虫という微生物の殻でできています。

いろんな種類を挙げましたが、成分は全て炭酸カルシウムという同じ物質。これらが沖縄の白い砂浜を形作っているわけですね。

黒い砂浜の元は溶岩

日本の黒い砂浜の例。神奈川県湘南海岸(稲村ヶ崎付近)。砂の供給源はおもに玄武岩。Photo: Katsuaki Watanabe

 

さて、続いて黒い砂浜の起源についても見てみましょう。冒頭で少しだけ出てきましたが、黒や灰色の砂浜は玄武岩という黒い岩石が元になってできています。玄武岩というのは、ハワイやアイスランドのような火山島でよく見られる黒い溶岩。日本では伊豆大島の火山が典型的ですが、実は日本最高峰の富士山も玄武岩でできた火山です。

同じ玄武岩でも、ハワイの火山は流れ出た溶岩によってできた山であるのに対し、富士山は、流れ出た溶岩と勢いよく飛び散った噴石が交互に積み重なってできた山。そのため、見た目が大きく異なり、富士山はご存知の通り高くそびえる姿になりました。

富士山が玄武岩でできた山ということで、この辺りから流れ降った砂が集積する海岸には、黒っぽい砂浜が広がります。湘南海岸の黒い砂浜も、まさにそのようにしてできました。

また、玄武岩とよく似た岩石で、安山岩という黒〜灰色の岩石もあります。安山岩は日本の火山で多くみられる溶岩なので、こちらも黒っぽい砂浜の元になっていることがあります。

そして、場所によっては花崗岩の砂つぶと玄武岩・安山岩の砂つぶが混ざることになりますので、そういった場所では灰色の海岸ができあがります。こうして砂浜の色は、基本的にはどこも白か黒、あるいは灰色になってしまうというわけです。

とは言うものの、砂浜は決してモノクロの世界ではありません。確かに大まかに言えば白か黒ですが、よく見ると砂の色合いは非常に変化に富んでいて、場所が変われば同じ色合いは2つとないのです。中には黄色、オレンジ、赤、暗い青などカラフルな砂つぶが混じっていることも。

砂浜にお出かけの際は、ぜひ手ですくって、砂つぶ一つ一つをじっくりと眺めてみてください。白い砂浜でも黒い砂浜でも、きっといろんな色の砂つぶが見つかるはずです。

京都府琴引浜の砂のクローズアップ写真。Photo: Katsuaki Watanabe

参考文献

Slow Surf Style『砂浜の色に違いがあるのはなぜ?白・黒の理由や世界の珍しい砂浜も

地層科学研究所『やわらかサイエンス 砂もいろいろ(前編)

京都青少年科学センター『砂浜の色,いろいろ!?

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』(ベレ出版,2022)

書影『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』渡邉克晃(2022年11月18日刊行)
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※この記事の内容を含め、身近な地質学の話題がたくさん紹介されています。

砂浜の色が白か黒である理由(渡邉克晃『身のまわりのあんなことこんなことを地質学的に考えてみた』より)