ケープタウンのテーブルマウンテン
©️martinaH79 / Pixabay

水平な砂岩の地層でできたケープタウンのシンボル

南アフリカ共和国第2の都市ケープタウンの南側には、水平な頂上部と切り立った崖を持つ街のシンボル、テーブルマウンテンがそびえています。

ケープタウンはケープ半島の北の端(半島の付け根の辺り)にある海に面した街で、西側には大西洋が広がっています。

ケープタウンの港とテーブルマウンテン(南アフリカ共和国)
ケープタウンの港とテーブルマウンテン(©️Jean van der Meulen / Pixabay

 

テーブルマウンテンの平らな頂上部は、東西方向に約3キロメートル。

この水平な地層を作っている岩石は、およそ5億1000万年から4億5000万年ほど前の砂岩で、山の頂上から下に、600メートルから700メートルほどがこの砂岩でできています。

テーブルマウンテンの標高は1086メートルですので、山の大部分がこの地層でできているわけですね。

 

テーブルマウンテンの一帯は多様な動植物の宝庫として知られ、70パーセント以上の植物がここでしか見られない固有種だということです。

 

地理的な特色としては、なんと言ってもここがアフリカ大陸の南端に位置しているということ。

ケープタウンから南に50キロメートルほど伸びるケープ半島の先端には、ポルトガル人航海者バスコ=ダ=ガマがインド航路を開いたことで有名な「希望峰」があります。

 

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硬いケイ素質の砂岩がテーブルを作った

テーブルマウンテンの独特な形は、山の大部分を作る硬い砂岩が、激しい雨風による侵食から取り残されることで生まれました。

この辺りの地層について順番に見ていきながら、テーブルマウンテンの形成過程を探ってみたいと思います。

 

まず、5億年ほど前にできた一番上の砂岩は、「石英」という二酸化ケイ素の鉱物を多く含む、白っぽい色(明るい灰色)の地層です。

石英というのは、宝石の名前で知られる「水晶」の別名。

透明度の高い大きな結晶の石英のことを、一般に水晶と呼んでいるわけですが、石英は非常に硬度の高い鉱物(鉄に匹敵するほど)で、かつ侵食にも強いという特性があります。

 

そんな硬い石英でできた砂岩が、テーブルマウンテンの一番上に乗っているというわけですね。

ですので、この部分はとても侵食に強かった。

 

そして、この辺り一帯は砂岩の地層がちょうど水平になっているので、地層の面がそのまま露出して、テーブルのように平らな頂上になりました。

この平らな面の上にも、かつては氷河に由来する砂や礫(れき)の地層が乗っていましたが、こちらは砂岩ほど硬くなかったため長い歴史の中で侵食されてしまい、今はなくなっています。

 

下の衛星画像は、ケープタウンの南西の上空から見たテーブルマウンテンの姿です。

画像の右下がテーブルマウンテンで、平らな頂上部分の様子が良くわかりますね。

南アフリカのテーブルマウンテン(上空450kmから撮影した衛星写真)
テーブルマウンテンの衛星画像(©2018 Planet Labs, Inc. cc-by-sa 4.0.)

砂岩の下には侵食されやすい地層

先ほどの硬い砂岩の下には、比較的やわらかい「頁岩(けつがん)」の地層があります。

厚さは25メートルから65メートルほど。

 

頁岩の「頁」という字は、本の「ページ」を意味しますよね。

その名の通り、本のページのようにペラペラと剥がれやすい岩石で、成分としては泥や粘土でできています。

 

この部分が侵食に弱いため、砂岩より早く侵食されていき、その結果、上に乗っている砂岩は土台を失ってしまって崩壊する。

そのようにして、テーブルマウンテンの切り立つ崖が形成されていきました。

硬い地層の下が優先的に侵食されてできるこのような地形を、「メサ地形」と呼んでいます。

 

最後は、一番下の地層。

砂岩や頁岩の下には、5億4000万年以上前の変成岩と花崗岩があります。

 

変成岩の方は、砂の層と泥の層が交互に重なったシマシマの岩石で、お隣の花崗岩から受けた高温の熱で変成(性質が変わること)し、硬い岩石になりました。

フィライト(千枚岩)あるいはホルンフェルスと呼ばれる種類の変成岩です。

 

花崗岩は、マグマが冷えて固まった岩石ですね。

石英、長石、黒雲母などの鉱物でできていますが、ここの花崗岩は鉱物の粒が大きいのが特徴です。

この地層も硬い。

 

つまり、上から順に硬い砂岩、侵食されやすい頁岩があり、そのさらに下に、硬い変成岩と花崗岩があるというわけです。

しっかりとした硬い岩盤の上に、侵食から取り残された台形型の砂岩のブロックが残っているという、そんなイメージですね。

4億年以上前の岩石でできた世界で最も古い山の一つ

ここまで各地層の特徴や形成年代を見てきましたが、テーブルマウンテンの砂岩は約5億年も前のものでしたね。

地質時代の区分で言うと、古生代のカンブリア紀からオルドビス紀にかけての時代になりますが、まだ生物が陸上に進出していなかったころです。

 

海には節足動物の三葉虫や軟体動物のオウムガイが繁栄し、酸素濃度が現在の10分の1程度にまで増えて、ようやくオゾン層が形成されて行った時代。

植物や動物の「陸上進出前夜」と言ったところです。

大陸の場所も今とは全然異なる位置にあり、テーブルマウンテンの辺りはゴンドワナ大陸という大きな大陸の一部として、南極付近にあったと考えられています。

 

テーブルマウンテンを構成する砂岩が、どれほど大昔に形成された岩石であるか、イメージが湧いてきたでしょうか。

構成される岩石の古さから、ケープタウンのシンボルであるテーブルマウンテンは、「世界で最も古い山の一つ」と言われています。

参考文献

場所の情報

もっと知りたい人のためのオススメ本

渡邉克晃『美しすぎる地学事典』(秀和システム,2020)

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