カルメ焼きとは、煮詰めた砂糖水に重曹を加えて膨らませ、そのまま固めたお菓子です。
中学校2年生の理科の教科書につくり方が載っていて、「カルメ焼きづくり」は授業でもしばしば取り上げられる実験です。
そして、材料も簡単に手に入り、作り方もシンプルなので、ご家庭でも子どもがやってみたい実験の一つなのではないかと思います。
家庭用ガスコンロとおたまを使えば、いつでもどこでも、簡単にチャレンジできそうですよね。
そんなカルメ焼きですが、意外と失敗も多いんです。
焦げる、固まらない、などなど……。
カルメ焼きのでき具合は、①水の量、②砂糖の量、③重曹の量、④砂糖水を煮詰める時間、などで決まってきます。
早速、順番に見ていきたいと思います。
▼▼▼参考動画▼▼▼
基本の作り方
1.計量した水と砂糖(上白糖)をおたま(料理用のお玉杓子)に一緒に入れてかき混ぜます。
砂糖がおたまに焦げ付いてしまうので、上の写真ではアルミホイルを巻いて保護していますが、なくても大丈夫です(下の写真では巻いていません)。
おたまをそのまま使った場合は、熱湯に浸けると砂糖の焦げ付きがきれいに落ちます。
2.火をつけたガスコンロ(カセットコンロ)の上で砂糖水を温めます。
3.煮詰まってきたら重曹を加えます。
4.少し膨らんだら素早くガスコンロから降ろして80回ほど割りばしでかき混ぜます。
5.膨らんで固まったら完成です。
失敗例と成功例
失敗例1:水が多いと固まらない
一番多い失敗が、水が多すぎてうまく固まらない、というケースです。
例えば次の条件でカルメ焼きをつくろうとしましたが、全然固まりませんでした。
- 水の量:20 g
- 砂糖の量:20 g
- 重曹の量:1 g
- 砂糖水を煮詰める時間:3分52秒
水と砂糖の量比が1:1だと、水が多すぎるようです。
砂糖水を十分に煮立ててから重曹を入れてかき混ぜたのですが、勢いよく発泡した後にすぐに萎んでしまい、固まらず液体状になりました。
失敗例2:水を減らしても、砂糖水を煮詰める時間が短いとやはり固まらない
水と砂糖の量比は1:2くらいがいいようです。
水を少なめにするのがコツです。
しかし、砂糖水を煮詰める時間も大切です。
次の条件だと、やはり固まりませんでした。
- 水の量:10 g
- 砂糖の量:20 g
- 重曹の量:1 g
- 砂糖水を煮詰める時間:2分45秒
火加減にもよると思うので、煮詰める時間はやりながら調整することになります。
成功例:水を少なめにし、十分に煮詰めてから重曹を加えると固まる
水と砂糖の量比は1:2くらい、煮詰める時間を10分程度にすると、うまく固まりました。
ガスコンロの火は弱火です。
- 水の量:10 g
- 砂糖の量:20 g
- 重曹の量:1 g
- 砂糖水を煮詰める時間:9分50秒
少し焦げてしまいましたが、しっかり固まってカルメ焼きができました。
考察あれこれ
固まらない原因と対策
いくつかの条件でカルメ焼きをつくってみたところ、カルメ焼きが固まらない原因としては、次の2つが考えられます。
- 砂糖に対して水が多すぎる
- 煮詰める時間が短い
水と砂糖の割合は、だいたい1:2がやりやすかったです。
あまり砂糖が多すぎると、今度は焦げやすくなります。
水:砂糖=1:2くらいだと、砂糖はすべて水に溶けて、さらっとした透明な砂糖水になります。
そして、「ちょっと水が多いかな」という感じで煮詰め始めるのですが、煮詰めている間に水がどんどん減っていき、それとともに砂糖水の色が透明から薄い黄色に変化していきます(きつね色まで行くとちょっと苦くなりますが、それもまた美味しいです)。
私が実験した時はだいたい10分くらいでこのような変化が見られましたが、煮詰める時間は火の強さにもよりますので調整が必要です。
色の変化が見られたら、あらかじめ計量しておいた重曹を加えて火から降ろし、割り箸などで80回程度かき混ぜます。
どんどん膨らんできますので、あとは触らず待つだけで完成です。
重曹の加え方にひと工夫
重曹の加え方として、少量の卵白でこねた重曹ペースト(大豆サイズくらい)を割り箸の先につけて、火から降ろした砂糖水をその割り箸でかき混ぜる、という方法もあります。
この方法だと、卵白を準備する手間はかかりますが、作業はかなりやりやすくなります。
上記の方法でうまくいかない場合はお試しください。
カルメ焼きが膨らむしくみ
化学実験らしく、カルメ焼きが膨らむしくみを化学的な視点から考えてみたいと思います。
カルメ焼きが膨らむのは、砂糖水に加えた重曹から気体が発生するためです。
重曹(NaHCO3)を加熱すると、次のような反応で二酸化炭素(CO2)を発生します。
2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O
この反応で、重曹1gから何Lの二酸化炭素が発生するかを求めたいと思います。
まず、NaHCO3 1 molは84.008 gなので、NaHCO3 1 gは1 / 84.008 mol = 0.0119 molになります。
上記の化学反応式より2 molのNaHCO3から1 molのCO2が発生するので、0.0119 molのNaHCO3からCO2は0.0119 / 2 mol = 0.00595 mol発生します。
1気圧25 ℃の標準状態では、1 molの理想気体の体積は24.8 Lです。
なので、もし25 ℃だとすると、重曹1 gから24.8 × 0.00595 = 0.147… = 約0.15 Lの二酸化炭素が発生します。
実際の温度は加熱によってもっと高くなっているので、二酸化炭素の体積も大きくなります。
おたま一つ分のカルメ焼きを膨らませるには、重曹1 gで十分な量の二酸化炭素が発生することがわかります。
加熱温度の目安になる色の変化
上白糖の場合、砂糖水の色の変化でだいたいの温度がわかります。
今回の実験では、煮詰めた後の砂糖水の色は薄い黄色でした。
独立行政法人農畜産業振興機構の資料(参考文献の欄にURLを記載)によると、砂糖水が薄い黄色に色づくのは145〜165 ℃くらいです。
水を沸騰させた時よりも高いですね。
煮詰める時間が長くなると、さらに温度が上がっていきます。
実験中に直接温度を計れなくても、このように色の変化からだいたいの温度がわかりますので、温度に興味のある方は参考にしてください。
参考文献
- 東京書籍『新しい科学 2年』
- 独立行政法人農畜産業振興機構『砂糖の知識 食育のためのお砂糖テキスト』https://sugar.alic.go.jp/sugarknowledge/