ヒエラポリス-パムッカレの石灰華段丘(トルコ)
©︎Antoine Taveneaux / Wikipedia

純白に輝くローマ時代の温泉保養地

西日に照らされて輝く真っ白な斜面に、青く澄んだ階段状のプール。

トルコ共和国西部に位置するパムッカレ丘陵地は、斜面を流れる温泉水から炭酸カルシウムが沈殿してできた、見事な石灰華段丘です。

 

パムッカレの丘の一番上にはローマ時代の遺跡都市、ヒエラポリスがあり、紀元前2世紀ごろから紀元3世紀ごろまで、温泉保養地として賑わっていたそうです。

「ヒエラポリス」という都市の名前も「聖なる都市」という意味で、パムッカレの温泉が病の治療に利用されていたことが、命名の一つの理由になっているのだとか。

 

ちなみに、雪のように真っ白な姿が印象的な「パムッカレ」は、トルコ語で「綿(わた)の宮殿」という意味だそうです。

硬い石灰華の質感とフワフワとした綿の質感が似ていなくて、ちょっと意外な名前ですが、この辺りは昔から綿花の一大生産地だったとのことで、こちらも納得。

 

さて、パムッカレの石灰華段丘は、ヒエラポリスの南西側の斜面に広がっています。

ヒエラポリスの遺跡があるのは、標高360メートルから400メートルほどの台地(テーブルのように平らになっている高地)の上。

そして、台地の南西側には平野があって、台地と平野の間に標高差100メートルほどの崖ができているのですが、その斜面にパムッカレの石灰華段丘が形成されているのです。

 

つまり、台地から流れ下る温泉水が、平野まで続く斜面に炭酸カルシウムを沈殿させているというわけですね。

石灰華段丘の大きさは、斜面方向に60メートルから70メートル、幅が24メートルから30メートルほど。

そして、17か所の泉から35度程度の温水が湧き出しています。

石灰岩地帯の地下水から炭酸ガスが抜けると石灰華が沈殿する

ヒエラポリス-パムッカレ(トルコの石灰華段丘)
パムッカレの石灰華段丘(©️LoggaWiggler / Pixabay

 

パムッカレのような石灰華段丘は、「トラバーチン・テラス」と呼ばれます。

石灰華のうち、特に温泉(マグマで熱せられた地下水)によって形成される炭酸カルシウムの岩石を、「トラバーチン」と呼ぶためです。

テラスというのは、段々畑(棚田)のような地形のことですね。

 

これに対し、地上から染み込んだ雨水(冷たい地下水)によって形成される石灰華には、鍾乳石やトゥファ(穴ぼこの多いやわらかな炭酸カルシウム)などがあります。

温泉にできるものか、そうでないかで区別されているわけですね。

 

さて、これらに共通して言えることは、何でしょうか。

 

それは、石灰岩地帯にできる岩石だということ。

パムッカレは、石灰岩台地の斜面にできていますよね。

トラバーチン・テラスも、鍾乳洞も、トゥファも、全て石灰岩地帯に見られる地形、あるいは岩石なのです。

 

パムッカレを例に、ここではトラバーチン・テラスのでき方を見ていきたいと思います。

ヒエラポリスのある石灰岩の台地に降った雨は、石灰岩の地層を通って地下に染み込み、地下の深いところでマグマの熱によって加熱され、高温の地下水となって再び地上に噴き出します。

 

その際、石灰岩の地層に染み込んだ雨水は、石灰岩の主成分である炭酸カルシウムをたくさん溶かし込みます。

そして、ヒエラポリスのあちこちで湧き出た地下水は、台地の斜面を流れ下りながら、溶かし込んでいた炭酸カルシウムを沈殿させていきました。

 

地下水に溶けていた炭酸カルシウムは、地下水から炭酸ガス(二酸化炭素)が抜けることで沈殿します。

そして、なぜ地上に湧き出たときに炭酸ガスが抜けるかというと、大気中の二酸化炭素濃度が、地下水の二酸化炭素濃度よりも随分と低いからです。

そのため、二酸化炭素は濃度の高いところから低いところへ、つまり、地下水中から大気中へと移動するのです。

 

このような沈殿メカニズムは、温泉でないところにできる石灰華でも基本的には同じです。

ただし、水温、地下水の成分、炭酸カルシウムの濃度、シアノバクテリアの生育、地形などによって、成長速度や岩石の様子(穴ぼこが多いか、緻密か、など)は異なってきます。

 

また、パムッカレの階段状の構造については、流れて来た木の枝や葉などが斜面に引っかかり、そこに炭酸カルシウムが沈殿することで「縁(へり)」の部分が形成されていきました。

炭酸水の温泉は血流と体温上昇に効く

ローマ時代から温泉療法に利用されてきたパムッカレ。

トルコ大使館の紹介によると、パムッカレの温泉水は、実に多様な心身の不調に治療効果が認められるということです。

例えば、心臓病、血管の病気、高血圧、神経性の頭痛や腹痛、リウマチ、眼や皮膚の病気、神経や肉体の疲労、消化器の病気、栄養の吸収不良など。

 

パムッカレの温泉水は炭酸水で、「炭酸泉」と呼ばれる温泉なのですが、炭酸泉であることが効用の高さの一つの理由だと考えられます。

炭酸飲料のようにシュワシュワしていて、体を浸すと白い気泡がびっしりとつくような、そんな温泉。

 

炭酸泉には、血流を良くする効果と、体温を適度に上げる効果という、2つの医学的効果が知られています。

血流と体温上昇は健康増進の重要なポイントですので、そこから芋づる式に、様々な症状が改善していくのでしょう。

温泉療法は「民間療法」というイメージが強いですが、経験的に様々な効果があることがわかっているようです。

 

なお、「とにかく温泉に入れば健康にいい」という意味ではないので、注意が必要です。

入浴による国内の死亡者数は年間1万人以上で、その90パーセント近くが41度以上の高温浴とのこと。

温泉療法を利用する際は、38度から40度程度の熱すぎない温度で、ゆっくりと浸かることが大切です。

参考文献

場所の情報