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はじめに

中高生の皆さん、はじめまして。

私は都内の中高一貫校で地学と生物学の教師をしています。

この記事では、皆さんにぜひおすすめしたい科学の本を紹介したいと思います。

 

でもその前に、読書の重要性について少しお話しさせてください。

読書でこんないいことが

中学生や高校生のうちから読書をすることは、皆さんの学力を飛躍的に伸ばす有効な方法の一つです。

読書の恩恵は実に様々な面に及びます。

  1. 良質な知識を豊富に身につけられる。
  2. 読解力(文字情報の理解力)が伸びる。
  3. 文章力(文字による表現力)が伸びる。
  4. 良質な知識を素材にした、論理的かつ多面的な深い思考が身につく。

 

そして、特に科学(理科)の分野において、読書の必要性はとても大きいと思っています。

それは、上記の4つの特徴のうちの1と4が、科学の学びにとって必要不可欠であるからです。

知識の大切さ

最近の学校の教育では、科学的思考や論理的思考といった「考えるプロセス」を強調するあまり、科学的事実の集積である「良質で豊富な知識」というものが軽視されるようになってきました。

10〜20年くらい前までは、科学(物理学以外)は「とにかく暗記」という科目だったので、その反動で「知識偏重型の暗記教育はやめましょう」と言われるようになったのです。

 

しかし、科学的思考も論理的思考も、考える材料がなければ浅くて根拠のない思考で終わってしまうのです。

そんな思考からは、知的で刺激的な学問の魅力は到底感じられません。

皆さんにとって、知識(科学的事実)を身につけることはとても重要で、役に立つことなのです。

学校の先生はなぜ賢そうに見えるのか?

学校で授業を受けていて、「やっぱり先生は賢いな」と思うことがあるでしょうか。

自分と先生とを比べて、先生の方が賢いなと。

私の勤務校でも、幸い生徒たちは先生をそのように見てくれています。

でも、そんな先生と皆さんと何が違うのか考えてみたことがあるでしょうか。

 

先生は思考力が優れているのでしょうか。

いえ、残念ながら、思考力は人によって様々です。

先生が優れていて中高生が劣っている、というわけではありません。

 

皆さんの方が新鮮でユニークなアイデアを思いつくことはいくらでもあります。

あるいは、校則などの矛盾点を突かれて先生が言い負かされることだってあります。

将棋が強い生徒もいることでしょう。

 

では何が違うのか?

それはただ、知っているか知らないかの違いだけなのです。

 

先生は多くの知識を持っています。

経験も豊富です。

だから生徒よりも賢く見えるのです。

 

皆さんが「良質で豊富な知識」を身につけるならば、簡単に大人を追い越してしまいます。

勉強を怠っている先生はすぐに追い越されます。

それくらい、知識は大事なのです。

 

そして、知識を身につけるのに最適なのが、読書なのです。

 

この記事で紹介するのは「良質な本」です。

良質な知識を得るには、情報源が良質でなければならないからです。

この記事の図書リストをぜひ皆さんの読書に役立ててください。

 

その他、効果的な読書の方法については、こちらの記事も参考になります。

 

なお、科学の本にとっての「良質」とは、「科学的事実が丁寧に扱われていること」と「分かりやすいこと」の2点を意味します。

どの本も専門家によって書かれたものですが、平易な文章なので読みやすいです。

中高生が読んでも大人が読んでも面白いです。

おすすめの科学の本

地学(地球科学)

著者名の50音順で並べてあります。

もしも月がなかったら

N・F・カミンズ『もしも月がなかったら』(東京書籍,1999)
N・F・カミンズ『もしも月がなかったら』(東京書籍,1999)

もしも地球に月がなかったら、どんなことが起こるでしょうか。

天文学・物理学教授の著者が、月のない世界を科学的根拠に基づいて推測します。

果たして人は住めるのでしょうか。

「もし……だったら」と考えることで、SF映画の世界を体験するように楽しみながら、月が果たしているとても重要な役割を知ることができます。

地球の掟

A・ゴア『地球の掟〔新装版〕』(ダイヤモンド社,2007)
A・ゴア『地球の掟〔新装版〕』(ダイヤモンド社,2007)

元アメリカ合衆国副大統領アル・ゴア氏による地球温暖化問題を取り上げた著作です。

理論的な考察よりも現実に起こっている現象に重点を置いて、近代文明の未来に警鐘を鳴らしています。

ゴア氏はこの本の出版を含む一連のキャンペーン活動を通して地球温暖化問題の世界的な啓蒙に貢献し、ノーベル平和賞を受賞しました。

また、同様の内容を扱ったゴア氏監修のドキュメンタリー映画『不都合な真実』も有名です。

宇宙フラクタル構造の謎

竹内薫『宇宙フラクタル構造の謎』(徳間書店,1994)
竹内薫『宇宙フラクタル構造の謎』(徳間書店,1994)

宇宙論と素粒子論の最新のテーマを扱う内容ですが、とても分かりやすく書かれています。

難解な理論を分かりやすく説明するのは、本質を理解している専門家にしかできません。

貴重な一冊です。

本書の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

地球の論点:現実的な環境主義者のマニフェスト

S・ブランド『地球の論点』(英治出版,2011)
S・ブランド『地球の論点』(英治出版,2011)

原題は『Whole Earth Discipline』です。

著者のスチュアート・ブランドは、米国Apple社の創業者スティーブ・ジョブズに多くのインスピレーションを与えたとされる有名な雑誌『Whole Earth Catalog』の発行人です。

原子力の是非から人類の未来まで、広範な環境問題が長大な時間・空間スケールで論じられています。

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで

S・W・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る』(ハヤカワ文庫NF,1995)
S・W・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る』(ハヤカワ文庫NF,1995)

車椅子の天才科学者、ホーキング博士による宇宙論の入門書です。

難しい理論も分かりやすく説明されています。

ドキュメント御嶽山大噴火

山と溪谷社『ドキュメント御嶽山大噴火』(ヤマケイ新書,2014)
山と溪谷社『ドキュメント御嶽山大噴火』(ヤマケイ新書,2014)

2014年9月27日に発生した御嶽山の噴火は、登山者ら58名の死亡者を出す戦後最悪の火山災害となりました。

噴火の現場で何が起こっていたのか、また、噴火とはどういう現象なのか、被災者の体験や専門家の調査結果が克明に綴られた貴重なドキュメントです。

生物学

著者名の50音順で並べてあります。

進化しすぎた脳

池谷裕二『進化しすぎた脳』(講談社BLUE BACKS,2007)
池谷裕二『進化しすぎた脳』(講談社BLUE BACKS,2007)

現役の脳科学者が脳科学の最前線を中高生に向けて語った特別講義の記録です。

人間は、ほかの動物と比べて著しく脳を進化させることができた動物だと考えられていますが、「それにしても人の脳は進化しすぎている」というのが著者の見解です。

環境に適応する形で脳が進化したという理論では説明できないくらい、人の脳はハイスペックで、むしろ人の体(脳に比べてかなり不自由な体)が脳の機能を制限してしまっているというのです。

生命は本当に不思議ですね。

単純な脳、複雑な「私」

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』(講談社BLUE BACKS,2013)
池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』(講談社BLUE BACKS,2013)

『進化しすぎた脳』の続編です。

続けて脳科学の最前線が語られるのですが、そもそも脳のことを脳で考えるというのは、どこまで可能なんでしょうか。

脳を理解しようとして頑張っている存在は、脳そのものなのです。

そしてその脳が、「私」そのものだとも言えるのです。

「私」とは一体どんな存在なんでしょうか。

脳の仕組みを考えながらこの問いに迫ります。

種の起源(上・下)

C・ダーウィン『種の起源(上)』(光文社古典新訳文庫,2009年)
C・ダーウィン『種の起源(上)』(光文社古典新訳文庫,2009年)
C・ダーウィン『種の起源(下)』(光文社古典新訳文庫,2009年)
C・ダーウィン『種の起源(下)』(光文社古典新訳文庫,2009年)

「進化論」を有名にした、かのチャールズ・ダーウィンの代表作です。

ダーウィンが生きた時代は、今とは逆にキリスト教の世界観が主流の時代でした。

つまり、「進化論」はキリスト教信仰に反する考えとして否定され、「すべての生き物は神の手によって作られた」という考えがごく普通に受け入れられていた時代です。

 

『種の起源』は、あらゆる反論にさらされながらも進化論を提唱し、激しい議論に耐えうるだけの科学的証拠を積み上げたダーウィンの大著です。

進化を唱えることが神への冒涜として非難された時代だからこそ、極めて慎重に議論が展開されており、著者の見識の深さと幅広さに自然と敬意を抱くようになります。

 

進化が科学的に正しいかどうかは、たくさん議論の余地があると思います。

むしろ、最近の研究結果は進化を否定する報告が多いです。

しかし、歴史的な人類の歩みとして、「進化論」を正しく理解することは有益です。

『種の起源』で、「進化論」の見方が変わるのではないでしょうか。

生命の始まりを探して僕は生物学者になった

長沼毅『生命の始まりを探して僕は生物学者になった』(河出書房新社,2016)
長沼毅『生命の始まりを探して僕は生物学者になった』(河出書房新社,2016)

広島大学生物圏科学研究科教授による中高生向けの著書です。

深海、砂漠、南極・北極など、体当たりで生命のフロンティアを冒険するエネルギッシュな一冊です。

著者が宇宙飛行士試験に応募した時のエピソードも面白いです。

生物と無生物のあいだ

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書,2007)
福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書,2007)

私たちは普段、生物と生物でないものとを無意識のうちに何となく判断しています。

そして、何となく判断しているのに、そこには確信があります。

「生物と無生物とは、はっきり分けられるものだ」という確信です。

しかし、分子生物学の観点から眺めてみると、生物と無生物とを分けることは意外にも困難なことだと気づかされます。

 

第29回(2007年)のサントリー学芸賞にも選ばれた、文学作品としても評価の高い科学ミステリーです。

世界は分けてもわからない

福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書,2009)
福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書,2009)

上記『生物と無生物のあいだ』の続編です。

ある研究所で起こったミステリー(殺人とかではありませんが……)を追いかけながら、分子生物学の最前線へと読者を導きます。

 

科学者は対象物を細分して理解しようとしてきました。

ミクロな生物学がその典型です。

しかし、全体として存在しているものを細分したところで、本質を見出すことはできないのではないか。特に生命を考えるとき、科学者はそのジレンマと向き合うことになります。

動的平衡:生命はなぜそこに宿るのか

福岡伸一『新版 動的平衡:生命はなぜそこに宿るのか』(小学館新書,2017)
福岡伸一『新版 動的平衡:生命はなぜそこに宿るのか』(小学館新書,2017)

『生物と無生物のあいだ』の著者が、最新の科学的知見をもとに生命現象を解き明かします。

タイトルの「動的平衡」は、聞き慣れない言葉ですよね。

簡単に言うと、私たち生物の「見た目」はだいたいいつも一定に保たれているのですが、「生物を構成する分子」は毎日毎日入れ替わっている、という意味です。

すごいですね。

 

分子レベルで見ると、生物は絶え間ない流れの中で形状を保ちながら、その中に命を宿し、考えたり愛したりする存在になっているのです。

タンパク質というただの物質の組み合わせが、そのような命を生み出しているのです。

本当に不思議で、神秘的な話です。

二重らせん

J・D・ワトソン『二重らせん』(講談社ブルーバックス,2012)
J・D・ワトソン『二重らせん』(講談社ブルーバックス,2012)

DNAの二重らせん構造を発見した研究者たちのドラマです。

ロンドン大学の研究チームとケンブリッジ大学の研究チームのどちらが先に発見するか、互いの研究を意識しながらの息をのむようなスリリングな展開です。

結局ノーベル賞を受賞したのはケンブリッジ大学のワトソンとクリック、ロンドン大学のウィルキンスの3人でしたが、その陰にはX線構造解析で二重らせん構造の決定に重大な貢献をした女性研究者、フランクリン(ロンドン大学)の存在がありました。

 

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