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地球は24時間365日、いつもクルクル回っています。

「地球の自転」と呼ばれるこの回転は、46億年前に地球が生まれた時からずっと続いていて、一度も止まったことがありません。

もしもある日突然、この回転が止まってしまったら、地球はどうなってしまうのでしょうか。

 

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① 24時間太陽が沈まず、野菜も果物もよく育つ

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もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

まず1番目は、「24時間太陽が沈まず、野菜も果物もよく育つ」です。

 

私たちが毎日のように昼と夜をくり返すのは、地球が24時間で1回自転しているからですね。

太陽側に向いた半分の地域が昼に当たるわけですが、昼間だった地域もおよそ12時間後には夜になる。

 

ところが、地球の自転が止まると、その瞬間に昼間だった地域では太陽が沈まなくなります。

12時間経っても昼のままなのです。

 

ではどれくらい昼間が続くようになるかというと、最大でおよそ6か月。

地球は太陽の周りを1年で一周していますので(これを「公転」と言います)、自転が止まったとしても、1年に一回は昼と夜が入れ替わりますね。

 

言ってみれば、1日が24時間から365日に増えるということ。

365日は8760時間ですから、これは相当な長さです。

 

さて、太陽がなかなか沈まず、昼間がずっと続くと、どんな良いことがあるでしょうか。

植物にとっては太陽に照らされている時間が長くなるわけですから、光合成もたっぷりできてよく育つでしょう。

 

しかも気温も上がりますので、これまで寒くて植物が育ちにくかった地域でも、草木が生い茂るようになります。

森林の面積が増えるわけですね。

 

もちろん農業ができる地域も広がりますので、野菜や果物の収穫量が世界的に多くなることでしょう。

人口増加に伴う食糧不足の問題も、これでひと安心。

地球の自転が止まるのも、そんなに悪いことではなさそうに思えますね。

 

でも、喜んでいられるのは最初のうちだけ。

しばらくすると大変なことになるのです。

② 昼が続くと灼熱に、夜が続くと極寒になる

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もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

2番目は、「昼が続くと灼熱に、夜が続くと極寒になる」です。

 

地球の自転がなくなると昼間が最大で6か月も続くわけですが、こんなに長く昼間が続くと気温が上がり過ぎてしまいます。

1日の気温が昼間に上がって夜に下がることを考えれば、気温が上がり過ぎるというのは容易に想像できますね。

 

ですが、地球全体の気温が高くなるわけではありません。

昼間に当たる地球の半分は灼熱の世界になりますが、太陽の反対側に来るもう半分(夜に当たる部分)は、逆に極寒の世界になるのです。

昼間と夜とで、温度差が極端になるということですね。

 

自転がある現在は、同じ緯度であれば平均気温はだいたい同じです。

地球がクルクル回ることで、地球の裏表の温度差がなくなるようにできているのです。

 

さて、地球上のほとんどの地域が灼熱か極寒のどちらかになってしまえば、もう「野菜や果物がよく育つ」なんて言ってられません。

それよりも、この極端な温度変化から何とか逃れなければ、植物も動物も人間も生きていくことができないわけです。

 

ではどこに逃げればいいのでしょうか。

実は自転がなくなっても、暑すぎず寒すぎない地域が少しは存在します。

 

それは、「明け方」と「夕方」に当たる地域と、地球の「真上」と「真下」に当たる地域です。

 

どういうことかと言いますと、まず、自転がなくなっても公転によって1年に一回は昼と夜が入れ替わりますから、地球上には明け方と夕方に当たる場所ができます。

それらの地域は刻々と移動していきますが、その辺り一帯は極寒から灼熱(あるいは灼熱から極寒)へと移り変わる途中になるため、過ごしやすい気温になるでしょう。

 

また、地球の公転面から見て真上と真下に当たる場所は、一年を通して灼熱と極寒の境目辺りに位置することになります。

ですので、ここもわりと過ごしやすいというわけです。

 

なお、「真上」と「真下」に当たる場所は北極と南極ではありません。

自転の中心軸は23.4度傾いていますので、自転が止まった瞬間にちょうど真上と真下に位置していた地域、ということになります。

③ 台風がなくなる

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もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

3番目は、「台風がなくなる」です。

 

台風というのは、日本からずっと南の方の、赤道に近い海で発生します。

赤道に近いところは海の温度が高いので、海面付近の空気がよく温められるわけですが、そうすると温められた空気は膨らんで軽くなる。

 

軽くなるとどうなるかというと、その場所の気圧が下がります。

「空気が薄くなる」わけですね。

そして、薄くなった空気を埋めるように、周りから風が吹き込むようになります。

 

この時、風はまっすぐに吹き込まずに、地球の自転の影響で反時計回りに渦を巻きながら吹き込みます。

この渦が大きく成長することで、台風が生まれるわけですね。

 

さて、気になるのは「なぜ自転があると渦を巻くのか」というところ。

風だけでなく飛行機もそうなのですが、地球が自転していると、まっすぐに進もうとしてもどうしても進路が曲がってしまうという現象が起こります。

その曲がる向きは、北半球では進路に対して右向き、南半球では左向きになります。

 

そのため、気圧が下がって空気の薄くなった場所(低気圧と言います)に吹き込む風も、吹き込みながら右向きにそれてしまいます。

それでも低気圧の中心に引き込まれてしまうので、右にそれようとした風がグイッと無理やり左へ引き戻される形になり、結果として反時計回りの渦になるというわけです。

 

このように、台風が生まれるのは、地球の自転の影響で低気圧に吹き込む風に渦ができるから。

地球の自転が止まれば、台風もできなくなります。

④ 赤道付近で少しだけ体重が重くなる

Photo: Pixabay

 

もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

4番目は、「赤道付近で少しだけ体重が重くなる」です。

 

体重というのは、体にかかる重力の大きさです。

例えば体重計に乗って「60キログラム」と表示されたなら、60キログラムの物体にかかる重力によって、体重計が押されたことを意味するわけです。

 

何が言いたいかと言いますと、体重計の表示は、重力の大きさによって変化するということ。

地球の重力というのは場所によって少しずつ違っているため、同じ人が体重計に乗ったとしても、場所が変われば体重が変わってしまうのです。

 

では、重力の大きさは場所によって、具体的にどう違うのでしょうか。

ここで重要になってくるのが地球の自転です。

 

地球が自転していることで、地球表面にある物体(人間も含みます)には、遠心力と呼ばれる力がかかっています。

この遠心力の向きは、自転の中心軸に対していつも外向き。

 

一方、地球が物や人を引っ張る力(引力と言います)は、いつも地球の中心に向かって働いています。

つまり引力と遠心力は、何となくですが、互いに逆向きになっているわけですね。

 

「重力」は引力と遠心力を足し合わせた力なので、遠心力の影響が大きい場所ほど、重力は小さくなるというわけです。

そして、遠心力の影響が最も大きいのは、赤道の辺り。

なぜなら、自転の中心軸から一番遠いために大きな遠心力がかかりますし、その上、遠心力と引力がちょうど逆向きになって打ち消し合うからです。

 

このようなわけで、赤道付近は重力が最も小さい場所。

同じ人が体重計に乗るとすると、赤道付近で測ったときの体重が一番軽くなります。

 

さて、地球の自転がなくなると、遠心力が消えて引力だけになります。

そうすると、今まで一番体重が軽くなっていた赤道付近も、他の場所と同じになるわけですね。

赤道付近の人にとっては、体重が増える、ということになるのです。

⑤ 地球がまんまるになる

Photo: Pixabay

 

もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

5番目は、「地球がまんまるになる」です。

 

現在の地球はまるいように見えて、実はほんの少しだけ上下につぶれた形をしています。

その原因は、先ほども登場した遠心力。

 

地球表面の物体には引力と遠心力がかかっているというお話をしましたが、この2つの力は地球そのもの、つまり地球を作っている岩石や海水にも働いています。

遠心力のせいで、引力と遠心力を合わせた力(これが「重力」でしたね)は北極や南極で強くなり、赤道付近で弱くなります。

その結果、地球は上下方向につぶれた形になってしまうというわけです。

 

それではどれくらいつぶれているか、実際の長さを見てみましょう。

 

まず地球の中心から赤道までの長さ(赤道半径)は、6378キロメートル。

そして、地球の中心から北極または南極までの長さ(極半径)は、6357キロメートルです。

赤道までの長さの方が、21キロメートルほど長いですね。

 

もしも地球の自転がなくなったら、地球に働く遠心力もなくなり、地球はまんまるになることでしょう。

もちろんすぐに変わるわけではなく、途方もない年月が必要ですが。

 

ところで、上下につぶれた形になっているのは地球だけではなくて、太陽系のほかの惑星も同じようにつぶれた形をしています。

最も大きくつぶれているのは土星。

天体望遠鏡で撮影された土星の写真を見れば、まんまるでないことがすぐにわかります。

 

土星はおもに水素でできたガス惑星で、地球のような岩石でできた惑星よりも変形しやすいのです。

また、自転のスピードも地球よりずっと速いため、強い遠心力が働いています。

⑥ フーコー振り子の回転が止まる

Barcelona Cosmocaixa Foucault’s Pendulum.jpg from Wikipedia by Ad Meskens, CC BY-SA 4.0

 

もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

6番目は、「フーコー振り子の回転が止まる」です。

 

「フーコー振り子」とは、フランスの物理学者レオン・フーコーが最初に作った実験用の巨大な振り子のことです。

1851年、フーコーはこの巨大振り子を使って地球の自転を証明しました。

 

最初の実験では、11メートルの丈夫なワイヤーに5キログラムのおもりを付けて、振り子が振れる方向を長時間に渡って観察しました。

すると、振り子の振れる方向が時計回りに少しずつ回転することがわかったのです。

1時間もすると、その変化ははっきりと確認できました。

 

フーコー振り子が回転するのは地球の自転が原因で、基本的なしくみは「風の向きが進路に対して右向きに曲がる」のと同じです。

「台風がなくなる」のところで出てきましたね。

振り子のおもりも進路に対してわずかながら右向きに曲がるため、それを長時間くり返すと時計回りに回転するようになるのです。

 

なお、「時計回り」は北半球での話で、南半球では逆向きになります。

 

フーコー振り子はパリのパンテオン、ニューヨークの国際連合本部ビル、東京の国立科学博物館など世界中で展示されており、地球の自転がなくなればこれらの振り子の回転が一斉に止まってしまいます。

⑦ 地磁気が消える

Photo: Wikipedia, Public Domain

 

もしもある日突然、地球の自転がなくなったら。

7番目は、「地磁気が消える」です。

 

地磁気というのは、地球が持っている磁石の性質のこと。

まるで地球の中に大きな棒磁石が入っているように、地球には磁石の性質があるのです。

 

ちなみに棒磁石の向きは、北がS極、南がN極。

「北がS極」というのは意外かもしれませんが、方位磁石の針(N極)が北を向くのは、北の方に地球のS極があるからなのです。

N極はS極に引っ張られる、というわけですね。

 

さて、地磁気を作っている地球の磁石は、鉄にくっつく黒っぽいあの磁石ではなく、「電磁石」です。

聞き慣れない言葉ですが、電流が流れることで磁石の性質が生まれる現象のことを、電磁石と呼んでいます。

 

地球の深い場所にはドロドロに溶けた鉄があって、その鉄が浅いところと深いところの温度差によってかき混ぜられるため、何となく流れができているのです。

そしてその鉄には電流が流れているため、電磁石になっている。

 

ただし、これだけで現在のような地磁気ができるわけではなく、しっかりとした地磁気ができるには、どうやら自転の役割が欠かせいということがわかってきています。

ですので、地球の自転がなくなったら、地磁気も消えてしまうと考えられるのです。

 

地磁気は地球を「太陽風」や「銀河宇宙線」から守ってくれている大切なバリアなので、もしも地磁気がなくなったら、これらが地球上にたくさん降り注ぐようになります。

 

「太陽風」とは太陽の大気のことで、ものすごいスピードで飛び交う水素の原子核(陽子)や電子の流れです。

太陽風が地球に降り注ぐと、地球の大気が吹き飛ばされてしまい、有害な紫外線が多くなったり、気温が下がったりします。

 

また、銀河宇宙線は宇宙のあらゆる方向から飛んでくる放射線のことで、生物の細胞を壊してしまう危険なものです。

目の病気や突然変異の原因になるほか、多くの生物が絶滅してしまうと考えられます。

ここまでのまとめ

今回は「もしもある日突然、地球の自転がなくなったら」ということで、ここまで7つの項目を見てきました。

  1. 24時間太陽が沈まず、野菜も果物もよく育つ
  2. 昼が続くと灼熱に、夜が続くと極寒になる
  3. 台風がなくなる
  4. 赤道付近で少しだけ体重が重くなる
  5. 地球がまんまるになる
  6. フーコー振り子の回転が止まる
  7. 地磁気が消える

 

これらを踏まえて、「地球の自転がなくなると私たちの暮らしはどうなるのか」というところを、最後に予想してみたいと思います。

その結果、こんな暮らしになるかも

昼も夜もどちらも無理

太陽に面した地球の半分は灼熱になり、裏側に当たるもう半分は極寒になる。

と言うことで、昼間も夜も、どちらも気温の変化が極端すぎて住むことができません。

 

人が住めないだけでなく、ほとんどの動物・植物が死んでしまうでしょう。

夜明けと夕方が狙い目

ではどこに住んだらいいのかと言うと、暑すぎず寒すぎない気温になるのは、夜明けと夕方に当たる場所です。

つまり、昼と夜の境目ですね。

 

自転が止まっても公転がありますので、昼と夜の地域は少しずつ移り変わっていきます。

ですので、ちょうど良い気温の場所に住もうと思ったら、まるで渡り鳥のように地球をグルグル移動しながら生活することになります。

 

1年で地球を一周するわけですから、これはとても大変。

赤道付近だと一周4万キロメートルなので、毎月3300キロメートルほど移動しなくてはならない計算になります。

歩きではとても無理ですね。

と言うか、海もあれば山もあるので、まず実現できそうにありません。

真上と真下が大人気

でも、ありがたいことに一年中いつも昼と夜の境目になる場所があるのです。

それは、公転面に対して地球の真上と真下に当たる場所。

 

これらの場所では、移動しなくても何とか暮らせそうです。

ただ、たくさんの人が住むには狭すぎますので、住む場所の問題が解決されるわけではありません。

不毛の地でさまよう

そして、もっと深刻なことは、灼熱と極寒で食べ物がなくなってしまうことです。

たとえ渡り鳥のように世界中を移動できたとしても、あるいは、地球の真上と真下に密集して住むことができたとしても、住む場所を選べるのは人間だけです。

 

植物はもちろん動けないので、みんな枯れてしまいます。

動物だって、飛行機のように長い距離の移動はできませんし、海を渡ることもできません。

鳥や魚はまだ有利かもしれませんが、公転に合わせて地球を一周すると言うのはほぼ不可能でしょう。

 

植物や動物がいなくなった不毛の土地で、人間はさまようことになります。

望みがあるとすれば、一年中いつも昼と夜の境目になる地球の真上と真下で、植物と動物を育てながら生きのびる方法です。

 

とても厳しい生活になりそうですね。

 

 

以上、今回は、「もしもある日突然、地球の自転がなくなったら」について考えてみました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

もっと知りたい人のためのオススメ本

『もしも、地球からアレがなくなったら?』渡邉克晃・室木おすし(文友舎,2021)

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